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気配
よっぽど天変地異でもない限り、私はのどかなキャベツ畑の中を歩いて登校する。
人などほとんどいない。キャベツの他には、鳥や虫や野良猫がいるばかりだ。
そんなとある日の朝。私は、ふと気配を感じて立ち止まった。
「はて?」
振り返ってみても、目に入るものはキャベツのみであった。
「誰かにつけられていると思ったが、気のせいか」
あえて口に出して言ってみる。もしキャベツが耳を持っていたとしたら、聞こえるぐらいに。
しばらく歩いて、また、ふと振り返る。
「それにしても良く育ったキャベツだ」
やはりそこにあるのは、キャベツだけだった。
わざとらしくまた歩き出して、急に振り返る。
本当に良く育った、まるで人が一人入っていそうなキャベツが、すぐ後ろにいた。
「後をつけるなら、もう少し上手く隠れるのだな」
巨大キャベツの葉が一枚ずつはらはらとめくれていくと、中から人が現れた。
「良くわかったな」
「キャベツが足を生やして歩くはずなかろう」




