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手跡
我が校にはこんな伝説がある。
今の校舎を建てたとき、一筋縄ではいかなかったという。
何度も摩訶不思議な怪異に見舞われ、工事は難航を極めた。
そこで地元の神社にお伺いを立てたところ、こんな神託が出た。
これは地の神が怒っておるのだ。
若い娘を人柱として校庭に埋めよ。さすれば怪異は治まるであろう。
時の校長は、泣く泣く自分の一人娘を人柱に立てた。
本来であれば、次の年の春に入学予定であった、かわいいかわいい一人娘を。
その結果、無事に今の校舎を建てることができた。
だが、陰鬱な雨が降るような日には、成仏できない娘の霊が校庭の下から這い出してくる。
羨ましそうに窓の外から教室を覗き込み、そのとき、窓にびっしりと泥の付いた手跡が残るという。
とある雨の日。
急にミツキが叫んだ。
「きゃー!窓に泥の付いた手跡がびっしり!」
だが、私は落ち着いていた。
「しーちゃん、校庭で泥遊びしてただろう」
手跡は、パンダの手のひらの形であった。