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自然
我が校の周りには、のどかなキャベツ畑が広がっている。
上から見ると、その中にぽっかり空いた茶色の土地が我が校のグラウンドである。
そんな校庭の一角で、一人テントを張ってキャンプをしている不届者がいる。
彼女は双葉コノハ。レムリアの大地母神の生まれ変わりだ。
レムリアとは、超古代に太平洋上にあった大陸。
いろいろあって海に沈んでしまったが、最盛期には自然と調和した高度な文明を誇っていた。
「おはよう、ユミナ」
「おはよう、ではあるまい」
コノハのテントである。
「こんなところで何をしている?」
「キャンプ」
「それはわかっている」
「大地に境界線はないわ。人が勝手に引いたものよ」
「だから校庭でキャンプしようと、咎められるものではない、か」
大魔王好みの思想であるが、これは流石にどうだろうか。
「これは何だ?」
「耕して、種蒔いて、育てたの」
そこには、まるで周りの土地から侵食されたかのような、キャベツ畑が出来上がっていた。




