プロローグ
夢を見ていた。
遠い遠い昔の夢。
子どもの頃の、幸せだった時の夢。
目を覚ますと涙の筋が出来ていた。
幼い頃の事はほとんど忘れてしまったけれど、母さんの笑った顔と幸せだったという記憶は残っている。
涙は夢を見たせいだろうと深く考える事はなく、目元をぬぐいながら俺は体を起こした。
外が見たくて暗い部屋の小さな天窓を見上げた。
鉄格子のはまった小さな天窓から見える空は、とても綺麗な青空だった。
俺にとっては唯一の外とつながっている窓。
石の壁に閉ざされた、この狭い部屋が俺の居場所。
きっと外は空気が澄んでいるのだろう。
耳をすますと小鳥の声が聞こえてきて、俺は壁にもたれながら小さくため息を吐いた。
この部屋からは出られない。鳥の姿さえ見ることができない。
いつか出してもらえると、幼い頃は希望を持っていたが、もう諦めた。
何度壁を叩いて手が壊れようと、何度大声を出して喉が潰れようと、誰もここから出してはくれなかった。
手と足と首にはまっている枷にももう慣れた。
毎日毎日この暗い部屋で何をするでもなく過ごしていた。
小さな天窓から見える空だけが、俺のすべてだった。
あの日までは…。