落とし穴
警察庁が夜間の車の走行時にハイビームを推奨していますが、あれは罠です。
夜間の前照灯は他の交通に配慮して減光義務(注1)があります。
この減光義務を無視すると「妨害運転」となり、免許証を失効する可能性もありますので、夜間の走行時にハイビームを多用するのは避けた方が良いでしょう。
ハイビームを使用する場面を考えると、例えば郊外の街灯もないような道路であって他に通行者がいない時ぐらいしか考えられません。
それでも時速40キロメートルで走行していればロービームの照射範囲内の40メートルで停止可能ですから、制限速度を大幅に超過しない限りはハイビームの必要性を感じません。
オートハイビームという機能は迷惑運転の最たる存在で、すれ違い時でも減光しない事例が多くあります。これを対向車両の運転手が「運転を妨害された」と感じて通報すれば「妨害運転」として認定され50万円以下の罰金か3年以下の懲役刑の罰則を受けた上に、行政処分として免許証の失効と欠格期間2年(注2)を受けます。
私は対向車両ではなく後続車両からハイビームを受けて眩惑され、運転を妨害されたと感じましたので窓を開けて「眩しいので、妨害運転で通報する」と警告したことがあります。
幸い、後続車両が減光してくれましたのでその後の運転は円滑に実行できましたが、正直言ってハイビームでの運転は迷惑行為としか思いません。
夜道を歩行中に対向車両がハイビームにすると、目が眩んでふらつくこともあります。歩道上であれば何事も起きませんが、路側帯などでふらついた場合、最悪の事態を招く恐れもあります。
よろめいて車道側へ出てしまえば、車両と接触する危険性もあるのです。その場合、人身事故へと直結します。夜間の車両の運転ではハイビームを多用するのは避けるのが賢明でしょう。
そもそもハイビームで走行できるような道路は市街地では存在しませんし、高速道路でも対向車両が存在する場合はハイビームにしてはいけません。
特に自転車が走行している場合、ハイビームにしたことによって自転車の通行を妨げればそれは「妨害運転」として立件されます。
警察庁はハイビーム運転を推奨して、「妨害運転」の検挙数を増やしたいのかと邪推したくもなります。
我が身を守るのはハイビームを使わないように減速して安全運転に努める他ありません。それが結果的に道路交通の安全を保ち、事故件数の減少にも繋がるでしょう。
この件で気になるのは、夜間工事などで立哨している警備員にハイビームを浴びせた結果、その業務を妨害した「威力業務妨害」として告訴されないかという問題です。
ハイビームで眩惑しているのですから、当然ながら車両の動きは見えません。ですから適切な業務を行えないので、威力業務妨害に該当すると私は思います。
安易な気持ちでハイビーム走行を行えば、妨害運転や威力業務妨害として立件され、免許証の失効や社会的な抹殺を招く可能性があります。
ハイビーム走行の前に速度を落として、安全運転に努めましょう。
(注1)減光義務
第五十二条(車両等の灯火)
車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。
2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
(罰則 第一項については第百二十条第一項第五号、同条第三項 第二項については第百十七条の二第一項第四号、第百十七条の二の二第一項第八号ヘ、第百二十条第一項第六号、同条第三項)
(注2)「妨害運転」
第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
四 次条第一項第八号の罪を犯し、よつて高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
八 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為