殺害と一回目。
だからモス派だって言ってるでしょ。
「…あ。」
「あ。」
前にも同じことがあった気がする。
と思いながら前にいる黒髪の男を見る。
確か、ハルトの弟だ。
かんっぜんにハルトを小さくした版だ。
「えっと…たしか、この前ヒロキの家にいた…」
「バカな人。」
バカな人、で覚えられていた。
「バカなのは数学だけだから!あと名前はユウトだから!」
ハルトと同じ謎の威圧感がある。
苦手だ…。
「なあ話すならマック行こうぜ。」
「あー、うん、マックかぁ……ってデジャヴか!!!」
まあ、暇だし良いとしよう。
「おじさん、兄貴と同じ高校?」
「…お前の兄さんより若いんですけど、同じ高校だよ見りゃわかるだろ。」
まあ、俺はブレザーであいつはセーターをきてくるところは違うけど。
「あのさ、もしかしてマック嫌だった?」
デジャヴ。
「いや、別にいいよ…。」
「もしかして…ロッテリア派だった…?」
「だからモス派だっつうの。」
こんなマックにいる中何処派か話すのもおかしいけど。
家でハルトがどんな人間なのか聞いてみたかったりする。
「あのさ」
「ダブルチーズバーガー二つとドリンクお持ちしましたー。」
にこやかなお姉さんが俺の言おうとするところを邪魔する。
わざとだ、絶対わざとだ。
「兄貴ってさあ、学校ではどうなの。」
聞きたい事を先に言われる。
「どう…って別に、よくっていうか毎日サボってるし屋上は勝手に入るし…頭は良いし…。」
「お前ふざけてんのかよ。」
「えっ、すみま…って何が!?」
つい誤ってしまった。
アキトはハンバーガーを一口食べて話しはじめる。
「だって…俺と同じすぎるだろ…。」
「ぶっ!」
思わずふきだしてしまう。
こいつ…自覚してる…!!!
「わ、笑うなよ!俺は真剣なんだからな!」
「いいじゃん似てたって。」
「よくねーの!」
今はそうゆう時期なんだろうか。
いつかどうでも良くなるから大丈夫だと言いたい。
「似てたってアキトはアキトだろ。」
「呼び捨てすんなよ、敬語つかえ、敬語。」
「俺お前より年上なんですけど。」
ドリンクを飲む。
コーラを頼んだのにウーロン茶の味がする、間違いなくこれはウーロン茶だ。
「アキトお前何頼んだ?」
「オレンジジュースだけど」
「えらく子どもだな!!!ちょっとこれお茶だから取り替えてくる。」
「あ、うん。」
かえってきてようやくハンバーガーを一口食べる。
「あれ、ピクルスの味がしないんだけど。」
「俺は知らない。」
汗がでている。
「お前…ピクルスをとったな…」
「と、とってないし!!」
わかりやすい嘘だ。
ピクルス抜いてもらうの忘れてたからいいけど。
「ピ、ピクルスは俺のだからな!」
「取らねーよ!」
コーラを一口飲む。
あれ、これペプシゼロじゃね。
まあよしとしよう。
「ハルトってさ、家ではどんな感じなの。」
「ハルト?うーん…」
少し考え込む。
そんなに言いづらいんだろうか。
「あんまり…関わらないからわからない。」
「お前ら寂しい兄弟だな…」
「仇だからしょうがないだろ…」
「仇?」
仇って…どうゆう意味なんだろう。
「俺、兄貴の事殺したいから。」
「…中二?」
「中三だ。」
ハルトは弟にまで嫌われているんだろうか。
確かに、あいつならありえない事はなかったりする。
「何があったんだよ。」
「教える気はない。」
「俺さ、一度ハルトに殺されてる人間だから。」
目を大きく開いてこっちを見た。
まるで、誰かと重ねているみたいに。
手を震わせて飲み物を机に置いた。
「殺された…の?」
「ゲーム参加者だったから。」
「…そう、なんだ。」
俺は飲み物を飲み干す。
やはりSサイズじゃ物足りなかったかもしれない。
「はい、俺は秘密言った。お前も言えよ。」
「…わかったよ。」
偉く素直だ。
「ハルトは、俺の親を殺したから。」
「え?」
親を殺した?
「本当にそうなのか?」
「知らない。」
わけがわからない。
俺は手に汗を握る。
ハルトは殺しを経験しているように俺を簡単に殺した。
ハルトならありえる、ありえることなんだ。
「俺、小さい時だったから…。」
「そ、そう…。」
でも、ハルトには何か理由があったんじゃないだろうか。
なんとなく、そう思った。
…俺はハルトの事を知り始めてる。
「だから嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ、嫌いだけど。」
そう言ってハンバーガーを食べ切った。
窓の外を見るとハルトがいた。
目が合う。
呼ぶべきだろうか。と思ったが通りすがっただけなのか行ってしまった。
「兄ちゃん、いっちゃったな…。」
「気づいてたの?」
「今気づいた。」
その目はあまり復讐に満ちてはいないような気はした。
「よし、食べ終わったし、帰る。」
席をたとうとして、待ってと言われた。
「ユウト、殺された時、どんな感じだった?」
ああ、本当に兄弟は似るな。
「怖さを忘れるくらいに痛かったよ。」