宿屋の子ユキノ
私の名はユキノ。とある宿屋の娘です。
うちの宿屋はいつも沢山のお客様がきます。
お客様は基本料理を食べにきます。
宿は料金が嵩むので、極力使わない方が多いです。
そして私は受付で宿泊客の人を捌いています。
お父さんとお母さんはそれぞれやることがあるので、受付の業務は今では大体私がやります。
小さい時から働く真似事をしていてこの業務を辛いと思ったことはありません。寧ろ、自分から少しこの手の仕事について調べてみるほどには興味があります。
この仕事は楽しいです。酔っ払いの人は面倒くさいところがありますが。
そうやって、受付をやっていたところ、ある1人のお客様が来ました。どうやら、お泊まりの方です。
身なりは、剣を持ってるので剣士の方かなと思いました。
あまり詮索はしない方がいいので、これくらいにしましょう。
その男の人はこの宿に飯はあるのかと聞いてきました。
もちろんです。うちの母親が作っているわけですからそれはとっても美味しいものなのです。
すると、男の人は少し考え込むような素振りで、ロビーの壁に寄りかかりました。
まさか、人の作ったものは食べないという方でしょうか。
それにしてもあんまりだと思います。
私のお母さんの手料理はそれはそれは美味しいんです。
いつも暖かくて、ぽかぽかして、それはもう一度食べてみないと…。って急にこっちを向くのはやめて下さい。
へ?私は作らないのかって?いいえ、私はここの業務をやっているので作りませんよ?
え?なら作ってみればいい?肉はあるからって?そんな恐れ多いですお客様。何を、
あ、そんな、どうしても私のものが食べたいなんて。如何しましょう。
酒に酔ったお客様にお酌をしろと言われたことは幾度かはありましたけども、ここまではさすがになかったです、
でも、この人は中々真摯に見えなくもないです。話し方も丁寧でした。そして、お駄賃を多めにくれました。
そうしたら、私自身ちょっと厨房の方にもやる気がでてきました。待っててください、逸品作ってきます。
そして20分後、私は、肉の余った汁で、お客様のお肉を調理し直して出しました。
そうですね、残り汁程度なので本当に雑煮のようなもので…。
えっと、お味はいかがでしょうか、ソワソワッ。
なんと、優しい味がするといって、とても喜んでいました。
ふふふ、そうですか、優しい味ですか、フフフ。
優しい味の料理は万人に通じるという隠れた褒め言葉なのです。
ありがとうございます、冒険者様。その冒険者にして汚れなきお姿忘れません。
その、決して絆されたわけでは、こちらこそ感謝の気持ちをということです。
えっと、その、私も年頃の娘ですから、いつでも、と言わずその、いつまでもいいんですよってあれ?もう部屋に戻ってしまわれたのですね。
残念です、今日初めて会ったお若き冒険者様。
また明日の朝いらして下さい。
聞けば、冒険者ギルドで実力のある方がギルドカードをこの街で今日手にしただとか。
その、また手料理で迎えてもいいですか?
貴方の食べる姿、喜ぶ顔思わずとろけて癖になりそうです。