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イザとヤイ

変なところあれば御指摘ください。

貯めてたのを投稿していきます。余り貯めてないですが。

 俺は能力をすぐに知ろうとしたが、今から知ると、能力のことを深く考え込んで移動がままならないと思ったので、とりあえず家でお互いの能力を確認することにした。なので、ついでにアリスの買い物に付き合ってから帰ることにした。


「兄さん、あの服可愛いい! しかも安い」


「ああ、そうかもな。アリスに似合うんじゃないか?」


「本当? じゃあ買ってくる! あ、兄さん! あれも可愛い」


「まてまて、それは流石に高すぎる。先に目を付けた奴にしよう、買ってやるから」


 そんな会話をしながら人で賑わい出したコワの街を回った。

 このコワの街は港街と王都の中間にあるので、流通の関係で結構豊かで色々な物が集まる。物が集まると言うことは人も集まるので、朝食の時間を過ぎた後はかなりの人で溢れる。


「さて、そろそろ帰るか」


「そうだね、朝は食べてない上にもうすぐお昼だし」


 そう、朝は早く教会に行きたいがために朝食を食べていなかった。俺が家から飛び出すことにアリスには付き合わせて申し訳なかったので、色々付き合ったんだが……アリスの可愛い服好きは相変わらずだった。


「しかし、相変わらずファン武具にこだわるな」


「だって、前衛で戦うのは良いんだけどゴツゴツした服とか嫌なんだもん。それにお母さんのは全部綺麗で可愛い服だったし、これが普通だと思ってたから」


「まあな、改めて思うと母さんもよくあんな仕事してくれる職人見つけたな」


 さっきの買い物は、母さんやアリスの言う可愛い服(防具)ファッション武具を買ったのだが、俺の知る限り武具にファッションを取り入れる職人などかなり稀だ。ちなみに、ファッション武具と言うのは面倒なので、ファン武具と呼んでいる。

 そして、そんな店は色々揃うコワの街でも二店舗ぐらいしか知らない。そして、驚くことに性能が高く、安い店と高級店に分かれているので、初心者と熟練者どちらでもファン武具を着れるとのことで密かに人気らしい。

 密かに人気というのはファン武具は手間が掛かるので、それを知った人は自分の分を確保するために広めたりはしないようだ。アリスは母さんに教えてもらって知ることができたらしい。


「お母さんグッジョブとしか言えないね」


「お前からしたらな」


 そんなアリスの様子に、微笑ましくなりながら家に帰っていると。


「お、ライクか」


 面倒臭い奴に会ってしまった。

 しかも一人か……止めてくれる奴らがいない。


「……なにか用か?」


「お前またアリスを連れ出して何してたんだ?」


「洗礼に行って買い物してた」


 俺はぶっきらぼうに答えた。


「なに!? 洗礼は俺と一緒にするとアリスと約束してたんだぞ」


 初耳だった。そうなのか? と顔でアリスに聞いてみるが、アリスは首を横に振った。覚えがないようだ、恐らく子供の頃の話なんだろう。


 このうるさい奴はイザと言って俺と同じ年で、一応貴族だ。親父さんは理解のある良い人なんだが、仕事で離れてから好き勝手に育った結果こうなったらしい。アリスとは幼馴染みで子供の頃アリスと遊んでいたみたいだ。その頃からなのか、側から見ている限りアリスのことが好きなようだ。

 まあ、アリスは贔屓目を抜きにしても可愛い。肩に掛かる程の淡い青色の髪が俺は特に綺麗だと思っている。


 そんなアリスといつもいる俺が気に入らないのか、イザは何かと絡んでくる。


「どうせ子供の頃の話だろ? アリスは覚えてないようだしな。あと、アリスを呼び捨てにするのはやめとけ嫌われるぞ」


 俺がそう忠告すると馬鹿にしたように。


「ふ、お前に嫌われるぐらいなんてことはない、だからいい加減にアリスを縛るのをやめて自由に行動させるんだ。いつも一緒に居て恥ずかしくないのか?」


 冷静に馬鹿な言葉を返してきた。

 面倒臭い……兄弟が一緒にいても問題ないだろ。そして、嫌われるのはアリスからだ、言葉がわからないのかと疑いたくなる。

 アリスはこんな態度のイザが嫌いなようで、顔には出さないが呼び捨てにもイライラしている。

 こんな奴と一緒に遊んでいたことがアリスにとっては人生の汚点らしく縁を切りたいそうだが、話がまともに通じないのでうまくいっていない。


 そんな面倒な相手に俺がどうやり過ごそうか考えていると。


「兄さんは別に私を縛ってない、私が一緒にいたいから一緒にいるだけ。あと、約束なんか覚えてないからそれも無効、呼び捨てもやめて不愉快だから」


 イザのことは基本無視なアリスが割って入ってきた。表情にはあまり変化は見られないが、言葉には怒気が入っていた。が、どうせ無駄だろうなと俺は思っていた。

 基本、人当たりがいいアリスが無視していることから、それなりの理由があって無視してるんだからな。


「ライク! アリスに思ってもいないことを言わせて恥ずかしくないのか? 恥を知れ」


 ……どんな精神状態なんだ? 言わせる暇なんかなかったし、アリスの言葉を無視してると言っていいぞ。それに、イザがうるさ過ぎて行き交う人がチラチラ見てくる。目立つの嫌なんだが……


「さあ、アリス。とりあえずライクから離れてこっちに来るんだ」


 自分勝手に話を進めるイザが、アリスに手を伸ばした。それは許容できなかったのでイザの手を払った。


「っ! 何をする、邪魔をするな!」


「お前は何様のつもりだ。勝手に話を進めてアリスに触ろうとするんじゃない」


「兄さん……」


 アリスが感激していた。

 守ってもらったことが嬉しかったらしい、普段助けるようなことは無いにしても大袈裟だ。


「貴様ぁ!」


 イザが怒り狂った様子で殴り掛かって来た。が、どうするか……反撃をしてもいいんだが、目立ちたく無いし、一応貴族だし、受け流しは……駄目だな、前に絡まれた時に怒りが収まらずにいつまでも絡まれたし、仕方ない一発殴らせて冷静にさせるか。


 俺はその結論を出して、そのまま殴られ、尻餅をついた。


「くっ! ……ん?」


「ふん! 邪魔をするからだ!」


 おかしい、痛くない。俺の体ならかなりの痛みがある筈なんだが、押される勢いがあったから殴られたことは確かなんだが。うーん、何でだ? 俺が真剣に考えていると––––


 ––––っ!! 人を殺せてしまえそうな凄まじい殺気を感じた。

 殺気の方を向くと、アリスだった……無表情だった。顔だけでは怒っているのかどうか俺でも全くわからないほどに無の表情だった。


「ねぇ、何で兄さんを傷付けたの?」


「え……ど、どうした? アリス。な、殴ったことか?」


 声にも何もなかった。怒っている感じもなく、ただ確認しているだけのように聞こえる。この殺気でこれはヤバイ気がした。

 イザは、今まで以上に無表情のアリスの様子に混乱していて、アリスの殺気には気付いていないようだ。そもそも殺気はある程度受ける経験がないと気付けるものでもないので、イザが気付かないのも当然と言える。


「そう。何で兄さんを傷付けたの?」


「じ、邪魔だったからだ。アリスを助けようとするところを阻んだ結果だ、アリスもしょうがないと思うだろ?」


「そう。しょうがないね」


 あ、これは不味い。


「おお、わかってくれたかアリス」


「じゃあ、私が今からすることもしょうがないよね」


「へ?」


 アリスがゆっくりイザに近づいて行きながら、力を込め始めた。

 ヤバイ、殺しかねない。こんなことで人殺しとかさせられないぞ。

 とにかくアリスを止めようと声を掛けようとしたら。


「イザ様ー!」


 イザと俺は声のした方を見ると、執事服で俺達と同じ年ぐらいの綺麗な顔をした、頼りになる奴が来た。

 その新たな来訪者でアリスは動きを止めた。

 俺は安堵し、イザもアリスの少しおかしい様子からか、ホッとしているように見えた。


「ヤ、ヤイか。どうした?」


「どうした? じゃないですよ。そろそろ先生方が来られる時間ですよ」


「ん? いつもより早くないか?」


「なに言ってるのですか、朝に言ったではないですか」


「そうだったか?」


 二人がそんな会話を続けていた。

 イザと話している人物はヤイと言い、イザの付き人のようなことをしている。

 イザの暴走を止めてくれるし、理解のある人物でもあるため、俺たち兄弟とも仲がいい。


 そして、この様子からイザはアリスが関わらないと普通に会話が成立する。

 この会話を見る限りは、普通の人物なんだがなぁ……恋に囚われると誰しもこうなるのか?


 ……ってこんなことを考えいる場合ではなかった。

 俺は今のうちにアリスをなだめることにした。


「アリス。落ち着け」


 俺はアリスの正面に立ち、頭を撫でて落ち着かせようとしたら。


「兄さん、司祭様に診てもらいに行こう。すぐ行こう」


 まだ、感情が見えない顔と声だった。

 失敗した……アリスが俺が傷付く事を良しとするわけがなかった。

 とりあえず、正気に戻すために普段しないことを考えた結果……イザから見えない人混みに移動して、抱き締めてみた。


「っ!?」


 あ、顔に感情が戻った。


「兄さん! いきなり何するの!」


 戻ったアリスが俺を押し出し、抱き締めから逃げた。


「いや、だって正気じゃなかったし」


「だからって、それより怪我は!? 司祭様に診てもらわないと」


「大丈夫だって、何か知らないけど痛みも無かったし、怪我も全くしてないから」


「本当? ……見る限り大丈夫そうかな」


「だろ? だから心配するな」


 ようやくアリスが落ち着いたので、ヤイ達のほうを見ると。


「いや、だがなヤイ。このままアリスを放って置くわけにはいかないだろ?」


「だからって、学ぶことを疎かにしてはいけませんよ。それに、その心配事は私のほうで何とかしますので」


 まだ、話が続いていた。

 ヤイがイザを何とかこの場から離そうとしてくれている。


「うーむ、だがライクが大人しく聞くとも限らんだろ」


「わかりました。では、今から納得してもらいます」


 そう言って俺達に近づいてきた。

 なんだ? どうするつもりだヤイの奴。


「ライク君、申し訳ないですがこれから私も一緒に行動しても良いですか?」


「別にかまわないが、後は家に帰るだけだぞ?」


「それならそれで問題ありません。家までお供させていただきます」


 ヤイはイザに目線を向ける。

 なんだ?


「ふむ、それなら問題はないか」


 冷静さを取り戻したイザが頷いていた。


「イザ様、納得できましたら早速」


「わかった、後は任せる。ライク、バカな真似はするなよ」


 それだけ言うと、イザは去っていった。

 なんなんだ? まあ、嵐が去って何よりだが。


「兄さんを殴っておいて、謝ってない……」


 アリスは感情が入るくらいにはまだ怒っていた。


「ライク君、イザ様がすみませんでした。怪我は大丈夫ですか?」


 ヤイにも心配させてしまった。殴られる選択肢は無くした方が良さそうだ。


「俺は気にしてないし、無事だから二人共気にするな。しかし、ようやく嵐が去ったな」


「そうですね」


 いや、お前が嵐って認めたら駄目だろ。


「でも、タイミングが良かったな。もう少し遅かったらイザは良くて大怪我、下手したら死んでたな」


「殺しはしないよ兄さん」


 それは、間違いなく楽には逝かせないってことだろうな。


「ははは……あのタイミングは仕方なくですよ。あれ以上待てませんでしたし」


「待つって、何をですか?」


「キーマですよ。ライク君達がイザ様に出会ってしまっていたので、根回しみたいなものです」


 キーマと言うのはイザのもう一人の付き人で、ヤイとキーマの二人がイザの付き人だ。

 キーマは気安くはあるが、イザのことで俺達のとこを気の毒に思う良い奴だ。


「根回しですか?」


「イザ様に、先生方が来ると言っていた件ですよ。あれは、その場で言っただけなんですよ。ですので、キーマに先生方に早く来るように伝えてもらっているんです」


「さすがに、バレないか?」


「みなさんイザ様はそういう方、という認識なので先生方は何も言いませんし。イザ様は……どうとでもなります」


 それで良いのか、付き人。


「それより気になったんだが、ヤイが家まで付いてくるのはなんの意味があるんだ?」


「あれはイザ様の見方だと監視です。「私が見てますから大丈夫ですよ」というサインみたいなものです。ただ、そんなにしっかり見るつもりはありませんからご安心を」


「それだと、ヤイさん達に迷惑が掛からないですか?」


「大丈夫でしょう。監視していることに変わりありませんから、アリスさんは気にしなくていいですよ。それに、今日はお昼の後にアリスさん達の家を一応見ていることになりますし、こっちが申し訳ないくらいですよ」


「……」


 アリスが申し訳なさそうにしているので、色々確認してみる。


「今日はずっと俺達の家を見ているつもりか?」


「ずっとではないですよ。監視なんて必要ないのですから、家の周辺にいるだけです」


「それだと動きが制限されるし、疲れないか?」


「こういうことは慣れですよ」


 そうは言ってもなぁ。


「私のことはいいですから、行きましょう」


 そう言ってヤイは俺達を先導する。


「……わかりました。でも、その前に」


 アリスが俺の顔に突然ペタペタと触れてきた。


「何だ? 突然」


「だって、兄さんが痛みを我慢してるかもしれないと思って」


「え!? 我慢してたんですか!? ライク君」


「いやいや、大丈夫だって。アリスの気にしすぎだから、とりあえず帰ろう」


「……わかった」


「ライク君がそういうなら」


 2人とも納得してはいないが、帰ることには賛成のようだ。まあ、昔から痛みを隠すことがあったからアリスには疑われるのも仕方ない。


 その後、俺は3人で家に向かいながらヤイのことを考え、監視よりは楽であろうことを思いついた。


「なあ、ヤイ。家の周辺を見ているより一緒に行動した方が色々楽じゃないか?」


「それはそうですが、どこかに出掛ける予定が?」


「別にないが、出掛ける場所はどこでもいいだろ」


「それはいいかも、私のせいでずっと外でいることは申し訳なかったし、出掛けるくらいなら問題なさそう」


「私のために申し訳ない気もしますが、特別断る理由もありませんし、お供させていただきます」


 そんな会話をして、ようやく平民に似付かわしくない無駄に大きい家に帰ってきたところで、ヤイには昼飯後にまた来てもらうように言って別れた。

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