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シェルビエント攻防戦3

「オアアアアア!!!」


 黒竜にまたがりながら、ベヘルが裂帛の気合と共に手にしている棍棒を振り回す。

 先ほどから黒竜がファーレンベルクに突っ込んでくるのだが、それに合わせるようにベヘルが手にしている棍棒を振り回しているのだ。


「セァ!」


 その一撃を、フィナリアが正面から迎撃する。

 

「くうぅ!」


 が、ベヘルの棍棒の膂力は尋常ではないのか、フィナリアは大きく体勢を逸らしてしまう。

 

「危ない!」


 とっさに膝立ちになってフィナリアの背を抑える。

 いくらファーレンベルクの背が広いとは言っても、あまり大きく体勢を崩してしまうとさすがに転落しかねない。


「あ、ありがとうございます。クウヤさん」


「ああ。それより、なんだあれ」


 フィナリアは、先ほど手にしていた剣を薄緑色に輝かせていた。

 つまりは以前ベヘルの竜燐を切り裂いてのけた『断空閃』を使っていたはずなのだ。


 にもかかわらず、ベヘルの手にしている棍棒は浅く傷がついているだけだ。

 

「フィナリア。あの棍棒……」


「はい。相当に頑丈な素材でできています」


 俺の問いにフィナリアは頷きそう答えた。

 あらためて見てみるとベヘルの手にしている棍棒は非常に武骨だ。

 武器として洗練されているようには全く見えず、何かの骨をそのまま持ってきているといわれても納得できそうな代物だ。


「オアアアアアア!!!!」


 再び裂帛の気合と共に黒竜にまたがったベヘルが棍棒を構えたまま突撃してきた。


「降りろ!」


「ピィ!」


 俺がそう言うと、ファーレンベルクは真下に飛んだ。

 突如下降したファーレンベルクの上を黒竜が通り過ぎる。


 そして、すれ違いざまにフィナリアが剣を構える。


『鎌鼬!』


 振り抜かれた剣から真空の刃が放たれる。

 だがその一撃は黒竜の竜燐を浅く傷つけるにとどまった。


「……あの竜も含めて、相当な強敵ですね」

 

 その様子を観察しながら、フィナリアはそう告げる。

 先ほどから幾度かすれ違っているのだが、ベヘルと黒竜はやたらと頑丈なせいでこちらからの攻撃が上手く届かない。


 ファーレンベルクの攻撃は相当警戒しているのか、下手なタイミングで放ってもあっさり避けられてしまう。

 とはいえ、空中での機動力でいえばファーレンベルクが黒竜を圧倒しているため、現状では五分であると言える。


「全く、厄介な連中だ。前にあった時よりかなり腕を上げているな」


 そんな俺たちを見ながらベヘルがそんなことを口にする。


「そっちこそ、武器も竜もあんたも堅すぎるぞ」


「ふん。だが、俺にかまけていていいのか?」


「問題ないさ」


 ベヘルの示唆していることに対し、俺はそう返答した。

 先ほどから飛竜たちがシェルビエントの魔導師部隊の防衛ラインを突破しようと躍起になっているが、下方から無数に放たれる魔法の雨を前に突破しかねている。

 

 ならば魔導師をねらえと一部の飛竜たちが魔導師部隊を直接狙っているが、その竜たちは獣人部隊が上手い具合に迎撃している。

 上空に対する魔法攻撃をおろそかにすることができないせいで時間がかかっているが、少しずつ飛竜の数は減っているのだ。


「むしろ時間を稼がれるとヤバイのはそっちじゃないのか?」


 挑発半分に俺はそんなことを口にする。

 だが直後、ベヘルはニヤリと笑った。

 

「そうでもない。こっちにはまだ切っていない札がある」


「…なに?」


 俺が怪訝な表情を浮かべた時、突如大山脈方面から何かが飛来し、戦場を横断し、シェルビエントの魔導師を吹き飛ばした。


「な!?」


 なんだ今の一撃は!? 

 驚き目を見開く俺の眼前で、同様にフィナリアも目を驚愕の色を浮かべている。


 だがそんな俺たちのことなど知ったことではないと言わんばかりに次から次へとその何かは竜を迎撃している部隊へと降り注いでいった。


「風の、弾丸?」


 目を凝らしてみると、高速で飛来してくる何かは薄緑色に輝く風魔法だった。


「風弾、間違いありません。あれは風弾です!」


 俺の呟きに、フィナリアも頷きそう答えた。


「ちょっと待てよ。風弾って、あんなに飛距離があるのかよ!?」


 風弾は、使おうと思えば俺でも使える初級の風魔法だ。

 だが、俺では飛ばせて30m程度のものである。

 無論白魔法以外はトーシローもいいところの俺の比距離など参考にもならないが、だからといって大地をあっさり横断してのけるような代物であるはずがない。


「ですが、間違いありません!」


 ベヘルに警戒したまま、フィナリアは眼下を横断する風弾を見たままそう告げる。

 しかし、だとしたらまるでセレスティーナの霊弓から放たれる風矢のようだ。

 加えてファーレンベルクに乗っている俺からも射出点が見えない。

 つまり、この射手は間違いなくセレスティーナと同じような探知能力と遠距離攻撃を行っているのだ。


「あちらを援護せずともいいのか?」


 困惑する俺たちの前で、ベヘルが棍棒で肩を叩きながらそんなことを告げる。

 先ほどから幾度か風弾がファーレンベルクに向かっても飛んできているが、その風弾は着弾する前に霧散している。

 ゆえにファーレンベルクが盾になれば防げる代物ではあるのだろう。

 だがもしそんな行動をすれば今度はベヘルが魔導師部隊を襲撃するだろう。

 そうなれば、まず間違いなく防衛ラインは突破される。


「……フィナリア」


「はい。なんでしょう?」


 背を向けながら耳を貸すフィナリアに、俺は一言問いかけた。


「フィナリアなら、あの風弾をどうにかできるか?」


「……しばしの間なら。ですが、なぜそのようなことを?」


「なら、フィナリア。

 今すぐにファーレンベルクから降りて、連合軍を守ってくれ」


 俺の一言に、フィナリアがこちらを振り向いた。


「……クウヤさんは、どうされるおつもりですか?」


「俺は、あいつの相手をする」


「いけません!」


 突如、フィナリアはこちらを振り向いて俺を制するようにそう言った。

 

「あの相手は危険です! 私達が力を合わせなければ倒せません!」


 ベヘルに背を向け、フィナリアは俺にそう言った。

 ファーレンベルクが警戒しているため安全ではあるのだろうが、それでもフィナリアらしからぬ行動だとは思う。

 

「フィナリア。あいつは、魔族たちは強い」


 そんなフィナリアに対し、俺は言葉を選ぶように口を開く。


「フィナリアが守ってくれないと、ここにいる連合軍は全滅する。

 ファーレンベルクがいるから、俺だけでも十分にベヘルを足止めできるはずだ」


「ですが、クウヤさん!」


「フィナリア。頼む」


 気が付けば、俺はフィナリアの手を取っていた。

 連合軍が集結する直前、フィナリアは俺の傍に居続けたいと言ってくれた。

 そのことは心底嬉しかったが、だからといって今はフィナリアという戦力をファーレンベルクの上で殺すわけにはいかないのだ。


「必ず無事に戻るから、頼む」


 なるべく真っ直ぐに俺がそう言うと、フィナリアはしばしの戸惑いを浮かべた後に唇を噛みながら頷いた。


「分かりました。ご武運を」


「フィナリアも」


 そう言うと、フィナリアはファーレンベルクから飛び降りた。

『浮遊』の魔法を用いて着地した後、フィナリアは連合軍の方へと移動しながら、飛来する無数の風弾を撃ち落としていた。


「悪いな。待っててもらって」


「フン。厄介な敵が減ったほうが叩き潰しやすそうに思っただけの話だ」


 にやりと笑ってベヘルはそう告げたが、俺にはどうもそうは見えなかった。

 無粋なことを嫌う不器用者って感じがした。


「叩き潰しやすい。か」


 確かにフィナリアは強い。

 それがファーレンベルクから飛び降りたなら、確かにこちらの戦力はダウンしたとみてもいいだろう。


「前に戦って分かってると思うが、こいつはいくら殴っても効かないぞ」


 そんな状況下で、俺はせめてものハッタリとしてベヘル相手にファーレンベルクの背をポンポンと叩く。

 それに対し、ベヘルはニヤリと笑って応じた。


「確かにその鳥は厄介だが、それに乗っている貴様は叩けば潰れるだろう。

 それに、俺の目的は時間稼ぎだ。お前たちが俺にかまけていれば、いずれ飛竜どもが砦へとなだれ込むだろうさ」


 そう言って、ベヘルは棍棒を構えた。

 なるほど。

 確かにあいつの言う通りだ。

 

 馬鹿ではないと思っていたが、きちんと作戦を立てて俺たちを足止めしていたとは恐れ入った。


 だが、そんな単純な計算だと足元をすくわれるぞ不器用者。

 フィナリアが加われば、防衛ラインが突破されるはずなどない。


「ファーレンベルク。全力でぶつかるぞ!」


「ピュアアアアアアアア!!!!!」


 俺がそう言うと、ファーレンベルクは全身を纏う炎を燃え上がらせた。

 その炎は当然のごとく俺にもまとわりつくが、ファーレンベルクの炎は俺にとって熱くはない。

 

「それがお前の全力か。だが、俺に通じるか?」


「結果が教えてくれるさ!」


 そう言うと、ファーレンベルクは真っ直ぐに黒竜とベヘルに向かって羽ばたいた。




 





 眼下で魔族たちと激しく戦っているドルガー軍とシルディエ、バストラングを余所に、セレスティーナは北の大山脈の方を向いていた。


「……セレスティーナ様。北方で何か問題でも?」


 戦況を眺めながら、ジェクト将軍がそう問いかける。

 その問いに、セレスティーナは頷いた。


「敵が思いのほか強い。クウヤ達が梃子摺り、連合軍が削られておる」


「…やはり、敵は竜だけではなかったということですね?」


「うむ。手練れが二人混じっておる」


 戦況を見据えながら、ジェクト将軍はゆっくりと口を開く。


「セレスティーナ様。それ以外に敵の気配は?」


「……ない。少なくともすぐには援軍に駆けつけられる範囲には」


「では、セレスティーナ様とトリストス殿は北へ向かってください」


 ジェクト将軍の指示に、セレスティーナは一瞬言葉に詰まった。


「よいのか? そんなに北に戦力を集中させて」


 セレスティーナの問いにジェクト将軍は頷いた。


「北の騒動を可及的速やかに治めてください。その間は私達で持たせます」


「なるほど。俺も加わるのはそういうことか」


 ジェクト将軍の説明に、トリストスが納得したように頷いた。


「分かった。さっさと北を片付けて戻って来てやる」


「お願いします。最悪の場合でも、時間だけは稼ぎますので」


 トリストスに対し、ジェクト将軍がそう言った。


「任せときな。行くぞ女王様」


「う、うむ」


 頷くと、セレスティーナとトリストスは真っ直ぐ北に駆け上がっていった。

 

「……さて、助力するべきか否か」

 

 二人を横目で見送りながらジェクト将軍は眼下の戦況を見渡した。

 戦況は、すでに数時間にわたる膠着状態の削り合いとなっていた。

 個人的な観点で見ればすぐにでも助力したいところなのだが、指揮官という立場から考えれば今動くのは危険に思えて仕方がない。


 何しろ、眼下で広げられる連合軍と魔族軍のぶつかり合いを、自分と同じように遠くから眺めている二人組がいるからである。


「……北方の制圧が終わるまで、どうにか持ち堪えられますか?」


 眼前で続けられる激戦を見ながら、ジェクト将軍はそう呟いた。








「ハハハ。ここまで俺と張り合えるのかよ。お前、ほんとにスゲーな」


「……褒められて悪い気はしないけど、嫌味に聞こえるわよ?」


 ライオスの軽口に、シルディエはやや息を荒げながらそう答えた。


「嫌味じゃねーさ。素直に感心してんだよ。俺の魔法がこうまで見切られるなんざ、初めての事だから な!」


「ふっ!」


 ライオスがシルディエに向かって飛び込んできため、シルディエはそれを迎撃するように槍を突きだした。

 白兵戦において、間合いとはとても重要な要素となる。

 ライオスは無手でシルディエに戦いを挑んでいるため、その間合いという要素をとれば完全にシルディエが有利となっている。


「ち。息を切らせてんのによくやるぜ!」


 連続で繰り出されるシルディエの刺突に対し、ライオスは反射神経任せに回避する。

 ライオスは素手でも凄まじい能力を持っているが、それはシルディエの槍術を完封できるほどのものではない。


 ライオスは現在両の拳に雷を纏わせている。

 もし体に掠りでもすればその部分が感電してしまう。

 だからこそ、シルディエはライオスを間合いに入れ無いように無数の刺突を放ち続けているのだ。


「ちぃ『雷弾!』」


 懐に潜り込めぬと判断したライオスは、拳に纏った雷をそのまま弾丸として打ち出した。

 

「ふっ!」


 それに対し、シルディエは槍で叩き落とした。

 

「だー、クソ。ここまで俺の魔法が効かない相手なんて初めてだぞ!」


「私も、ここまで梃子摺る相手なんて初めてよ」


 すでに始まってから数時間、シルディエとライオスの戦いは続いている。

 シルディエの見立てから言ってライオスの絶対的な戦闘力は自分を軽く上回っている。

 ただ、戦い方の多くを雷魔法に依存しているため、それを封じてしまえば戦力は激減するのである。


 同じ雷魔法の魔導師だからこそわかるが、雷魔法とは非常に強力な魔法だ。

 おおよそ生命を持つ者にとって、この魔法はまず間違いなく致命傷を与えることが出来る。

 それをライオスのように節操なく使えるならば、なるほどほとんどの敵は圧倒できるだろう。

 

 自分が戦えているのは、単純に魔法に対する理解の深さの差である。

 雷と言うものは金属を伝導する特性があるためシルディエは槍という武器を手に取っているのだが、ライオスはそんな雷の基本的な特性さえ知らないようだ。

 

 だからこそシルディエはライオスの攻撃を捌き続けていられる。

 雷移動を行おうとすればその魔力の軌道上に招雷を起こし、雷を放とうとすれば槍で受け止めた後に自分の魔力を用いて受け流す。

 たったその二つだけでライオスの攻撃はしのげるのだ。


 その二つの戦い方では通用しないと理解したライオスは両拳に雷を纏わせた状態でシルディエに挑みかかってきたのだが、シルディエの槍捌きの前に近づくことさえままならい状況になっているのだ。


(とはいえ、こうまで戦い続けられるのは、間違いなく父上のつけてくれた稽古のおかげね)


 戦いながら、シルディエはそんなことを考えた。

 ライオスは総合的な戦闘力から見ればシルディエを大きく上回っている。

 だが、それでもシルディエが戦い抜けるのはライオスに対して過剰な脅威を抱いていないからである。

 

 ドルガーとの一戦を経て、シルディエは大いに成長したという実感がある。

 あの一戦、心臓を握りしめられるような圧迫感を経験したシルディエにとって、ライオスは強敵ではあっても難敵ではない。

 ゆえに、冷静ささえ維持できれば十分に対処できる相手なのだ。


 ゆえに拮抗状態。

 もうすでに始まってからとうの昔に数えるのを放棄する程度には刺突を繰り出している。


「……」


 そんな中、シルディエは近くでぶつかり合っているもう一つの激戦を見やる。

 そこでは、巨漢の獣人バストラングと、巨漢の岩将ゴライアスの戦いが繰り広げられていた。

 







 ガガガガガガガガ!!!


 戦場に似つかわしくない切削音が響き渡る。

 削り取られているのは岩。

 削り取っているのはバストラングである。


 シルディエとライオスの戦いが始まってすでに数時間が経過しているように、バストラングとゴライアスの戦いもすでに同じほど経過している。


 二人の戦いは異様の一言。

 ゴライアスもバストラングも寡黙なため、二人の間に会話もなければ気合を乗せた掛け声もない。

 あるのはただ機械的に響き渡る切削音のみである。


「…………」


「…………」


 ただ無言のまま、獣人は目の前に生み出される岩の壁を切り裂く。

 奥義によってゴライアスを地面の中から引っ張り出したバストラングは、当然のように即座に真っ二つに切り裂こうと踏み込んだ。


 だが、その踏み込んだ足元の地面が突如盛り上がったのだ。

 本能的に退避したバストラングの足元から岩の壁が生み出される。

 その岩の壁はゴライアスの周囲から次々と生み出され、あっという間にゴライアスを取り囲む防壁が完成したのである。

 

 再び地面に潜られてはたまらないと思ったバストラングがその壁を破戒しようと接近したのだが、直後、壁が内側から砕かれた。


 ゴライアスが内側から岩壁を殴り壊したのである。

 自分で生み出した岩壁を自分で殴り壊すという行為は一見無意味に思えるが、バストラングはそれに対して目にもとまらぬ速さで斧を振り回した。

 ゴライアスが砕いた岩壁の破片がバストラングめがけて殺到したからである。

 

 バストラングを以て見上げるほどの巨躯を持つゴライアスを覆い隠すほどの岩壁の破片は、それこそまともな人族の頭並みの大きさがある。

 そして、いかなる腕力を持っているのか、ゴライアスに打ち砕かれた岩壁の破片は並みの魔導師の魔法並みの速度で殺到するのである。


 バストラングは持ち前の神業じみた戦斧捌きですべての岩石を叩き切ったが、ゴライアスの岩石散弾に巻き込まれ、ドルガー軍の一角がやや崩れる。


 ゆえにバストラングはゴライアスが生み出す岩壁を全て切り崩しているのである。

 だが、バストラングの斧裁きをもってしてもゴライアスに届かない。


 ゴライアスはその足元から岩壁だけではなく、岩の槍を作り出してバストラングの接近を阻む。

 次から次へと地面から出現する岩の壁や槍に、バストラングは梃子摺りながらも切削を続けているのだ。


 バストラングの戦斧捌きは、常人には到底目で追うことのできない神業である。


 一度振るわれれば大地が砕かれんばかりの膂力を持った戦斧が、目にもとまらぬ速さで振るわれ続けるのだから当然といえば当然だろう。

 そんなバストラングの斧捌きが、とうとうゴライアスの生み出す壁と槍を打ち破り、全身を岩の鎧で覆われたゴライアスへと届いた。


 が。


「……」


 直後、バストラングの目の前でゴライアスの鎧が再生していった。

 バストラング自身も斧に岩を切り裂いた以外の手応えが感じられず、明らかに敵が健在だということを悟る。


 そして、再び足元より無数の岩槍が生み出され、咄嗟にバストラングは大きく後方へと跳躍して距離を取った。


 こんな攻防が、既に幾度となく二人の巨人の間で繰り広げられている。

 ゆえに戦場に響き渡るのは無数の切削音のみ。

 様々な形状の岩を生み出しまるで要塞のように守りを固めるゴライアスと、その巨岩の群れを切断し、飛び越え肉薄しようとするバストラング。

 

 周囲には無数の岩石が飛び散るため、近くには誰も寄り付こうとしない。

 シルディエ同様に、バストラングも長期戦の様相を成していた


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