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第4話 遭遇戦

「わかったわかった...やりますよ。自分の命のためにな!で、もちろん鬼を倒す必要はないんだろ?」


『男性の救助を優先してください。まずは鬼をこちらに引き付けましょう』


「引き付けて...どうする」


まさか至近距離で全弾撃てって訳でもないと思うが...。


『近くにドローンが来ていますので誘導しましょう。ドローンの機銃掃射なら小型の鬼は排除可能です。スマートフォンに味方ドローン1機が表示されている。

ロータリーとドローンの距離は、300メートル程ある。

駅前には障害物も多いからドローンの視界に上手く誘導する必要があるな。

階段を使ってできる限り鬼の近くへ接近する。

鬼との距離はもう50メートルもない。


「ドローンの有効射程はどのくらいだ?」


『およそ100メートルです。障害物を考慮すると、開けた場所に誘い込むのが得策です』


開けた場所に誘い込めば自ずと接近戦をせざるを得ない。

それは避けたいところだが...鬼は今にもおっさんを串刺しにしそうな勢いで車体を揺らしている。

ここで、拳銃を使っても有効ではない。辺りに使えそうなものは...。

足元には、鬼が破壊した手のひら大のコンクリート片が散らばっている。


「出たとこ勝負だな...。おい化け物!こっちだ!」


投げつけた石は鬼の肩に命中し、転がった。

鬼はすぐさまこちらを振り向き、目を剥いた。

爬虫類を思わせる獰猛な目と合ってしまった。

身の危険を感じて、咄嗟に反転し、走り出す。

命をかけた鬼ごっこを始めてしまった。

とりあえず走って、走って、走って、走る。

後ろからはアスファルトを踏み抜かんばかりの足音が迫る。

ジュラシックパークに来てしまった気分だ。


「ドローンは!?」


『ロータリーに中央に飛び出せば、ちょうどよく』


背を向けて走るということは、ロータリーから離れるということだ。

どこかで反転する必要がある。

さすがに息が上がり、鼓動が早くなる。

右に半円を描くようにロータリーに向かうために旋回して走る。


「リュックが邪魔だ!鬼は...」


右方向を一瞥すると、既に10メートルまで鬼が迫っている。

一度は敵の攻撃を回避する必要しなければ...!

リュックを投げ捨て、右手で拳銃を抜いて走る。

鬼とは対角線に対峙する形になった。


「おおおおお!!!!」


鬼が右腕を水平に振りかざしたのを一瞬見えた。

一か八か、鬼の右振り下ろしを掻い潜るように低く、スライディング。

鬼の腕は空を切り、爪がアスファルトを削っていく。

そのまま振り向かず、ロータリー目掛けて全力疾走。


「いた!あれがドローンか!」


「そこの人!急いで離れて!」


ドローンの拡声器から女の声が聞こえ、間を置かずに機銃掃射が始まる。

ドローンの下を走り抜け、振り替えると、そこにはドローンの機銃掃射を一身に受けた鬼が倒れるところだった。


「やっ...たな!」


息を整え、一息つく。


「早く離れて!あと2体!」


ドローンからは、切迫した女の声。


『五十六様、残り2体がロータリーに出現しました。銃声に引き寄せられたようです』


気づけば2体の鬼がドローンと俺を囲んで対峙する形になっていた。

ドローンの操縦士の判断は早かった。

ドローンはすぐさま1体の鬼に機銃掃射を開始する。

しかし、鬼はジグザグに走り、巧みに銃撃を回避している。


「当たれぇっ!!」


迷っている暇はない。こちらはもう1体を迎え撃たなければ!

銃の知識はなかったが、指が自然とセーフティをあげ、引き金へ。

そのまま拳銃を構え、迷わず引き金を引く。

鬼が倒れるまで、引き金を引き続けるしかない。

1秒がスローモーションに感じる。

銃弾は鬼の胴体を貫くが、鬼は痛みなど介さずに直進してくる。

拳銃は17発全てを吐き出したが、鬼の突進は止まらない。


『五十六様、そのまま動かず』


何を馬鹿なっ...!と言う暇もなかった。

ズドン。

最後の時かと目を閉じかけた時、鬼の頭部が横からハンマーで殴られるように弾けた。


「...?」


『間に合いました。狙撃です』


鬼はあっけなく崩れ伏した。

ズドン。

そして、もう一体は、ドローンが機銃を打ち尽くしたところをどこからともなく、頭部を綺麗に撃ち抜き無力化した。


『見事な狙撃です。目標は沈黙。鬼は殲滅されました。なお、あなたの射撃は、17発中5発命中したようです。最初にしては、中々見事な初陣でした。お疲れ様でした』


アイリスは淡々と目の前の出来事のリザルトを報告した。

まるで全て予定通りといった事務的なものであった。


『さて、ミッションを続けましょう。どうやら五十六様は射撃の才能はなさそうですね。今後は射撃の訓練を推奨いたします』


「余計なお世話だよ...ってこれまだ続くのか。はぁ...」


『まあまあ、イベントはこれで終わりですから、後は楽ですよ』


おそらく俺は魔物ではなく、このAIに殺されるような予感が頭をよぎった。

次回は学園編。

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