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かわいい
「かわいいねえ」
「かわええなあ」
「かわいいのですわよ」
「かわいいなのだ」
ミツキ、ウララ、ヒマリ、カレンの四人の視線は、同じものに注がれている。
彼女たちを虜にしているのは、水槽の中に群生するポカンな生物。
ホヤの赤ちゃんだ。
なぜここにそんなものがあるかというと、ここが生物部の教室だからだ。
「お気に召したようね」
彼女は生物部の部長、安斎ノエル。
人類が地上に現れるより以前から地下に住んでいた、爬虫類型地底人の生まれ変わりだ。
彼らは遺伝子操作に優れている。
だが爬虫類型といっても、今はただの女子高生。
普通のかわいらしい哺乳類である。
そして、彼女の人生の目的は、かわいいを地上に増やすこと。
「よくこんなもの作ったな」
「地底の技術を使えば朝飯前よ」
「他にも作れるのか?」
「もちろんだわ。もっとかわいいものをお見せするわよ」
見せてくれたのは、缶詰。
パンダの絵柄が描かれているのだが。
「中身はもしかして?」
「正解」




