表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/25

概念魔法

何か足りない気がする……

概念を理解させれたかが重要ですが

感想貰えるよう頑張ります。

 

「さて、そんなことより能力をいい加減確認するか」


「そんなことって……まあ、いいかな。兄さんだし」


「(いいのですか……しかし、これがライクさんに対する対応なんですね)」


 うーん、その認識は不本意だが。まあ、あながち間違ってないので放っておく。


「で、どっちから言う?」


「じゃあ私から。えっと、魔法の才能があったみたいで四元素の魔法と、近の概念魔法とかよくわかんないもの貰った」


「(え?)」


「へぇー、良い方なんじゃないか? しかし、武闘家のアリスに魔法とか何か間違ってる気がするな」


「そういう兄さんはどうなの?」


「俺は、神の眼って書いて神眼って言うのと、生命魔法、貰ったのがはやさの概念魔法だな」


「(……神眼)」


「人のこと言えないじゃん! でも、神眼とか凄そうなの私も欲しかったなー」


「それは言っても仕方ないな。それに、今回は女神様のお陰で才能が目覚めたけど、努力をしていれば自分で気付く才能もあるらしいし、これから何か目覚めることもあるだろ」


「そうなんだけど、今すぐに武闘家に役立ちそうな才能が欲しかったなぁ」


「今も才能に溢れてると思うし、魔法も色々できると思うけどな」


「そうかなー」


 アリスで才能がなかったら、殆どの人が無能になってしまうぞ。


「それより気になったのが、概念魔法は無意識で貰ったって認識してるな」


「そういえばそうだね」


「この貰ったのが特殊なやつってことで確実かな。司祭さんから聞いた通り祈ったら理解したし」


「そうだね」


 この概念魔法だけ複雑なんだよな、他の才能はわかりやすいんだがな。

 そして、概念魔法も気にはなるがそれより……


「(……神眼、概念)」


 この固まっている奴を戻さないとな。


「おーい、帰ってこーい!」


 俺はミースの目の前で手を振った。


「(……は!?)」


「起きたか?」


 そう言うと、ミースが俺にすごい勢いで詰め寄ってきて言った。


「(神眼ってなんですか? 概念魔法って……ライクさんとアリスさんは使徒様か何かですか?)」


 勢いの割に静かに、そして驚いた表情だった。


「(いや、なにと言われてもな。使徒とか言うのでもないし)」


 ちょっと聞くと、神眼なんて何千年生きてきて初めて聞いたらしい。概念魔法は知ってはいたらしいが、神の使徒、英雄、悪魔のような存在が持つもので、聞いたことはあっても見たことはないそうだ。

 昔は多くの人が持っていたと聞いたし、本にも書いていたんだけどな。


「兄さん、ミースどうかしたの?」


「ああ、簡単に言うと神眼と概念魔法、特に神眼が珍しいみたいだ」


「そうなの? でもまあ、神眼に関しては兄さんなら当然かなって私は思うけど」


「なんでだ?」


「神眼の能力は知らないけど、兄さんの目は凄いって知ってるからね」


 ん? 目が凄いなんて知る機会あったか?

 俺は首を傾げた。


「私は衝撃だったんだけど、兄さんは気にしてないだろうね。昔にね、兄さんから戦い方を教わったことがあったんだけど……」


 アリスは少し昔のことを語り出した。




 その時は、修練で兄さんにもお母さん達にも相手にならなくて、どうしたらって考えてた時期だったかな。お母さん達は身体に叩き込めって言うけど、何がダメなのか明確に教えてくれないし。兄さんにも聞いてみようと思って、修練が終わって庭で座っていた兄さんと話したんだよ。


「兄さん」


「ん? どうした」


「今日もさ、兄さん、お母さん、お父さんに一度も攻撃が当たらなかったんだけど、私って弱いのかな?」


 私はちょっと不安そうに聞いた。


「そんなことはないぞ。アリスの攻撃が怖いから避けてるんだし、アリスの打撃を避ける奴はそうそういないと思うぞ」


 少し安心した。でも……


「それじゃあ、兄さん達はなんでそんなに避けるのが上手いの? 兄さんに至ってはお母さんの攻撃もほとんど当たらないし」


「そう見えるか、俺の場合は当たったら終わりだから必死に避けてるだけなんだけどな」


 そんなことを言うけど、兄さんはいつも余裕を持って避けているように見える。

 お母さん達二人を同時に相手にしても、攻撃を受ける姿を最近は見ていない。お母さん達も「私達の方が相手してもらってるみたいだ」と言っていた。


「でも、身体能力高いわけじゃないのにそんなに避けれるのは、何かあるんじゃないの?」


「うーん、言葉にしたことなんてなかったからなんて言っていいやら。そうだな……アリスもある程度は相手の攻撃のタイミングはわかるだろ?」


「何となくわかるけど」


「で、それが何となくでもわかるのは相手をよく見ているからだ」


「えっと?」


 私は首を傾げた。


「そうだな、相手が攻撃しようとして飛び出そうとする際に、相手は足に力を入れて前のめりになるなどの動作がある。アリスは相手のその準備動作を感じているんだ。それが考えるより早くできているから、何となくって感じがしているわけだ」


「それくらいなら誰でも出来るんじゃないの?」


「例えの話だよ。アリスはもっと高度なことをやってるよ。目線とか、肩の動きとか、前のめりになる以前の動作なんかの細かいところを見てる」


 そうかなー?


「でも、お母さん達や兄さんのは避けられないけど?」


「俺の場合は基本カウンターで少し違うから置いといて、母さん達は準備動作があまり無いんだ。達人になればなるほど準備動作がなくなって、フェイントなんかを入れるみたいだな。そして、そんな動きができる人はアリスの準備動作を見ているから、アリスの攻撃も当たらないわけだ」


 兄さん凄いなぁ、そんなこともわかるんだ。カウンターのことも後で聞こうかな。


「そうなんだ、お母さん達もやっぱりすごいね。でも、私が当てられない、避けられない理由は分かったけど、益々兄さんがどうやって避けてるのか気になるんだけど」


「やってることはアリスと一緒だよ。より詳しく見えるだけで」


 詳しく見える?


「どう詳しく見てるの?」


「俺も意識してやってるわけじゃないけど、相手の力の動き、力の強さが見える感じかな」


「んーー?」


 よくわからない。どういうことだろ?


「そうだなぁ、アリスちょっと俺に攻撃を仕掛けてみてくれ。ちゃんと当てるつもりでな」


 そう言うと兄さんは立ち上がって私の前に立った。


「え、うん」


 当てるつもりでって言われても1メートルもないくらい近いんだけど、どうしようかな……兄さんなら避けるだろうから大丈夫だよね……


「左足、右足、左手の本命ってとこか」


 ––––いく! へ?


 左足で兄さんの足を狙った。大きく飛び避けさせるつもりが兄さんは最低限の移動で避け、右足の追撃の時には兄さんは両足が地面についていて体制が全く崩れていなかった。

 その後の右足は当然のように受け流され、本命の左手も出してみたがこれも拳を滑るように避けられて、背後に回られ軽く手刀を受けた。


「……」


「ま、こういうことだ」


 ……は! 少し唖然としてしまった。あんな近距離で先制を譲ってもらった上であんなに綺麗に避けられるとは思わなかった。でも、実演されてもハッキリとはわからなかった。とりあえず最初に思ったのは……


「えっと、兄さんは心が読める?」


「違うけど似たようなものかな」


「どういうこと?」


「あー、実演してもハッキリとは分からないか。まあ、どこにどの程度の力が入っているのか、視覚的に見えてるって考えてくれたらいいかな」


「どんな見え方してるのか想像もつかないけど、力の動きが見えるとそんなに避けれるものなの? それに準備動作のないように気をつけたつもりなんだけど?」


「そうだな、そんなわかりやすい動作はなかったな。母さん達でもこの近距離なら防ぐことはできても、避けることは難しいだろうな。一回の指摘で大したもんだ」


 兄さんに褒められた! もっと頑張らないと。

 でも、どう見えてるのかわからないけど、あの近距離から不意打ちのような先制で、カスリもしないことには武闘家として納得ができなかった。


「ただ、攻撃の手順を考えてる段階でわかってしまえば必然だな」


「え?」


「人って準備動作を抜け切ることは相当難しいのか、考えてるだけでも動作が見えるんだ。つまり、アリスが少し攻め方を考えていただろ? その段階で手順がわかって避けたんだ」


 ええええ〜!?


「え、えっと……私が攻撃の手順を途中で変えてたらどうしたの?」


「変えようとした新しい手順が思考の段階で見えて、それに対応するだけだな」


「最早未来予知じゃない!?」


「そんな大層なもんじゃないさ、力の動きを読み取らないといけないから、大袈裟に言ってもせいぜい心が読めてるってぐらいだ。それに、ここまで読めるようになるのにかなり時間が掛かった上に、読みきれない時もあるからまだ未熟だ」


 時間掛かったって……兄さん、私と同じく修練始めて二、三年のはずだよね?

 ……でもわかった、私は志を間違えてたんだ。


「そう……流石兄さんだね。兄さんに勝つなんておこがましいことなんだってよくわかったよ」


「なんでそうなる? アリスなら頑張ればどうとでもなるだろ。無心で戦う訓練とか……いや、準備動作を極限までなくすとか、ほかにも……」


 この後兄さんが色々言ってたけど、必要ないと思って全く聞いてない。

 この時に私は兄さんには敵わない、そもそも護りたい人に勝つ必要なんかないって思ったよ。だから兄さんを守るために、兄さんには身に付けられない頑丈さ、身体能力なんかを高めようと決めたんだよ。




 そんなこと言ったような気はするな。そんな特別なこととは思わないんだが。でも、その時にそんなことを決めてたのか。確かによく鍛えていたとは思うが、技術もしっかり身に付けているのはアリスの凄いところだな。聞いてなかったのは、ほんの少し思うところがあるが……


「神眼を持つ前からそんな眼を持ってたから当然だと思ったんだよ」


「(なるほど……未来予知を擬似的にでも行うことができるなら、何もおかしくないのかもしれませんね)」


 それだけで納得できるのか。あと、未来予知じゃないから。


「いや、まだどんな才能か言ってないから、神眼が凄いかどうかはわからないだろ」


「「じゃあどんな才能なの?(じゃあどんな才能なんです?)」」


 アリスはミースの声が聞こえてないはずなんだが、息が合うな。


「どんなものと言われると困るが、ザックリ言うと人の気配なんかがよりハッキリとわかるようになったな」


「それ、目に関係あるの?」


「全周囲を見渡せる千里眼みたいなものじゃないか? 神眼は見なくてもわかる、みたいな。あと、意識を変えると世界を上から見ることもできるみたいだな」


「上から見る? どういうこと?」


「はるか上空からのコワの街を見てる感じで、地図を見てるみたいだ」


「それ、兄さんの本来の目の視線どうなってるの?」


「それは全く見えないな。上空の目で見ている時はこっちの目が優先されるみたいだ」


「それは、使いづらそうだね」


「というか使い道がわからん。規模の大きい街なんかを探すなら使えるが、調整が難しくて街で人を探すとかは今のところできそうにないぞ」


 大きい街は地図に載ってるしな。今はコワの街が小さく見えるくらいだが、どこまで引きで見えるのか試すか。


 ……おいおい、世界広すぎだろ。俺たちの国があるの大陸じゃなくて島だな。旅のしがいはあるが、大陸移動の門があるとはいえ移動で苦労しそうだな。

 ちなみに、大陸移動の門というのはその名の通り、門から門にワープするものだ。大きく貴重なので国が管理しているものが殆どだ。


 俺はアリス達に世界の広さを伝える。


「へぇー、旅に出るの楽しみだね」


「(世界を見渡すなんて神のような力ですね)」


 楽しみなのは間違いないが、神になったつもりはないぞ。そんなことより次だ、次。


「次はアリスの魔法からいくか。アリスは四元素ってことは火、水、風、土が使えるのか?」


「うん。そうみたい」


「そうか、じゃあ次だ」


「え、えぇぇ! どんな感じに使えるかとか聞かないの!?」


「いや、だって家の中では危ないだろ。外で試す時に色々聞くから今使うのは我慢してくれ」


「ぶぅぶぅ」


 ぶぅたれてもダメなものはダメだ。

 ただ、使えることは使えるが、原理がわからないんだよな。基本的なことは確認しておくべきか。


「(ミースは魔法の原理わかるか?)」


「(はい。基本的なことを言っておきますと、人間の持ってる魔力は微弱なので、魔法は魔力で精霊に語りかけ精霊におこなってもらう行為です。人の適性は精霊に正しく伝えることができる属性を教えてもらっている、ということです。例外もありますが)」


 なるほど、詳しいことは後で聞くか。


「で、ちょっと気になったのが俺の魔法は生命なわけで、本で読んだら生命魔法は治すことが得意みたいで、光魔法も癒すことが得意ってことなんだが、何が違うのかわからん。ミースとアリスは分かるか?」


「わたしだって知らないよ。生命魔法って珍しいって聞いたくらいだし」


「(それならわかります。光魔法は防壁を作る、傷口をふさぐなどで、生命魔法は身体などへの補助や強化効果、失った物の再生などですね)」


 俺はアリスに「ミースの言葉は後で伝える」と言いながら疑問に思ったことを聞いた。


「(なんとなくは分かるが、具体的に傷口をふさぐことと、再生することの違いは何なんだ?)」


「(えっとですね、光魔法は有るもので治します。例えば手を切断された場合、切断された手があれば光魔法で付けることができますが、腕がない場合は出血を止めるぐらいが限界です。生命魔法の場合は腕が無くとも新たに再生することが可能です)」


「(生命魔法のほうが完全に上位互換じゃないか?)」


「(そうとも言えません。光魔法の回復はさほど魔力や肉体的な消耗を気にしなくていいですが、生命魔法の再生は生命力をそれなりに使います。さっき伝えた魔法の行使の例外のひとつですね。生命力を使い過ぎることは無防備をさらすようなものなので、普通の人はまず使いません。補助としての魔法は魔力で精霊が行うので基本は補助、強化魔法としての使い方ですね)」


 なるほどな。


「(ちなみに、俺がイザから殴られた時はミースが魔法か何かで助けてくれたのか?)」


「(そうです。あまり力を使いたくありませんでしたが、一般人程度の攻撃なら問題なかったので)」


 一応貴族だが、妖精からしたらそんなもんか。


「(あれは、何の魔法だったんだ?)」


「(光魔法の衝撃を吸収するタイプの障壁を張りました。体が押される感覚は残ったと思いますが)」


「(確かに、尻餅をついたしな。あと、お礼を言ってなかったな、あの時は助かった)」


「(とんでもないです、お役に立てて良かったです)」


 とりあえず、今は聞くことはこれくらいでいいか。

 俺はアリスに魔法のこと、ミースが助けてくれたことを伝えた。


「え! ミースが助けてくれたの? ありがとう! 本当にありがとう! 困ったことがあったら私に言ってね! できる限り助けるから」


 アリスは顔でも喜びをだしていて、ミースに何度もお礼を言っていた。が、ミースはちょっと戸惑っていた。


「(あ、ありがとうございます。あ、あの〜ライクさん、ちょっと大袈裟じゃないです?)」


「(まあ、俺もそう思うが、一応俺は人より怪我をしやすいからな。アリスからしたら、大怪我から救ったようなものだから受け入れてくれ)」


「(は、はあ。わかりました)」


 そして、ミースのお礼の受け入れ、アリスのお礼の応酬が少し続いた。


 そして、それが終わっていつも通りに戻ったアリスが言う。


「魔法って便利なんだねー。再生も生命力の多いっていう兄さんなら、あまり問題になりそうにないしね。使い過ぎなければ」


「(そうですね。使い過ぎなければ)」


 二人がジト目で見てくる。

 俺は誰かれかまわず助ける人と思われているのか? そんな気なんてないぞ、人の良い人が困っていたら助けるが。

 それより、一番気になっていたことの確認だ。


「で、ようやく一番重要そうな概念魔法だが、アリスは説明できるか?」


 この魔法、少々ややこしいんだよなぁ。


「うーん、簡単に言うと相手を近づける、相手に近づくことができるんだけど……上手く説明できないかな」


 やっぱり俺と一緒で概念ってところが説明しにくいみたいだな。


「まあ、そうだよな。アリスに確認だが、あらゆることを近付けることができるんだよな?」


「うん、特殊なところもあるけど大体そんな感じ。無制限ではないみたいだけど」


「俺も同じだしそれが確認できればいいか。特殊な部分は後で確かめよう」


 使う人間は何となく理解できるみたいだしな。


「(あの……私には何をわかりあったのかさっぱりなんですが)」


「(聞いたことはあるんじゃなかったのか?)」


「(存在は知っていても詳細は知らないです)」


 ……ミースには別に説明しなくても良いような気がするが。


「(戦闘や魔法のサポートなどもするので、できれば教えてほしいです)」


 というので、理解させられるかわからないが、説明することになった。


「アリス、ミースにちょっと概念魔法の説明するから、自分の部屋か、一階でヤイが来るまで好きにしてていいぞ。もうじき来るだろうし」


「そう? じゃあ、のんびりしてるね。後で飲み物とか果物でも持って来るよ、兄さんもミースも何でもいいよね」


「ああ、助かる」


「(ありがとうございます)」


 ミースも頭を下げた。


「じゃあ、後で」


 アリスはそう言って俺の部屋を出ていった。


「(自然に私のことも気遣ってくれるんですね)」


「(最初の警戒は俺を心配したが故のことだからな。それより、妖精って食事するのか?)」


「(する必要はないですが、味覚などの五感はあるので食事を楽しみたいなら食べますよ)」


「(そこまで人間に近いのに喋れないんだな)」


「(いえ、喋ることはできるんですが伝わらないんです。音だけでなく、味覚を除いた感覚のすべてが普通の人には伝わらないです)」


「(味覚以外すべてってことは、触れない、臭わない、聞こえない、見えない、ってことか。何で、俺達は見えたんだ? しかも、それなら隠れる必要ないんじゃないか?)」


「(ライクさん達のようにハッキリ見える人は少ないですけど、少し見える、少し聞こえる、といった人達はそれなりにいます。見える理由は、視覚が優れているんだと思います。味覚以外のどれか優れた五感が一つでもあると、違和感が生まれ、妖精を知っている人にはわかってしまいます)」


「(へぇー、俺たちの声はそっちに伝わるのに不思議だな。まあ、気を付けるべきことには変わりないってことか)」


「(はい。それより、概念魔法のことが知りたいんですが)」


 そうだった。しかし、うーーん……なんと言っていいやら。


「(そうだな……ミース、速いの意味は分かるか?)」


「(え? バカにしてます? 素早いとか、走る速度が速いとかじゃないんですか?)」


「(じゃあ、起きるのが早い、来るのが早いの意味は?)」


「(それは、起きるまでの時間が短い、来るまでの時間が短い、ですよね?)」


「(大体そうだな、はやいって言う言葉の概念を理解している証拠だ。例えば、起きるのが短い、来るのが短い、だと意味が伝わらないだろ? だから、はやいって言う言葉の概念を理解していないと、はやいって言葉自体がわからないんだ。来るのがハヤイってなに? って感じだな)」


「(むむぅ……)」


 まだ難しいか? う〜ん……


「(……もう一つの例にエルフの概念の話をすると、ある森に200年生きている耳の長い人間がいるとする。エルフという概念、種族名や寿命、特徴や生態などを知っていたら、それは人間じゃなくてエルフだろってなるが、エルフの概念を知らない人には、化け物、魔物の類いの可能性を考えて警戒するだろうな。これが、エルフの概念を知っている者、知らない者の違いだ。つまり概念って言うのは、言葉を知っている、その言葉の意味を知っているかどうかってだけだ)」


「(……なんとなく理解しました)」


「(そうか……)」


 疲れた。これ以上の説明は俺には無理なので理解してくれたと思っておこう。


「(しかし、よくそんな難しいことを知ってますね)」


「(扱うための最低限の知識なのか、能力の確認の時に無理やり理解させられたんだよ)」


 理解するのも、させるのも疲れる代物だなぁ……


「(それで、その概念をどう使うんです?)」


「(それは––––)」


 俺が説明しようとすると。


「兄さーん、色々持ってきたよ」


 アリスが飲み物やら果物を乗せたお盆を持って入ってきた。


「おう、助かる。ありがとな」


「(ありがとうございます)」


 ミースも頭を下げて礼を示した。


「お礼なんていいから。それで、説明は終わったの?」


 アリスがお盆を置きながら言う。


「概念の説明は終わったところだ」


 アリスに言いながら俺は飲み物に手を伸ばしたのだが、コップが三つあるのは良いが人のサイズのコップだった。

 ミースが飲めるのか? このサイズ。


「そっか、じゃあ概念魔法でどういうことができるか実際に見てもらおっか」


「試せるのか? 危なくないか?」


「大丈夫だよ、そのためにミースのサイズと合わないコップ持ってきたんだから」


 あー、これはそういう意図があったのか。


「で、何をするんだ? アリスは近の概念だったな」


「そう。だから、このコップをミースの手の大きさに近づけるよ」


「(え……)」


 アリスが言うと一つのコップが小さくなっていき、ミースの手ぐらいのサイズになった。


「わー、自分で使っておいてなんだけど、すごいねー本当に小さくなった」


「本当にできるんだな。自分の中で意味が通る近いっていう概念を現実にできるのは凄いな」


 司祭さんが色々言うわけだ。


「そうだね、相手の技術力に近づける、相手の強さに近づける、勝利を近づけるとかもあるね」


「勝利を近づけるとか強すぎじゃないか」


「そうでもないよ? 近づけるだけで勝てるかどうかは別、有利にはなるけど結局最後は実力次第だよ。それに、差があり過ぎると消耗が激しいし。しかもこの力、貰った時に知っていた概念しか操れない。貰ってから新しく近いの概念を教えてもらっても理解できない、してくれないみたいだし」


「そうみたいだな。まあ、理解できないのは自分が操る概念だけみたいだがな。そう言う意味だと俺たちは洗礼遅くてよかったかもな。字を学んで、本なんかを読んで、概念を多く知ってから貰ったわけだし」


「そうだね」


「だけど一応、アリスが知らない概念を聞いた時どうなるか知りたいな、例えば……目が近いとかは知らないんじゃないか?」


「……? ごめん兄さん、「例えば」から先は何を言ってるのかわからないや」


 わからないときたか、徹底してるなぁ。


「どう聞こえたんだ?」


「私の知っている音もあるんだけど、グチャグチャになってて別の言語を話してるみたいだったよ」


「へー、それはそれで聞いてみたいな。でも、やっぱり洗礼の時に知っていない概念は、知ることができなくなるのか」


 となると……言葉が同じで違う意味、概念だとどうなるんだ?


「ならアリス、目が近いって意味がわかるか?」


「目が近い? 距離が近いってこと?」


 これは通じるのか……さっきは近眼、遠くが見えないことの意味で、今度は距離が近いの意味で言った。こっちが伝えたい概念も確認されてるのか、ややこしいな。でも、確認しておいてなんだがこのことはあまり気にしなくていいか、会話に悪影響はほぼないだろ。


「(あの、すみません。ちょっといいですか?)」


「(ん? なんだ?)」


「(とりあえず概念魔法については理解しましたし、ライクさん達はすごいってこともわかりました。ですが、アリスさんを見ていて気になったんですが、概念魔法は何をエネルギーとして使ってるんですか?)」


 ん? 知らないのか。


「(多分、ミースが説明していた生命力を使っているんだと思うぞ)」


「(え、そうなのですか? それならさっき私が説明する必要なかったんじゃ……)」


「(いや、何かの力を使うとは分かっていたが、漠然としていて詳しくは分からなかったから、無駄ではないと思うぞ)」


 すべてを詳しく説明されたわけではないからな。そういうシステムなのだろうが、親切なのか、不親切なのかわからない女神様だな。


「(そうですか。しかし、生命力の消費量は少ないのですね。アリスさんはあまり疲れていない様子ですし、私の目から見ても消費量は少ないです)」


 そうなのか? 教えてもらった知識だと、俺の概念魔法は結構消費するみたいなんだが。


「アリス、概念を使って疲れないのか?」


「うん、差がそれほどないからね。家をミースの手のサイズにする、とかは結構消耗すると思うよ。それと、物なら維持とかする必要ないみたい。だから、小さくしたらずっとそのままで、大きくするならまた力を使わないといけないよ」


「いろんな物に使えるのは便利そうだな。俺の概念は物には限定的みたいだし」


「(できないことが普通ですよ……)」


 まあ、普通はそうだがな。


「(あと、概念魔法とは関係ないんですが、ライクさんは検証をよくするんですか? 洗礼の後に、新しく知る概念は知識として入らない、などは貰った知識で知っていたんですよね? 改めて試す必要ないのでは?)」


「(何を言ってるんだ? 与えられた情報が正しいかどうかの確認は必要だし、情報のどこかを勘違いをしていたら危険だろう)」


 当たり前のことを言ったつもりなのだが、ミースは頭を傾げていた。


「(えーと、あれ? ライクさんってそんなに慎重な人ではない認識だったんですけど)」


 失礼だな。まあ、会ったばかりなんだからそんな誤解もあるだろう。それより、俺はいつの間に考えなしの人物だと思われてたんだ?

 二人揃って首を傾げていたら、アリスが聞いてきた。


「二人して、なに首傾げてるの?」


 俺が一連の流れを伝えると。


「あー、なるほどね。改めて聞くとミースの気持ちがよくわかるなー、これは兄さんの悪いクセだね」


 俺のクセ?

 俺はまた首を傾げていた。


「契約って言葉に、代償に、まったく怯まなかった兄さんが、もらった知識を確認する慎重さがミースには不思議なんだよ」


 そう、なのか?


「ミースにわかるように言うと、兄さんは自分の危険には無頓着なんだよ。つまり、契約に関することは兄さん自身にしか危険がないから気にしなくて、概念魔法は私にも関係があるから慎重になってるみたい」


 ……そういうこともあるかもしれないが、自分を気にすることもあるぞ。


「たまに、自分のことを気にすることもあるけど、その辺りは私もハッキリ説明できない。でも、これから兄さんを見ていればわかってくると思うよ」


「(なるほど、そうですか……)」


 ミースが頷き、アリスにお辞儀をしていた。


 その辺は理解しなくても……

 とは、言えなくて俺が固まっていると。


「すみませーん。アリスさん、ライク君はいらっしゃいますかー」


 ん? この声は。


「アリスー、ライクー。ヤイさんがきたよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ