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箱入り娘
七瀬ホノカは箱入り娘である。
とある旧家にて、どんな虫も付かないよう、とても大切に育てられ、このたび無事に17歳の誕生日を迎えた。
これは彼女の長い輪廻転生の歴史において初めてのことである。
彼女は過去世にて、長生きした経験がない。
これまでの全ての人生で、10歳の誕生日を迎えずして没している。
だから今回こそは長生きしようと、鉄壁の守りを備えて生まれてきた。
普通、どの人にも守護霊が最低一体は付いているが、彼女はその何倍、いや何十倍、ことによると何百倍もの守護に守られている。
「ホノカ、そこの鉛筆とって」
「うん」
ホノカは指を伸ばし、鉛筆を掴もうとする。
すると鉛筆は指が触れていないのに、宙に浮かび上がった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
霊視すると、彼女に変わって、彼女の守護霊が鉛筆を掴んでいるのが見える。
物体の表面には、どんな細菌が潜んでいるかもわからないため、彼女は決して物に触れることがないのだ。




