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総隊長ラーナ

次回にようやくライクの強さを紹介できそうです。この話を前に持ってくるべきだったとちょっと後悔。

概念魔法に関する追記も書けたらいいと思ってます。それ書いたら説明は大体終わりかと……多分

「ふあぁぁ、朝か」


 俺は体を伸ばして起き上がった。


「さて、今日は魔法関係のことを確認したら、ギルドに行きたいなミナネさんとも約束してるし」


 昨日に行ければ行きたかったが、アリス達が遊びを満喫して遅かったのもあり、母さんがムキになってかなり長時間付き合わされたこともあり、疲れて諦めてしまった。母さんにも困ったもんだ。


 そんなことを着替えながら思い、一階に降りた。


「兄さん、おはよう」


「ああ、おはよう」


 すると、アリスが朝食を用意しているところだった。


「相変わらず早いな」


「もう習慣になってるからね」


 家では朝食はアリスが作っている。母さんが作れないわけではない、むしろ母さんの料理はかなり美味い。その影響なのか、アリスが自主的に教えてもらって、朝を任されている。


「母さん達は?」


「冒険者の仕事だって。数日戻らないかもって言ってたよ」


 母さん達は結構優秀な冒険者らしく、若い頃から有名だったらしい。今も時々依頼を受けたりしている。ただ、今は基本的に身体が衰えないようにするのが目的らしい。


「数日戻らないのは珍しいな」


「そうだね。あと、お金渡されたよ。金貨10枚、好きに使って良いって」


「……そうか。相変わらずか」


 金貨は1枚で宝石が買えるほどだ。金貨10枚は子供に渡す金額ではない。しかし、この金額を渡すのは信頼からだ。俺達なら無駄に使わない、奪われないと信じて渡しているから、こんな金額渡すな! とは強く言えない。


「奪われないように注意しないとな。それとアリス、魔法を詳しく確認したいんだが時間あるか?」


「大丈夫だよ。じゃあ、朝食を食べたら庭で確認しようか」


 そう言って朝食の用意をササっと済ませてくれてから、席に着いて一緒に食べ始めた。


「ところでミースはどうしたんだ?」


「グッスリ眠ってたからまだ寝かせてるよ。昨日聞いたんだけど、寝るのが好きみたい」


 寝る必要がないのに? 趣味みたいなものか。


「食べたら起こしにいくか。ミースにも聞くことがあるし、ミースが知らないこともあるしな」


「そうだね。ミースの朝食も用意してるし」


「そうなのか? 食べる必要はないと言ってたと思うが」


「食べるのも好きなんだって」


 あいつは人間と変わらないな。基本的に仲間や家族の立ち位置でいいかな。


 それから、朝食を食べ終わってミースを起こしに行き。声を掛けたのだが「もう少しだけ〜」とか言い出したので、服を摘んで持ち上げ、顔に軽くデコピンをかました。


「(痛い!? な、何事ですかー!)」


「やっと起きたか」


「え、ライクさん? どうしてここに?」


「起こしに来たんだよ」


「それは、お手数おかけしまして……ってなんで触れることができるんですか!?」


「知らん。声を掛けた時に触れて、いけるかと思ったら普通に持てたぞ」


「なぜでしょう。生命力が多いからでしょうか」


 俺的には理由はなんでもいい。寝坊しても物理的に起こせるからな。


「そんなことより、庭で魔法の最終確認したから来てくれ」


「あ、はい。それはいいんですが、庭でやるよりも外でやる方がいいと思います。的などがあると良いですし、ライクさん達の魔法や武術などの正確な実力も知りたいですし」


「それもそうだな」


 俺はミースの提案に乗って、過去に技の試し打ちなんかをしていた、人の大きさほどの岩石が散らばっている岩石地帯に向かうことにした。


「あそこかー、久しぶりだね。ちょっと離れてるし、弁当は作っておいた方がいいね」


「そうだな。頼む」


 技の試し打ちを人にあまり見られたくはなかったので、ひと気の無い所を探した結果、街から少し離れている。


「(アリスさん! 料理お上手ですね! とても美味しいです)」


「(そう? ありがとう)」


 ミースはアリスの朝食に感激していた。食事が好きなのは本当らしい。ミースの食事は、見えない人には料理が消えていくように見えているんだろうか……外では食べさせられないな。


 それからアリスが弁当を用意して、ミースの朝食を食べ終わってから、街の外に出るため大通りに向かった。


「街を出るのは久しぶりだな」


「そうだね」


「(あのー、私が言っておいてなんですが、ライクさん達の年齢で外に出してくれるものなんですか?)」


「(大丈夫だ。俺達の年齢だと自己判断ができると思われるからな。大人と同じで自己責任さ)」


「(それはそれで冷たい気もしますが)」


「(大丈夫だよ。この街の住人なら、ある程度の範囲までは危険があれば伝わるし、伝えられるようになってるから)」


「(便利な機能ですけど、どうやってそんなことを?)」


「(街で何年か過ごすとバッチみたいな物を渡されるんだ。それを通してってことだと思うぞ)」


「(悪用されたりしそうですね)」


「(色々対策はしているみたいだよ。バッチを奪った者は重罪とか、他にも(おおやけ)にはしていない何かがあるらしいし)」


「(色々考えてるんですね。原理は謎ですけど)」


 確かに色々謎だけど、街に危険を知らせるのにも重要だから、機密として情報がないんだろうな。何をすれば機能停止するのかもわからなければ、どうしようもないし。


「あ、門が見えてきた」


「(大きいですよねー)」


 デカイよなー、無駄に。

 コアの街の街壁はかなり高い、大きな魔物などから守るための高さだ。その影響もあって門もかなり大きめなのだが、それにしても人が通るにはデカすぎる。

 領主であるイザの父さん、リウム伯爵に聞いてみたのだが、貴族のワガママらしい。

 この街は円状になっており外から、市民街、中心に貴族街と分かれていて、貴族街に入るにも門を(くぐ)る。で、その門も大きく、ハデだ。つまり、外へ出る貴族が自分が通る門が小さい、地味であることが嫌であったり、門で人が溢れている時に目障りだとか言われた結果らしい。

 かなりの金額を使ったらしく、愚痴を言っていた。が、大通りは大きめにしていたので、その辺りの問題は無く、街の出入りがスムーズになったので良し、と言っていた。

 領主も大変だなーと、思っていると。


「アリスちゃーん」


 げ……

 門で検問をしている兵士が、馴れ馴れしく話しかけてきた。


「夜は暇? ご飯とか食べに行かない?」


「ありえない。話しかけないで」


「手厳しいなぁ。お、ライクじゃないか。久しぶりにアリスちゃんに守られながらお出掛けか?」


「(イライラする人ですね……)」


 はぁぁ、面倒くさい。こいつはナジ、イザ2号と言ったところだ。アリスが好きだから絡んでくる、それだけだ。


「ああ、もうそれでいい。バッチは付けてるからいいだろ? 行かせてもらうぞ」


「まあ、待てよ。外へ出ても大丈夫か確認しないとな」


「はあ? なんだそれ」


「外へ出ても、魔物の対処ができるかの確認だ」


 別の人の対応を見ていたが、そんなことはしていなかった。兵士が他にもいるとはいえ、俺達にそんな時間をかけていたらダメだろ。しかし、付き合ってやらないと時間が掛かるだけだからな。


「はぁ、わかった。何をするんだ?」


「俺の攻撃を一発避けれたら通っていいぞ」


 それなら問題ないな。アリス関係だったら即行で(きびす)を返すところだ。


「(兄さん、なんなら私が間に入るけど?)」


「(いや、しなくていい)」


「(なら私がこの者に恥をかかせますか? 魔法でどうにでもなりますよ?)」


「(いや、しなくていいから)」


 ミースはアリスの影響を早くも受けてないか? ミースは慎重に行動してくれないと困るんだが。


「で、どうするんだ? アリスちゃんが代わりにやるのか?」


「いや、俺がやるからサッサとやってくれ」


「ちっ! ほらよっ!」


 不意打ちのつもりか?

 拳が飛んできたが、右足を軸にして避ける。


「二撃目が無いとはいってないぞっ!」


「(ライクさん!)」


「……!」


 そうだろうな。

 一歩下がってスレスレで避ける。


「え? うわ!」


 当たるとでも思ったのだろうか?

 盛大にからぶったナジは派手にコケて、人の視線を集めた。

 こんなことでそんなに派手にコケるなよ、目立つじゃないか。


「(ビックリさせないでくださいよ!)」


 いや、あんな攻撃が当たるわけないだろ。


「(大丈夫だよ、ミース。兄さんにあんな攻撃が当たるわけない)」


 いや、アリス。声には出していないがお前もかなり心配してたぞ。まあ、その心配はイザの拳を受けてしまった俺のせいなんだが。

 とりあえず避けたし、もう行っていいだろ。


「避けたからもう行くぞ」


 俺はナジにそう言い外に出ようとした。


「ま、まて! 今のは無効だ」


 はぁぁぁ……最初から無視が正解だったか?


「ちゃんと避けたはずだが?」


「くっ! とにかくもう一度だ!」


「(みっともない)」


「(見苦しいです)」


 こいつの大声のせいで、さらに視線を集めている。面倒くさい……誰かこういう奴らの取り扱い方を教えてくれ。


「何をしている!」


 大きな声で人を掻き分けて、金髪ロングの若い女性がやってきた。その人を見て周りの人達が騒いでいる。

 誰だ? この美人。


「え!? た、隊長! こ、これは、その……」


 隊長? 検問の? こんな人じゃなかった筈だけど。


「何をしていると聞いている」


「は、は! この者と少々問答をしていただけであります!」


 問答……ねぇ。


「君達、本当か?」


「簡単に言うとそうです」


 この人が味方かどうかわからないので、話を終わらせるように言う。


「では、詳しく言うと?」


 えぇ……そう返してくるのか。こうなると、言ってしまった方がいいかな。ナジが睨んでいるが無視だ。

 俺は隊長と言われている人に説明した。


「そうか……馬鹿者!」


「ぐっ!」


 ナジが殴られた。

 あれ? 味方? 信じてくれるんだ。


「(グッジョブ、隊長さん)」


「(ナイスです、隊長さん。もう2、3発殴っていいです)」


 辛辣(しんらつ)だな、お前達。


「守るべき市民を傷付けようとするとは何事か! 恥を知れ!」


「申し訳ありません!」


「謝るべき相手が違う!」


 いや、もう良いんだが……そんなことさせても恨まれるだけだし。あと、目立つからやめてほしい。


「……申し訳ないです」


 ナジが頭を下げた。

 うわぁ、怒り心頭なのが伝わってくるな。


「(当然の報い)」


「(自業自得です)」


「君達、本当にすまなかった」


「あ、はい大丈夫ですよ。でも、よく信じてくれましたね」


「なに、そういうことを見抜くのが得意でね」


 俺と似た様な感じかな?


「申し遅れたが、私はコワの街の総隊長を任されているラーナと言う。以後お見知り置きを」


 総隊長、この街の兵隊のトップってところかな。凄い人が来たもんだ。


「ご丁寧にありがとうございます。自分はライクと言います」


「アリスです」


「うむ。ところで、1つためしてもいいかな?」


 うん?


「はい。かまいませんよ」


「では、失礼して……ふんっ!」


「(え……)」


 ミースから唖然とした声を聞いて、周りからも悲鳴が聞こえたが、おれは立ち尽くした。

 そして、隊長さんの剣が俺の顔寸前で止まって……周りの人達はホッとしていた。


「なぜ、避けなかった?」


「何を言ってるんです? 避けられなかっただけですよ」


「そんな平然と立っておいてか? 私が行動を起こしてから、剣を見るでもなく、唖然とするでもなく、私の目を見続けた君がそんなことを言うのか?」


 やめて〜! 目立ちたくないんだよー!


「……まあいい。良いものが見れた、それだけで我慢しよう」


「は、はあ」


 この人、良い人みたいだけど、厄介な人でもありそうだなぁ。


「では、私は失礼する。街の外には十分注意するように。行くぞ! お前は性根から鍛えてもらうしかないからな」


「お手柔らかにお願いしますー!」


 ナジを連れて隊長さんは去っていった。

 さて、ようやく街の外、に……あ、あれ? ふ、二人はどうしたのかな? 怒りが伝わってくるんですけどー。


「「(兄さん!)(ライクさん!)」」


 な、なんだ。


「「(避けてよ!)(避けましょうよ!)」」


 ああ、あれね。いや、当てるつもり全くなかったみたいだから、避けなくていいと思った。ということを伝えたら。


「「兄さん!(ライクさん!)」」


 は、はい。


「「((私達のためにも)避けてよ! 避けましょうよ!)」」


 心配させて悪かった……

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