最終話・私が始め、私が終わらせる物語
「これが仮想世界専用PC・GT-A0E02」
円柱の柱、無数の細く刻み込まれた線は、脈打つように青白い光を光らせる。
手前には正方形の石があり、そこにUSBメモリーが刺さりそうな穴があった。
「ただの穴……この穴で読み込めるってわけ?」
半信半疑で差し込むと、青白い光は赤へと変わる。
すると、私の全身がそれに共鳴すかのように淡く光りだし、足先から0と1の文字となり柱に吸い込まれた。
潮の匂いと、囁く波の音。
私は見覚えのある場所に辺りを見渡す。
が、見覚えのある場所とは少し異なり、遠くは無いのか、緑色のプログラム言語が壁を成す。
「おかえりなさいマスター。
ここは惑星チキュウの試作データー」
目の前で微笑む人物に、私は息を呑んだ。
「ニュークリアス」
だが、それにしては話し方が丁寧で、それでいて何処か無機質だった。
呼ばれた少女は「私はニュークリアのようで、違う存在」そう遠くを見た。
「私は、命令型破壊プログラムKK-124・ニュークリアスを抹消するために、マスターに作られた存在。
似ているのは、ニュークリアスが私をベースにして作られたからでしょう」
その説明で、
固く閉ざされた記憶の扉が勢いよく開く。
忘れていたんじゃない、自分で忘れたふりをして、記憶を奥底へと沈めたんだ。
それは一種の記憶喪失に近い症状で、自分でそれを引き起こしていた。
「そうか!
惑星チキュウの創造プロジェクトが始まると同時に、
生き物の生成コスト対策で、転生の制度も考えられ始めた時、下界上がりの神と天界産まれの神が険悪になって……」
ニュークリアスを考えたのは、私がはじめまりだったんだ。
イレナは私が誘ったのに過ぎなかった。
「反転生派にニュークリアスを解放させて、マスターは惑星ハールスに隠れる。
見事な手際の良さでした」
「ありがとう」
「ここに来たって事は、ニュークリアスは天界に行ったのですか?」
ニュークリアスが私を生かしたのは、この子の存在を知っていたから。そして、自分が産まれた意味を知っていたから。
すべては自分が始まりだった。
「そうね、今頃天界を綺麗にしてくれているわ、リリィのデーターも回収されて、新たな世界に転送されてるはず」
「リリィという少女も可哀そうですね。
私の力を入れる器という理由だけで作られて、今まで苦しい思いをするなんて」
「今度は苦しい思いなんかさせない」
「一つの惑星に、一つの命が生まれた。
そして五年後、一つの命により、全ての惑星が死んだ」
彼女は手のひらから鍵を出して「そしてその後、新たな天界に二人の神が産まれる」と、力強い眼差しで見つめた。
「私とリリィ」
これは予言でもただの戯言でもない。
私が仕組んだ計画なのだから。
ここから先は、シナリオ通りで。
心躍る展開も、大どんでん返しないから語らなくてもいいだろう——
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
この物語を書きながら、何度も悩んで笑って泣いて……でも、読者のあなたが最後までついてきてくれたおかげで、無事ここまで辿り着けました。
もしよかったら、また次の作品でも一緒に冒険していただけたら嬉しいです。




