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センシティブ
私はミツキと話していた。
「田舎というのは、つくづく娯楽に乏しいな」
「そうだねえ。プロ野球と大相撲ぐらいだねえ」
それは田舎ではなく、昭和だ。
「ところでお主はどこのファンなのだ?」
「もち、ドラゴンズ」
ついでだから、他の連中も調査して進ぜる。
「ヒマリは?」
「うちは先祖代々、江戸時代からのジャイアンツファンですわよ」
そんなに歴史あったかな?
「カレンは?」
「ホークスファンなのだ」
「ノエルは?」
「ファイターズに決まってんじゃない」
田舎のくせして意外と全国的であるな。
ところでこの人はどこのファンだろう?
「ウララは?」
「ギクッ」
広島と関西と東北にルーツがある彼女は、はたして?
「どうした、狼狽えているぞ」
「ユミナ、ミツキ、みんな。今まで世話になったなあ。ウチのことは、探さんといてくれ。どこかで偶然見かけても、それはウチによう似た別人やさかい」
ウララは荷物をまとめ始めた。
そんなにセンシティブな質問だったとは。




