秋の風が吹くその朝に
私は朝を歩く。冷たい風を切りながら、
何処からか、たおやかな君の薫りがだだよう。
甘い薫りの愛しき君が、秋の訪れをやさしく教えてくれる。
私は、辺りを見渡し探す、そのたわわに咲き乱れる、君が宿りし母なる樹の在りかを。
そして容易く見つかる、君の甘い薫りがそこから立ち上っているから。
君はその可愛し姿を、緑の堅し葉に守られそこにいる。
その姿は、夜空に輝く綺羅の星の如く瞬き、集っている。
そして小さき君は仲間と共に、守り人の緑の葉の側で、
ちらりと愛らしい姿を見せている。
母なる樹の足元の黒き地面には、
金色の姿の君が仲間と共に名残の星の様に、
千に万にと散っている。
さぁと、冷たい風が私の体を吹き抜ける。
胸に入り込む、君の甘い薫りに、
私の心は、今年も出逢えた喜びにうち震える。
小さき花よ、金の花よ、甘い薫りの星の姫。
風に乗り、その薫りを果てまで届ける秋の使者。
神が創りし、たおやかなる甘き薫りの愛し児よ。
私は密かに呼び掛ける。君の名を、
その名は、キンモクセイ、私の愛しい秋の花