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ジャンダラリン
キャベイム魔神は、命令と誘惑の間で、ウガーっと苦しんでいた。
「欲しいんやろ」
「ウガー!」
「よしなさい」
「ウガー!」
私はといえば、とにかくこの不愉快な状況をなくしてしまいたかった。
フッ。
レベル50の魔神か。
異世界では最強かもしれぬが、元宇宙の大魔王たる、この私に比べればヒヨッコ同然。
せっかく生を受けたものを滅ぼすのは忍びないが、ここはこの茶番を終わらせるのが慈悲。
「滅びの秘術、ジャンダラリ……」
おや?
私はまだ力を解き放っていないというのに。
キャベイム魔神は、まるで熟練のシェフがそうしたように、細い糸のような千切りと化し、ハラハラと崩れ落ちた。
床には膨大なキャベツの千切りが積み上がっている。
「なんてこと!」
驚くユメカ。
「マヨネーズ持ってこれば良かった!」
秘術ジャンダラリンを使う相手は、やはりミツキしかいない。
それより、こんなことが出来るのは。
入り口を振り返ると、予想通りの人物がいた。
「ホノカ」




