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イソジンと恋愛

嘘つき

作者: イソジン

んー、ちょっと分かりずらいかも

僕は昔からよくどうしようもない嘘をつく癖があった

小学校の時、おばけが見えるって言ってみたり。中学校の時、頭がいいふりをしたり。高校の時、ギターを弾けるって言ってみたり。


そんな小さな癖は大人になっても治ることは無かった。

嘘に嘘を積み重ね、いい人を演じ。色んな人の心を弄ぶようになっていたのだ。


僕には好きな人がいた。いたというのも好きな人と断言が出来ないからだ。

嘘だらけの僕は好きと言う感情すら曖昧で、好きだと言い切れば好きだし、好きじゃないかもと疑ってしまえば自信なんか無かった。


告白をしたのは3回目のデートのときだった。

彼女はいつだって大袈裟な僕の話を聞いて笑ってくれた。

すごく心地が良かった。


「付き合ってくれないか」

「私でよければ」


二つ返事でかわされた契約のようなもの。好きという感情よりも他の人にはあげたくない。そんな感情だった。


自分の嘘にはひとつの特徴があった。

それは実現すると言うことだ。

例えばさっき言ったお化けが見える。

これは本当に見えるようになり大変怖い思いをした。


例えば頭のいいふり。

本当に勉強ができるようになりしっかりとした大学に入ることが出来た。


例えばギターが弾けるという嘘

これも練習を重ね、本当になった。


嘘を本当にするために知らず知らずのうちに頑張っているのか、はたまた何かがそうさせているのか。

おかげで嘘はバレることも無く、自分のこの癖は人に知られることは無かった。


付き合うと色々なことで嘘をつくタイミングが出てきた

相手に合わせる必要があるからだ。

人付き合いは少しの嘘と妥協から始まると言うのが自分の持論だ。


全部思ってることを言ってたらキリがないし、自分が折れなきゃいけないこともある。


自分の利益ばかりを求めるのではなく、相手のために無償の奉仕を行なう日だってあるだろう。


しかしそれはきっと自分にも帰ってくる。そう信じ、毎日積み重ねていくのだ。


恋愛なんかその最たる例だ。

自分をよく見せるために偽り、相手に好かれるために偽り、そのくせ自分の本質を理解されたくて、けどなかなかされなくて悩む。


何かを相手にあげることに自己満足を得てるのに、相手から何も帰ってこないと不安や不満に潰されそうになる


小さな嘘をつく癖がある僕は、彼女に好きだと言う嘘をついた


これは好きなんて感情ではない。

独占欲と保護欲がそう見せているだけだ。


彼女に送った偽りの好きは返ってきた。とても容易く、とても早く。


小さな嘘を相手にあげるたび自分に返って来る好きは積もっていった。


付き合い始めて3ヶ月がたった夏。

いつも通りのデートは一転して表情を変えた。


夜と大人の雰囲気に飲まれた僕達は一線を越えたのだった


彼女から本物の1番大きな愛をもらうことに若干の罪悪感を感じながら日を跨ぐ、夜がふけるにしたがって変わっていく心、踏み込んでは行けない領域が無くなるようだった。2人だけの世界とよく形容されているのがよくわかり、嘘と現実の境目が曖昧になった。


時計の針が6時を指す。帰る時間だ。

彼女をおこし帰る支度をする。

起きがけで「好き」という彼女になんて返すのが正しいのかわからなかった。

少し笑顔を浮かべ頷き、キスをする。そして「帰ろう?」と手を差し伸べる。

今思えば返事に悩んでいたのかもしれない。

不服そうな顔をしていたが彼女は頷くと帰り支度をする。


まだうっすら暗い街を、駅に向かうサラリーマンとは逆に歩き出す。

すれ違う人々がせかせかとしていて面白く感じた。


足どりはそこそこ軽かった。


彼女の家の前まで歩いたが気まづくて何も話せていなかった。

彼女も同じようで手をぐっと握ったまま下を見ていた。


「じゃ、ここでいいよ」

彼女が繋いでいた手をそっと名残りおしそうに離す。


「そっか。じゃあ、また」

まだ彼女の温度が残る手を振る。

そう言った後、彼女に背を向け歩き出す


「ねぇ、ーーーくん」

風でよく聞こえなかったが呼ばれたようだ。


「ん?」

振り返り、首を傾げる。


「私の事好き?」

顔を赤らめながらそう聞いてくる。


少しの思考の後、答えを言った


「大嫌い!」

それを聞いた彼女は少し頬をふくらませたあと、ニコッと笑って手を振った。嬉しそうだった。



僕は嘘つきだ。それを彼女は見透かしていたのだろう。

やっと、しっかり好きになれたのだ。

僕もとても嬉しかった。


しかし僕の嘘は後で本当になることを彼女は知らなかった。


僕は嘘つきだ。










おやすみ〜

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