中学生に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。
(お泊り編)中学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変えたら彼女が家で待っていました。
学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。及び
〜椎名小鳥視点〜学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。の後日談となっております。
主人公とヒロインがいちゃつく話です。
前作を読んでいたたでるとよりこの作品を楽しめると思います。
俺の名前は入江一樹。
27歳童貞フリータいわゆる負け組だった男だ。
ある日トラックに引かれた俺は中学生の頃にタイムリープした。
そして、いじめられ飛び降り自殺してしまった学園一の美少女椎名小鳥の命を救った。
未来に戻ったら目の前には結婚して俺のつ、妻になった椎名小鳥が居た。
今は椎名……いや、俺も椎名だったな……こ、小鳥に見送られ玄関に立っている。
「はぁ……一旦自分の状況を整理したものの。やっぱり訳が分からない」
そもそも俺の会社ってどこにあるんだ?
どんな会社なんだ?
全然わからん。
ていうかこの未来のこと何にも知らないんだけど。
こういうのって記憶が補完されるもんじゃないのか?
なにも知らない世界でこれから生きなくちゃならないなんてある意味地獄なのではないのだろうか?
……いや、よく考えてみろ。椎名小鳥が生きている。
しかもめっちゃ綺麗な大人になって、俺の妻になってくれている。とっても幸せじゃないか。
前の未来とは大違いだ。
これからのとこなんて誰にもわからない。だからこの未来で、俺は改めて生きていこう。懸命に!
とりあえず家から離れるか! 会社がどこかなんて電話帳みて会社の人に聞けばいいだけの話だ。
うん。なんとかなるさ!!
「ふぅ……よし!! いってきまー」
ボコッ!!
走り出した直後、重々しく鈍い音とともに俺の体は横から来た軽トラック吹き飛ばされた。
あまりの衝撃に体は宙を舞った。やけにスローモーションに感じる。
ちらっとみると俺を引いた軽トラのフロントバンパーは大きく凹み、ガラスも大きな亀裂が走っていた。
あ、これ頭から落ちるやつだな。あまりの痛さで体も動かないし、死んだわ。これ。
幸せだった未来はたった5分で幕を閉じた。
視界が暗転した。
ドクンという躍動とともに目が覚めると俺は真っ白な天井が広がっていた
「よかった。ちゃんと起きてくれて……おはよう。まだ意識が安定しないのかしら?」
ベッドの横には母さんがいる。
まじか。確実に死んだと思ったんだけど、生きてたのか……ってそんなことより
「か……会社は!?」
「会社? 何言ってるの? あなたまだ高校生じゃない」
母さんがおかしな子ねとけらけらと笑いながらいった。
……え? 高校生?
鏡をみると高校生時代の俺の姿があった。
ま、まさか……
「また過去に戻ってしまったのか!? 俺の輝かしい未来は!?」
「一樹? 何言ってるの? 頭大丈夫?」
「母さん!? 俺の結婚生活は!?」
「ほんとうに大丈夫!? 結婚なんてしてるはずないでしょ!?」
「ええ!?」
その後、ガチで心配した母親が医者の元に掛け合い、精神科のカウンセラーを付けることとなってしまった。
しかも家族以外は面会不可という状態にまで発展してしまった。
まぁ見舞いに来てくれる友達なんていないからいいけど。
改めて整理すると、小鳥と一緒に落ちた後、俺は1年間意識不明になったらしい。
そして数日前、一瞬だけ目が覚めた。多分未来に戻る直前、小鳥の泣いている姿を見た時のことだろう。
再び眠り、今日の朝完全に目覚めたらしい。でさっき一瞬だけ眠ってまた起きたというわけだ。
「今の俺は高校2年生か……」
入院している間、特にやることもなかったので自分のタイムリープの力について考えて見た。
これはあくまで推測だが、過去に戻る引き金は未来での俺の死でないだろうか。
なんかもう二度と未来には帰れないような気がする。
そんな確信にも近い予感が俺にはあった。
なんというか、今回のタイムリープで力を出し切ったというか。
「一樹、調子はどう?」
そんなことを考えていたらお母さんが見舞いに来てくれた。
「ああ、特に問題はないよ」
といつも通りに返す。
それはよかったと母さんは椅子に座った。
「小鳥ちゃんから全部聞いたわ。彼女がいじめられていた事、自殺しようとしたのを身を挺して守った事」
「……え」
小鳥が? 話したのか!? 全部!?
あまりの驚きにどうリアクションすればいいのかわからなかった。
「あの子退院してすぐ私達に会いに来て謝った上であなたのお見舞いに行きたいってお願いしてきたの。顔が強張ってて、手も震えていて、緊張していたのね」
それはそうだろう。俺が小鳥の立場ならご両親に顔を合わすことすら出来ない。
かなりの勇気がいるはずだ。
「もちろん、断ったわ。でも次の日以降も小鳥ちゃんは見舞いの品を持って病院の入り口で待っていたのよ。せめてお見舞いの品だけでもと言ってね」
「……………」
「自転車で1時間以上かけて毎日来てくれていたわ」
「じ、自転車!? 電車じゃなくて!?」
「多分、ご両親にお金を借りたくなかったのね。だから、汗をかきながら自転車で来てくれていたわ。それでね。小鳥ちゃんに聞いたのどうしてそこまでするの?ってそしたら……………」
ごくりと母さんの言葉を黙って待つ。
小鳥は母さんになんて言ったんだろう。
気になって気になってしょうがない俺の顔を黙ってじっと見つめた。
「……? あの、母さん続きは?」
「まぁ……なんやかんやあって小鳥ちゃんにもお見舞いにきて貰っていたのよ」
「おい、そこはぼかしちゃダメなところだろ!? 教えてくれよ!! すげぇ気になる!!」
「まぁ、一樹君を支えたいとかそんなことを言ってくれたのよ」
めっちゃ目をそらしてるし!!
嘘だ。絶対に嘘だ。母さんは嘘をつく時目を露骨にそらすからな……
これは絶対言わないパターンだな。言うだけ無駄なのでこれ以上の追求はやめておく。
そんなことよりと母さんは誤魔化すように言い出した。
「一つだけ聞いていい?」
先ほどまでとは違い声と表情が真剣なものになった。
「え、ま、まぁ。どうぞ」
そんな母さんの雰囲気に気圧されながら答える。
「落ちたら死ぬかもしれなかったのに怖くなかったの?」
母さんはじっと俺を見つめた。
とても真剣な目、俺はこの目が苦手だった。全てを見透かされているような気がするから。
だから、母さんには嘘をつくことが出来ないんだ。
「もちろん怖かったよ。声も手も震えてさ死ぬのが怖くて怖くて仕方なかった」
カッコつけず、素直に言った。
「それでも死ぬことよりも怖いことがあの時の俺にはあったんだ」
椎名小鳥を孤独にして失ってしまう事。それが怖かった。
そう、これが俺の本心だ。今もそしてこれからも変わる事はない。
「母さんと父さんには申し訳ないけど。俺は後悔なんて一ミリもしてない。たとえ誰になんと言われようともきっと俺は同じことをした」
母さんは俺の言葉を聞いてはぁと呆れるようにため息をついた。
「そっか……まぁ、一樹の気持ちは分かったわ。納得はしてないけど。ただもう少し自分のことを大事にすること。一樹のことを大切に思っている人がいることを覚えておいて」
母さんは俺に諭すように叱りつけた。
少し悲しそうな、それでいて心配そうな顔をしていた。
申し訳ない。そう思った。
「……はい。ごめんなさい」
「……中学3年生の前半あなたはいつも辛そうというか、楽しくなさそうというか、でもある日を境に自分のやることを見つけたようでとても生き生きしてた。小鳥ちゃんがそうさせたのね」
母さんは今度は納得したような表情で笑いながら立った。
う、確かにそうだけど、そう言われると恥ずかしいな……
頬をかきながら母さんから目を逸らした。
そんな俺を見てクスクスと笑っていた。
「それじゃあ母さん帰るね」
「ああ。今日も来てくれてありがとう」
病室から出て行く母さんを見送ってベッドに倒れ込む。
「小鳥、来てくれてたんだな……」
そして数日後、無事退院した俺は実家に帰り、一週間過ごした。
で、現在。俺はマンションの前に立っている。右手にはキャリアケース、中身はお泊まりセット。
飛び降りの件で地元で有名になってしまった小鳥と一樹は当初行くはずだった高校を変更し、地元から離れた高校に行くことになった。
で、俺はその高校近くのマンションで一人暮らしを始めることになった。(強制)
一応、小鳥の両親が用意してくいれたところらしい。
あいつの家って結構なお金持ちなのだろうか?
しかし、まだ高校生の(中身は27歳だけど)一人暮らしってハードル高くないかと母さんに言ったらそこは大丈夫だとやけに自信満々で見送られた。
何が大丈夫なんだろうか?
まぁ、前までボロアパートで一人暮らししてたし、どうてことないけど。
まさか、今になってどん底人生が役に立つとは思っても見なかった。
「……でかいマンション」
キーを差し込みエントランスに入る。
エントランスも中々綺麗でなんか高級っぽい。
エレベータで3階に行き、自分の部屋である301号室に着いた。
扉を開け、玄関に向かう。
リビングまでの廊下を歩いているとトイレに風呂などがある。
ユニットバスじゃないんだ。すげぇな。
「ボロアパートからだいぶまともになったな……ってあれ? なんであかりがついてるんだ?」
リビングへ続く扉を開いた。
「おかえりなさい。あなた」
すると目の前にはエプロンを着た満面の笑みを浮かべる椎名小鳥がいた。
???????
なんだこれは?
一体何が起こっているんだ?
なんで小鳥がここにいるんだ?
なんでエプロンを着ているんだ?
「ちょっと、何か言いなさいよ」
顔を赤くしながらお腹をぽんと殴ってきた。
ふむ、これはもしや照れているのではないだろうか…
「恥ずかしいのならやらなきゃー」
「うるさい。ほら、さっさと荷物を置いてきなさい」
「……はい」
……いや、なんで小鳥がここに居るんだ? その疑問を聞こうと思ったら小鳥はキッチンで料理していた。
広々としたリビングの端に荷物を置いてテーブルに向かうとご飯に味噌汁、ほうれん草のおひたし、ポテトサラダがあった。
おお……なんという。俺の好物ばかりじゃないか。
未だにキッチンでパチパチと何かが揚げている音がする。
あれは……からあげか!?
しかもすごく美味しそうなんだが!
……今揚げるのに集中してるし、つまみ食いしてもバレないだろ。
そっと油切り網に置かれた唐揚げに手を伸ばすと
「こら」
「あいて」
小鳥に手を叩かれた。
ジトっとした目をして無言でこちらを見つめてくる。
なんだか、母親に叱られてしまった子供の気分だ。
何か言われる前に退散しようとしたら
「ん」
箸で挟んでいる揚げたての唐揚げを俺の口元に差し出してきた。
これじゃまるであーんみたいじゃないか。
はは。そんな、まさか。はは!!
「あーん」
小鳥は「ん」だけじゃあ伝わらないと思ったのか俺に口を開けるよう催促してきた。
……まじか。あーんってやつなのかこれ。
「あ、あーん」
恥ずかしく感じながらも口を大きく開け、唐揚げを頬張った。
む!! これは!! うまい!!うまいけど!!
「あち!!あち!あち!! ひはが!! はへどする!!」
噛んだ途端ジューシな肉汁が口の中に広がるのはいいけどあ、熱すぎる!!
「はふ、はふ!!はふ!!」
「ぷ、ばーか」
唐揚げの熱さに苦しんでいる俺を見て小鳥は馬鹿にするようにそれでいて楽しそうに笑った。
唐揚げもテーブルに置かれ、夕食の時間がはじまる。
「「いただきます」」
手を合わせ、小鳥が作ってくれた料理をありがたくいただく。
う、うまい。箸が止まらん!
あまりよくないがガツガツとがっつくような食べ方をしてしまう。
「おお、なんか男の子って感じの食べ方ね」
「!! す、すまん。お見苦しいところを……」
「別にいいわよ。見ていて気持ちがいいし」
小鳥はそうは言ってくれるが、ちょっと恥ずかしくなったので食べるペースを緩めた。
「う、うまい……これはすごい」
高校生でこんなに料理ができるなんて……小鳥は本当にすごいんだな。
改めて思うと美少女で家事もできる小鳥と結婚することができたのって奇跡だったのではないのだろうか。
「ま、自炊してたから。これくらいはなんてことないわ」
小鳥はふふんとちょっと自慢げに胸を張る。
その仕草が褒められて喜んでいる子供のようで見ていて微笑ましかった。
まぁ、そんなことを本人に言ったら何を言われてしまうかわからないので心にしまっておく。
「いや、ほんとうまいよ。この唐揚げとか特にさ。小鳥、俺が唐揚げが好きって覚えてくれたんだな……」
「ぶっ!?」
しみじみと言っていると水を飲んでいた小鳥がとても驚いた様子で吹き出した。
「ごほ! ごほ!ごほっ!?」
「こ、小鳥!? 大丈夫か!?」
「いや、あんた……小鳥って……名前」
小鳥? 名前? ……あ!!
「わ、悪い!! 椎名!! きもいよなっ。名前呼びとか、ほ、ほんとにごめん……」
や、やってしまった……そうだ。この世界では俺と椎名は赤の他人だった。
椎名にとっては久しぶりにあった中学の同級生がいきなり名前で呼んできたってことだもんな。
そりゃそんな反応もする。
「べ、別にいいわよ……その代わり、私もあんたのことい、い、一樹って呼ぶから! はい! これでいいでしょ!! この話終わり!!」
むせているせいか顔を赤くしながら一気にたたみかけるように言い放ったしい……小鳥にはいと頷くしかなかった。
「いきなり小鳥とか卑怯でしょ……ばか」
小鳥はボソッと何か言って恥ずかしそうに目を逸らした。
……正直、きもいからやめてと振られた時のテンションで言われるのを覚悟していたが、大丈夫のようだ。
「椎名は食べないのか?」
「………………」
「……小鳥は食べないのか?」
「いや、なんか。今は胸がいっぱいで今はいいや」
「そ、そうか?」
小鳥はしばらく料理に手をつけず、頬杖をつきながら俺の食べている姿を見て幸せそうに微笑んでいた。
ご飯を食べながら小鳥から色々と聞いた。
小鳥の家がこのマンションの隣にあること。
母さんから俺の面倒を見るように頼まれていること。(家事のことや勉強も含めて)
この部屋の合鍵もすでに持っていること。
ここには冷蔵庫、洗濯機、テレビや押し入れなど、生活に必要な家電や家具はすでに一通り揃っていること。
ここにある家電等は小鳥の両親が揃えてくれたそうだ。
俺は娘の命の恩人だからせめてこれくらいのことはさせて欲しいとのことらしい。
ご飯を食べ終え二人で皿洗いをしていると
「2つ確認したいんだけど、あんたって明日と週末は予定とかないわよね?」
洗剤をつけたスポンジで皿を洗い、泡を水で流しながら小鳥がきいてきた。
「まぁ、一応春休みだからなどっちも予定なんてないな」
水で流したお皿を受け取り、ふきんで拭きながら答えた。
「よし。なら明日買い物に行くわよ。ここ家電とかは揃ってるけど生活雑貨は何もないから」
確かに食器洗剤とスポンジとふきんはあるけどこの部屋には洗剤やシャンプーとか細かいものがないな。
別にそれくらい一人で行くんだけどと思ったが、隣の小鳥は行く気満々だったのでご好意に甘えることにした。
人は多いに越したことないからな。
……なんだか、買い物デートみたいだ。
いやいやいや、馬鹿か俺は!
小鳥は親切でしてくれているんだ。それをデートみたいだなんて彼女に失礼だろ。
……はぁ、勝手に浮かれている自分が恥ずかしい。
「あと、週末は小鳥の家に来てもらうから」
衝撃発言が飛んできた。
はい? 俺が? 行くの? 小鳥の家に?
「え、なんで?」
「パパとママが一樹に会いたがってるのよ。今週末に家に帰ってくるから家に呼んで欲しいって」
「え!? 小鳥のご両親が!?」
一気に心臓の振動が跳ね上がった。
ご両親が……このマンションのこととか、家電のお礼を言ういい機会かもしれない。
しかし、な、なんで? 一体何のようなんだ?
あ、だめだ。なんだか緊張してきた。吐きそう。
こういう精神的負担にはクソ雑魚なんだよ俺の心は……
皿洗いも丁度終わった頃
ピロリロリン
お風呂が沸きました。
「え、お風呂も入れてくれてたのか? ごめん」
「別にこのくらいついでよ。それより先入ってきたら? 小鳥みたい番組あるし」
そう言いながら小鳥はテレビの方へ向かっていった。
「ああ、じゃあそうさせてもらおうかな」
カバンからよく外泊する時によく使うミニシャンプーなどお風呂一色を持ってお風呂に向かった。
「……ん? なんだ? 今の会話なんか変なところがあったような?」
まぁいいか……とりあえず風呂だ風呂!!
服を脱ぎ、湯船に肩まで浸かる。
「あぁぁぁ、気持ちぃぃ」
至高のひととき、ようやく人心地がついた。
というか、さっきまで色々とあり過ぎたんだ。ここで少しゆっくりするとしよう。
「ふぅ……」
温かいお風呂のおかげで頭と心に少しだけ余裕ができる。
明日は小鳥と買い物か……楽しみでいる自分がいる。
というか、あれ? 女の子と一緒に出かけるなんて初めてなんだけど。
うわ、やばい。改めてそう思ったらなんか緊張してきた。
ええ、ちょっと、えええ……いや、もう考えるのをやめよう。
なんとかなるさ。多分。
思考放棄して10分ほどお風呂を楽しんで上がる。着替えてリビングに戻るとテレビを見ながら笑う小鳥が居た。
「小鳥ー上がったぞ。お風呂入れてくれてありがとう」
「ん。どういたしまして。よし、それじゃ小鳥も入ってくる。」
「はーい。いってらっしゃい」
「あ、のぞいたら通報ね」
「そんなことしねぇよ」
お風呂セットを持って風呂場に向かう小鳥に向かってコップに水を入れながら言った。
全く、失礼なやつだな。全く。
水を飲みながらテレビの前に座り、頬をついた。
………………ん?
「なんでお前も風呂に入ってるんだ!?」
あまりにも自然だったからスルーしてしまったが、普通に考えたらおかしいよな!? 自分の家に帰って入るだろ!! 隣なんだから!
慌てて風呂場に向かい小鳥を止めようと立ち上がったが
『覗いたら通報ね』
先ほどの言葉を思い出し、動きを止めた。
だめだ。今行ったら確実に覗き認定され豚小屋行きになる。
もしかして、さっきのは俺が止めないように釘を打ったのだろうか。
「……まぁ、風呂に上がったら家まで送ればいいか」
テレビを見ながら呟いた。
一時間後、もこもこのパジャマをきた小鳥がやっと風呂から上がって来た。
キャミソールの上に白のもこもこフード付きのパーカを着てはいるが、右肩がはだけている。
下ももこもこショートパンツなのと相まってあざといと言うかいやらしいと言うか。
なんかいやら……いやいや何を考えているんだ俺は……きもいからやめよう。
「さて、もう暗くなってきたし。家まで送るよ」
邪念を振り払い、玄関に向かおうとすると
「? 別にそんなことしなくて大丈夫よ? 今日はここに泊まるから」
????????
何を言っているんだ? この人は?
泊り? 俺のマンションで? は? は?
「明日も一緒に買い物するんだしここで泊まった方が楽だし」
平然とそんなことを言う小鳥に俺は唖然としていた。
はっと脳をフル回転させ正気に戻る。
「いや……ご両親が心配するだろ?」
「パパとママは平日は基本帰ってこないから、家に帰ったら一人なのよ」
「いや……布団とか」
「枕とタオルケットは持ってきてるから床で寝るわよ」
「いや……男女一つ屋根の下夜を過ごすというのは……」
「何か問題でもある?」
えぇ……
「いや、うん……だめだろ。問題あるだろ。明日俺が小鳥の家に迎えに行くからさ。今日はもう帰ろう」
諭すように優しく話しかける俺を見て小鳥は俯いた。
「……嘘つき」
小鳥は俯いたままボソッと弱々しい声で呟く。
「……え?」
「中学校の時、いじめられて一人ぼっちだった小鳥に言ってくれたじゃない」
え? な、何を? 俺なんか言ったけ?
「お前はひとりぼっちにはならねぇよ。俺がさせねぇって……」
「ぐっ!?」
なぜだろう……そんなこと言った記憶はいっさいないが、何故か否定できない!!
「最近……夢を見るの。みんなから見捨てられて、ひとりぼっちになる夢……だから、ちゃんと寝れてなくて……だけど一樹と一緒だったら大丈夫って……思って。だから、勇気を出したのに……」
俯いた小鳥の表情は見えないが声が震え、体も小刻みに震えていた。
「わ、悪かった!! そ、そうだよな! 俺を頼ってくれたんだよな。小鳥の思いも考えず突き放してしまってた。ごめん。よかったら泊まっていってくれ! あ、ただし俺が床で寝るから小鳥は布団で寝てくれ!! これだけは譲れない」
そうだ。小鳥が頼ってくれているんだ。なら力になってやらなきゃいけねぇだろうが。
「あ、そう。それじゃあ、お言葉に甘えて泊まらせてもらうわね♪」
「……え?」
ケロッとした表情で上機嫌になりながらテーブルに座りこみテレビを見ながらスマホをいじり始めた。
女ってすげぇわと心の底から思った。
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「っ!? はぁ!? はぁ!?」
深夜、思わず目が覚める。
起き上がると一樹のマンションの寝室。
そうだ。あいつのマンションに泊まってあいつの布団で寝ていたんだ。
「……はぁ」
少し、汗もかいており、息が荒くなっている。
ついため息をつきながら頭を抱えた。
最近、私は中学生の時……いじめられて親友だった美久やパパやママ……一樹にまで見放されてしまって飛び込み自殺する悪夢を見るようになってしまった。
まるでもう一つの未来。いや、これが本来の未来だと起き上がった時になぜかそう思ってしまう。
今私は幸せだ。パパとママは週末には絶対家に帰ってくれるようになったし、一樹もいる。
だけど、同時にこの幸せが壊れてしまうんじゃないかって不安になってしまう。
夢は深層心理を写すと言うけど、その通りなのかも。
これは多分寝てもまた起きちゃうやつね。
スマホを見るとまだ3時だった。
仕方ない水でも飲んで心を落ち着かせようとリビングに向かう。
テーブルの隣でくーとタオルケットを掛け寝ている一樹の姿があった。
「間抜けな寝顔」
近くに座りこみ、ジーと一樹の顔を見つめる。
なんだろう、どれだけ見ても飽きないっていうか、ずっと見ていられるわね。
…………あ、そうだ。
すっと起こさないように一樹の隣に寝転ぶ。
えへへ。特等席だ♪
目の前には一樹の背中
初めて告白してきた時はあんなに小さくて頼りない背中だったのに、冬休み前の終業式、屋上で見た背中はとても大きく見えた。
今も改めて見るとやっぱり大きいなぁ。
「どうせならあと少しだけ、すぐ終わるから」
誰も見ていないのに聞いていないのに言い訳をするように小鳥は呟きながら後ろから寝ている一樹を抱きしめた。
なんだか、抱き枕を抱きしめてるみたいだ。
なんでだろう……すごく安心する。
大丈夫かな? 起きてしまったりしないかな?
「……まぁ、大丈夫か。いつもちゃんと寝付けなくて結局6時には起きちゃうし」
だからあともう少しだけと思いながらなぜだか重たくなった瞼を閉じた。
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スマホのアラームが鳴り目を覚ます。
確か、10時に設定してあったはずだと思いながらアラームを止める。
……ん? なんか背中に柔らかい感触がするような気がする。
というか誰かにぎゅっと後ろから抱きしめられているような……そんな感覚。
「……んんっ」
小鳥の声がした瞬間目が覚めた。
は? まさか、俺、寝ぼけて布団にっ!?
そう思い、あたりを見渡しだが、ここはリビングのようだ。
となれば、小鳥が寝ぼけてこっちにきてしまったのか。ひとまず、俺じゃなくてよかったと胸を撫で下ろした。
いや、よかったじゃないだろ。この状況をどうにかしなければ。
「すーすー」
心地良さそうな小鳥の寝息を聞いて昨日の言葉を思い出した。
『最近……夢を見るの。みんなから見捨てられて、ひとりぼっちになる夢……だから、ちゃんと寝れてなくて……だけど一樹と一緒だったら大丈夫って……思って。だから、勇気を出したのに……』
「……本当は、いや、ほんとに寂しかったのかもしれないな」
なら、あともう少しだけ気づかないふりをして……もう少しこのままで……
「だからあともう少しだけおやすみ」
ぎゅっと小鳥の手を握りしめた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
「面白かった」と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです!
また、この主人公(27歳)と椎名小鳥(16歳)のデート編も投稿予定なのでブクマ&評価よろしくお願いします!!
後日談のデート編投稿しました!!
宜しければお読みください!!
https://ncode.syosetu.com/n0193hf/
こちらが本編である短編になります。
https://ncode.syosetu.com/n3492he/
宜しければお読みください!