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手芸部
「どこかその辺にハサミがあるだろう」
「あったよ!」
「手芸部の教室やからな」
適当なハサミを取り、チョキチョキと毛糸を切りながら進んでいった。
「しかし、すごい毛糸の量だな」
「ほんまや。これでセーター編んだら何人分やろな」
「ユミナ、気をつけてね。何が出てくるかわからないよ」
「平気だ」
「いるとしたら、よっぽど寒がりの人やで」
しかし奥にあったものは、我々の想像を超えたものであった。
「何だこれは」
「繭やな。大きな毛糸の繭玉や」
「中でゾンビが寝てるんじゃない?」
「ゾンビもセーター着るんかな」
冗談を言っている場合ではない。
「我々に与えられた選択肢はただ切るのみ」
チョキチョキ。
出てきたものは、人だった。
「やっぱりゾンビだ!」
「いや、生きてるで」
「これからゾンビになるんだよ!」
「セーター着とったら大丈夫や」
「目を覚ませ。ウチの生徒だ」
それは手芸部の生徒、真弓リリアだった。
「どうした、大丈夫か?」
「う、うーん」