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と或る王の物語   作者: 雪野千夏
第一部 国売りのセド

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3-6

「それにしても国を売りに出すとは、この国の王が愚王というのは誠のようですな」

「そうだね」

「しかし、大丈夫なのですか。セドの参加者はこの国でも名の知れたものばかり。確実にセドに勝つ秘策があるのですか」


 タラシネ皇子を手にかけなければと思っていた重責から放たれたラブレヒト将軍は饒舌だった。バルドーに酒を持ってこさせ、一気にあおった。

 ラブレヒト将軍に付き合い杯を傾けていたタラシネ皇子は手を止めた。

「誤解してはいけないよ。僕たちがするのは、国売りのセドじゃない」

「は?」


 ラブレヒト将軍は訝し気に眉を寄せた。こじんまりとした椅子に乗った大きな体が揺れた。


「僕らの目的はこの国を落とすこと。セドはあくまでその手段に過ぎない。セドで無理なら君の兵がいる」

 ラブレヒト将軍は信じられないことをきいたと、目を見張った。

「千の兵士で国を落とせと?」


 立派な体が椅子の上でガタリと揺れた。いくら預けられた千の兵が精鋭といえど、国境を守る有能な警備隊や数で勝るンダーレ領兵を相手にするには無理があった。


「すでにこの国には味方がいるからね」

「内通者がいると?」

「時が来れば分かるよ。こんなだから、兄上に警戒されるのだけれどね」

「いいや、頼もしいことですよ」

 ラブレヒト将軍は虚を突かれた顔をしたが、気を取り直したように膝を叩き、酒瓶を傾けた。

 

 ※


 ラブレヒト将軍を宿の外まで送ったカーチスが部屋に戻ると、タラシネ皇子が一人酒杯を傾けていた。

「よろしいのですか?」

 カーチスはタラシネ皇子の手から酒杯を取り上げた。

「なにがだい?」

「あのようなことを仰って、どうするつもりですか?」

「別にどうもしないよ。ああ言っておけばあの男のことだ、しばらくは動かないだろう。その間にセドが終われば、それでいいよ」


 タラシネ皇子はカーチスから酒杯を取り戻し、なんでもないことのように言った。


「それはあまりに危険では」

「カーチス。僕はね、三年前からずっと用意してきた。兄上や父上の思いつきでどうこうなどできはしないよ。それにね、人は所詮自分の思い描いた未来の方にしか進めないようにできている。だから、大丈夫」


 タラシネ皇子は最後のひと口を飲み干し、立ち上がった。手早く街歩き用の身なりを整える。


「さて、明日のそうめんういろうの前に、一仕事しようかな」

「どこへ行かれるのですか」

「ハル・ヨッカーがおいしいご飯のお店を教えてくれるそうだからね」

「どこまで付き合うおつもりなのですか?」

 声色を落とした乳兄弟にタラシネ皇子は振り返った。

「面白いだろう?あんな紙切れ一枚で国を変えられると本気で信じているのだよ。ばかばかしくて試してみたくならないかい」

「酷なことはおやめください」

「珍しいねカーチス。君がそんなことを言うなんて。あの女に惚れたかい?」

「いえ、そんなことは」


 タラシネ皇子は帽子を手に取ると、カーチスの肩を叩き、足取りも軽く階段を駆け下りた。


「後を頼むぞ」

 カーチスは首を振ると、タラシネ皇子の後を追った。

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