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あだ名
「粟栗四三か。オリンピック選手みたいな名前だな。それよりこのパンダ、喋れたのか」
「それは想定外だったわ」
「扱えない技術が暴走したのではないのか?」
「そうでないことを祈るのみよ」
「それは実に心許ないな」
などと、私と安斎ノエルがアカデミックな話をしている間に、ミツキたちとパンダは交流を深めていた。
「パンちゃん、かわいい!」
「おりこうさんですわよ」
パンダもヒマリが持ってきた竹なんぞを、かわいらしく食べる方法を早くも身に付けたようだ。
流石はパンダ。
人の愛情を奪い取る術に長けている。
「ミツキ、パンちゃんはちょっとアレやんか」
「そうかな?」
「もっといいあだ名を付けてあげるのだ」
あだ名なんぞを付けたら、もはや誰も本名で呼ばなくなる気がする。
「じゃあ、しーちゃんにする」
ミツキが勝手に決めてしまった。
「しーちゃんか。ええやん」
「かわいいのですわよ」
「こんにちわ。しーちゃんです」
四三のやつ、気に入ったようだ。




