宿り木にしても
目の具合が悪い。
視界が真ん中で
ずれるものだから。
横になり、目を閉じる。
うたた寝になり、
何故か丸い緑を
見ている気がした。
夢を見ていたらしい。
ずっとあったのだ。
頭の片隅の方、
心の裏地に挟まって、
丸い形の緑。
初めて見たのは
日本海の近くだった。
春もそう遠くない頃で、
鳥の群れが空にあった。
その不思議な
葉っぱの塊を見て、
あれはなんだろうと
思いながら旅をした。
その木には、
クリスマスのことや、
キスのことがあると、
知らずに旅をした。
共に旅をした
あの人はどうだったか。
何をどんなことまで
知っていたんだろう。
宿り木は木の枝に
器用に寄生して、
丸まった緑の玉を
見せていた。
宿り木のように、
誰かに、何かに、
根を伸ばして、
命を続けてきたのか。
人は一人では
生きられないと、
言葉に凭れてきた。
神聖な木は遠い。
いつか見えなくなり、
いつか動けなくなり、
どこかに根だけ伸ばして、
命が続かぬよう。
また何を思うのか。
具合が悪くなると、
取り留めもなく、
生き様を振り替える。
宿り木にしても、
あの人にしても。
まだ残る雪の中、
とても美しくあった。
美しき思い出、
この目に、この体に、
根を伸ばしてくれて、
ありがとう。
少し眠ったら、
具合はよくなった。
ここに書けたことも、
ありがとう。
奇跡のような、
勿体ないような。
明日もまた、
思い出になるだろう。