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第七十二話『処遇』

 



 ――ユーラの頭を撫でると、心から満足そうな顔をした。

 その表情を見て安心するゼント、住処を後にし、協会へと直行する。


 周りの目を気にすることは無く、

 建物に入ると待ちかねたような態度を見せる者が……



「――ゼント、ちょっと来い」


 彼も忙しい身であるはずなのに、お人よしが過ぎるようだ。

 視線で奥の応接室へ入るように促される。ゼントも黙ってそれに従った。


 何度か見た綺麗な部屋、本来は一介の冒険者ごときに使われるはずもないのに。

 すぐにカイロスも入って来る、何故か当たり前のようにセイラも一緒にいた。

 ゼントの後ろを見て驚いた表情をしながらも、二人は席に座る。



「いくつか報告したいことがある」


「それは俺もだ、カイロス。まずはそっちから聞きたい」


 お互いに、分かっているとでも言うように頷く両者だった。

 カイロスは疲れ切ったように続ける。



「お前が前に言っていたライラとの件を調べてみたんだが……物的証拠も証人もいなかった。だからお前が評価を擬装したことについて罰則を科すことはできない。町で流れている噂にもどうこういうつもりもない。それでいいな?」


「ああ、まあ……」


 ゼントは元々、人に関わられるのが嫌であんな芝居じみたことをしたのだ。

 だが状況は変わった。戻ろうとしている以上、悪評は邪魔になった。逆に好都合だった。


「それとお前が見たという怪物についてだ。ユーラからも証言が取れた。彼女のことは残念だが、俺たちは未来を見なくちゃいけない。今現在町には警戒するよう張り紙を出している。もう見たか?」


「いや、ちょっとこっちでごたごたしていてな」



「お前がか?……まあいい。で、最後なんだが……竜や正体不明の怪物で住民の不安を煽った影響か、また魔獣討伐の依頼が増えている。何度も言って申し訳ないんだが、また冒険者として戻ってきちゃくれねえか?」


「その事なんだが、俺からも話がある」


 珍しくゼントの真面目な態度に、カイロスは慌てて姿勢を正す。

 だが話始めようとした時、部屋に二人の闖入者があった。

 本来あってはならない光景だったが、どうしても問いただしたかったのだろう。



「――突然失礼します。先輩、いやゼントさん。どういうことか説明してくれますよね?」


 部屋に入って来るなり、声を荒立てて不機嫌さを露わにする金髪の持ち主。

 後ろには短い茶髪の彼が見える。気まずそうに周りに礼をしている。

 何とか引き留めようとしたらしいが、無駄に終わったようだ。


 フォモスとハイス。ユーラの元パーティーメンバーだ。

 片方からは殺意に近い憤り、もう片方からも懐疑の目を向けられていた。

 一瞬だけゼントの真後ろに視線を向けるが、それ以外はずっと一点を見つめている。


 許可なく入ってきた二人に、カイロスは言うまでもなく驚いていた。

 となりに座っているセイラも表情はあまり動いていないが、少なからず驚きはあったらしい。


「ちょうど良かった。今からこの場に居る全員に話そうと思っていたことだ」


 一人ゼントは逃げも隠れもせず言葉を続ける。

 どちらにせよ後にでも伝えようとしていたからだ。



「まず、ユーラは俺が引き取った」


「なぜですか!?あなたは……!」


 ゼントの発言にまたもたらされる驚愕、

 不思議な事に今度はセイラが一番だったようだが、

 フォモスは言葉は丁寧に、だが内心は怒り狂っていた。



「我々の許諾なく勝手なことはしないでください」


「いつから彼女はお前の物になったんだ?俺はあくまで本人がそう望んでいたから受け入れたまでだ」


 フォモスの自己中心的な発言に、ゼントでも流石に腹が立つ。

 成人している彼女の処遇を決めるのは彼女自身だ。少なくとも彼らではない。

 そもそも、何故そんなに感情的になっているのかも分からなかった。



「……っ! だったら、約束できますか?彼女を愛すと」


「……どうしていきなりそんな話になるんだ」


 最近どこかで聞いたような単語に、ゼントは一瞬躊躇う。



「ユーラは心酔するくらいあなたの事が好きだったんです。何のために毎日あなたへ手作りの料理を渡していたと思っているんですか!?今、あなたの事しか覚えてないのも、おそらくそれが要因だと私は睨んでいます」


「…………」


 それは衝撃的な発言……というわけではなかった。

 気づいてなかったと言えば嘘になるだろう。予感は十分にあった。

 だが目を背けて、単に世話好きなだけだと思い込んでいたのかもしれない。


 感情が抑えられなくなったのか、

 何も言えないゼントを置き去りにして、早口でまくし立てるように続ける。



「はっきり言って、先輩の行動は同情に揺さぶられただけで、目の前しか見えていません。本当にユーラの事を思ってくれているのなら、それは大きな間違いです。可哀想だからといって救いの手を差し伸べるのは、かえって彼女の未来を削ぐ行為です。あまりに非道で無責任だとは思いませんか?」


「だったら問題ない。俺は最後まで面倒を見ると決めた。それにお前は教会でのユーラを見たのか?あれを見て見ぬふりをしろという方が非人道的だ」


 一度は口を噤んだが、負けじと反論するゼント。覚悟は既に決めたのだ。

 だが留まることを知らないのか、フォモスはさらに言葉を続ける。



 セイラもハイスでさえ、横やりを入れることは許されない。

 そして、もう一人ゼントの真後ろに居る人物も、ただ黙って冷徹に見守っていた。


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