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20/25

束縛と契約

感想がユーザーしか書き込めないようになってました……直した筈です

とりあえず知っておいてほしいことです。

小中大は強化の高さです。

理解が出来るように書けてるか分からない……

概念がややこしいので、ネタバレしない程度にまとめたものを投稿するかもです


ライク

肉体強化 小 魔法

瞬 中 概念

? 大 概念


 昨日と変わらない朝が来た。

 この日も起きてこないミースを起こし、朝を食べ、孤児院に向かう。


「(お前はいつも起きてこないな)」


「(毛布やベットが気持ち良いのがいけないと思います)」


「(はは、確かに普通の人よりはいい物かもね)」


 そんなことを話しながらスラムを通っていた。この日は特に絡まれることはなく、むしろスラムの住民に避けられながら孤児院に到着した。


「こんにちはー」


 入り口で挨拶をすると、子供たちが集まって来た。「だれ?」「マザーが言ってた人かな?」「マザーに言わないと」「お礼も言わないと」「でも、土下座はダメって」子供たちが俺達に対する扱いを話し合っていると。


「お兄ちゃん達、いらっしゃいです」


 イアが入り口まで迎えに来てくれた。


「お邪魔するねー」


「みんなは食堂か?」


「はいです。みんなー、道を開けるですー」


 イアがそう言うと、子供たちは道を開けてくれる。そして、食堂に向かう俺達に付いてきて、思い思いのお礼を言ってくる。


「うん、気にしなくていいからねー」


「お礼を言ってくれたら十分だからな」


「みんなー、お礼はいいですけど、邪魔にならないようにしてですー」


「(基本的にみんな良い子みたいですね)」


 そうだな、邪魔にならないように付いてきてるし、騒がしい子なんかはいないみたいだな。


「マザー、お兄ちゃん達が来たです」


 食堂では、ミラニールさんが鉄のような物で刺したお肉か何かを火の魔法? で焼いているところだった。


「ありがとう、イア。ライク君、アリスちゃん、出迎えに行けなくてごめんね」


「いえ、それはいいんですけど」


「ミラニールさん、魔法が使えたんですね」


「ええ、特殊な魔法もあったから昔は旅なんかをしてたのよ。戦う力がないと気軽にできることじゃないし」


 そんなことを俺達に教えていいのかと思ったが、そんなに珍しい魔法ではないらしく、国が干渉してくることはないから大丈夫だそうだ。


「聞きたい? 特殊な魔法のこと」


 ミラニールさんが俺の目を見て聞いてくる。


「いいですよ、そういうものは知らない人間が少なければ少ないほどいいでしょう?」


「そうね、特殊な力を利用しようと考える人は多いでしょうから」


 俺の答えに満足したのか、安心したような感じが伝わってきて、ミラニールさんは肉に視線を戻した。


「しかし、魔法でお肉って焼けるんですね」


「それはそうよ、火には違いないわ。ただ、調整が少し難しいのよ」


 孤児院には調理器具などはないからこの方法を取っているらしい。


「しかも、この人数は大変そうですね。手伝いたいですけど、私はその調整ができそうにないですし」


「アリスちゃんも火の魔法が使えるのね。確かに、これは少し練習しないと危ないわ」


「前の日に焼いておくのはダメだったんですか?」


「お肉って一度焼くと生より持たないのよ」


 へぇー、でも奥さんは捨てると言っていたし、貰った食料を全部食べてしまえば? と思ったが、量が多いらしい。なので、あまり持たない物から消費して残った物はお店に持っていくそうだ。


「孤児院に置いておくのは危ないでしょう?」


「そうですね」


 食料を狙う連中がやってくるかもしれないからな。

 ミラニールさんは喋りながら肉の用意を済ませ、子供たちに食べるように促すと、俺は気になっていることを聞いた。


「あの、ラミナさんはどうかしたんですか? なんか元気ないように見えますけど」


 シスターの格好ではない私服のラミナさんが、子供たちに囲まれながら力ない様子で食事をしていた。


「あー、実はライク君が帰った後に、この街の総隊長のラーナさんって言う人が来てね。気になることを言ってきたのよ」


 なんでも、少し前からスラムの中だけで子供がいなくなっているらしく、誰かが(さら)っている可能性があると言われたらしい。そして、最近ある兵士を頻繁に見かけると言う目撃者がいることから、兵士の格好をした人間に注意するように言ってきたそうだ。

 少し安心した、総隊長さんはスラムにもちゃんと目を向ける人なんだな、面倒そうな人だけど。


「落ち込んでいるのはそれだけで、ですか?」


「いえ、続きがあってね。ここにきた兵士の顔の特徴を教えてくれれば、ある兵士かどうか分かるかもってなったんだけど……」


「ラミナお姉ちゃん、顔が思い出せないみたいなのです」


「えっと、それはまさか……」


「サイク達と同じと言うわけよ。厳重に掛けられたのか知らないけれど、ラミナは全く思い出せないそうよ。つまり、ここに来た兵士は犯人か共犯の可能性が高まったわけね」


「孤児院で攫われた子はいないんですか?」


「いないはずよ。私達も催眠か何かを掛けられていなければ……ね」


「(こういう催眠は自分では気付きにくいですからね)」


 つまり、攫われてるかもしれないのか。それと、サイク達の時もそうだが、会ったこと事態は隠さないんだな。


「冒険者として調査をしましょうか?」


「いえ、大丈夫よ。攫われたと決まったわけじゃないし、総隊長さんが色々してくれてるみたいだから、私達は子供たちに被害が出ないように守りの姿勢をとるわ」


「そうですか」


 守る人が多い以上それが1番かな。


「でも、不幸中の幸いですかね。護衛の方が大丈夫そうなので、朝食を食べたらギルドに寄りましょうか」


 それからは、アリス共々少し子供たちの相手をしてからミラニールさん達とギルドに向かう。


「ラミナ姉ちゃん大丈夫かなー」


「大丈夫だよ。何人かラミナ姉さんに付いて慰めてるし」


「きっとすぐに元気になるの」


「でも、あの様子で夜は大丈夫なんでしょうか?」


「(あの状態では難しそうです……人を信じるのは悪いことばかりではないと言いたいですけど……)」


 ミースやアリスは、あの状態で孤児院の子供たちを見れるのかが心配みたいだ。


「それだけど、私は犯人が捕まるまで夜は孤児院に泊まることにするわ。ラミナがあの様子じゃ心配だから」


「その方が良いですね」


 そう話してるとギルドが見えた。


「(……あの人は怖いです)」


「(敏感になってるね、大丈夫だよ)」


 バレることはないんだから我慢してくれ。

 そうしてギルドに入ったところで、ミナネさんがラールとイアに反応した。


「いらっしゃい!」


「(っ! 見えてない筈なのに脅威を感じます……)」


「(落ち着いて、ちゃんと守ってあげるから)」


「はいはい、抑えてくださいね。時間がないんですから」


「……仕方ないわね」


 ミナネさんの可愛い子好きを抑えたところで、孤児院の人を紹介し、契約云々の話をする。


「まず、ルールと契約なんだけど……」


 まず主人となる者、束縛を受ける者でルールを決める。主人は迂闊に束縛した者を殺さないように、束縛を受ける者は犯罪行為をしないようにそれぞれ決めるそうだ。このルールは契約という形で残し、主人が破ったらギルドに連絡が入り、違反かどうかの確認のためギルドに召集を命じられ、違反をしていたら罰があるらしい。

 ちなみに、束縛は使える人は少ないが変化魔法でも行えるし、ある道具でも可能だ。これは犯罪者を縛るには便利なものなんだが、同時に奴隷といった使い方も出来てしまうので、扱いは慎重(しんちょう)になっている。ここでは奴隷は禁止だが、別の国では奴隷制度が残っている所もあるらしい。


「召集に応じなかったらどうなるんですか?」


「犯罪者扱いになってギルド内で指名手配ね。ギルドから冒険者に依頼が出るわ」


 ギルドは世界中にあり、それぞれに連絡を取れるとも言われてるので、逃げ場はないみたいだ。

 束縛された者の違反はその場で痛みなどの罰があり、ひどい時は死ぬ。この時の死は契約の範疇なので主人に罰はないということだ。ちなみに、束縛を受けた者が主人から逃げようと離れすぎると同様に罰をうける。


「で、主人とルールはどうするの?」


 色々話し合って、主人はミラニールさんとイアに決まった。ミラニールさん曰く、イアは子供4人の中でその場の判断力が高いらしい。

 そして、束縛するオッサンのルールは、襲ってくる人以外は傷付けない、孤児院の関係者を出来るだけ助ける、ことになった。

 主人のルールは、人の尊厳を守る、オッサンに命を投げ出す命令を禁止、食事を過度に与えないなどの命の危機にあたる行為を禁止、要するに殺さない、奴隷扱いをしないという約束だ。


「それで、決定ね? それじゃあ、下にいる犯罪者に束縛と契約をさせて来るから、契約のためにこの紙を書いておいて」


 そう言って紙を置いて、ミナネさんは地下に降りて行った。


「良かったんですか?」


「何かダメだったかしら?」


 紙に必要なことを書いているミラニールさんがこちらを見る。


「いえ、出来るだけって余り意味がない気がしますけど?」


「そうなんだけど、守れって決定したら命令と契約が相反することになりそうじゃない? 守るために壁になられて死なれても困るし。だから、その場その場で守ってほしい時は命令することを前提にして、言う暇がない時のために一応ね」


 なるほど、融通がきかない可能性は十分あるか。それだと、命令はちゃんとしないといけないな。


「私なんかで大丈夫です? 不安です」


 イアがサイク達に少し不安を洩らしていた。


「大丈夫だって、マザーがそう言ってるんだから」


「そうだよ。イアは出来る子だよ」


「考え過ぎちゃダメなの、いつも通りのイアでやっていればいいの」


「うん。頑張るです」


「それに、サイクがやるより全然いいの」


「そうだね。サイクは言ったらいけないこと言いそうだしね」


「ふふ、そうかもです」


「おい!? そんなことねえから!」


 みんな仲良さげに笑い合っている。

 サイク達のお陰でリラックスできたみたいだな。


「お待たせー」


 サイク達がふざけ合っていると、ミナネさんがオッサンを連れて戻ってきた。

 オッサンは一度俺達を見て、すぐに視線を逸らす。


「じゃあ、束縛の主人と契約は完了ね。あと、この人は実害を与えてないから束縛の期間は5年ほどで、その間に違反も何もなければ解放ね」


 そう言って、ミラニールさんから紙を受け取ったミナネさんは、仕事の顔からダメな顔に変化した。


「じゃあ! ラールちゃんとイアちゃんにちょっと話が––––」


「はいはい、時間がないのでそろそろ失礼しますねー」


 俺はそう言い、イアとラール他みんなを押してギルドを出て行く。


「ちょ、ちょっとくらい良いじゃないのー!」


「ダメです。オッサンも行くぞー」


 付いてこれずに戸惑っていたオッサンを促す。


「……ああ」


「そんなぁー」


 ミナネさんの心の中では大絶叫であろう声を聞きながら店へ向かう。

 ちょっと時間を取られたが、朝は早めに出たので重大な遅刻はないだろう。


「何か話がありそうだったの、いいの?」


「いいんだ、気にするな」


 ラールにもミナネさんに気を付けるように言う。少し疑問だったみたいだが、イアと2人で気を付けるように言い含めて納得してくれた。


「さて、ザッと自己紹介が必要ね」


 まずオッサンの名前はハガーと確認し、みんなの名前、主人やオッサンのすることなどを教える。


「それは大体聞いてるから問題ない。だが、ギルドで少し治療してもらったが、お前らにやられた傷は完治してないから今は難しいぞ」


「それなら治せば問題ないな」


 俺はミースを通してオッサンを治してもらう。


「……回復魔法が使えるのか。痛め付けたり、治したりよくわからん奴だな」


「そう感じるのは、あんたがそういう態度をとってるからだろ。襲ってきたからやった、契約を受け入れて殊勝な態度だから治した、それだけだ。あんたが大人しい方が不思議だと思うけどな」


「……飯は食えるらしいからな」


 オッサンは目を逸らしながら言う。


「保証はしてないと思うが、そういうことにしとくか」


「おそらく大丈夫だと思うけどね。それよりも、ライク達は兄妹そろって魔法が使えるのね」


「そうですけど、そんなに珍しいことではないですよね」


「そうかもしれないけど、魔法を使えない人よりも魔法を使える人の方が少ないのも確かよ」


「私もお二人やマザーみたいに魔法が使えたら嬉しいです」


「洗礼はしてないんですか?」


「大体お金を取られるのよね。それに、この子達が孤児院にある教会が良いって言ってるんだけど、孤児院のは像がないからなのか出来ないし、他にあの教会がある場所を知らないのよ」


「それならお私達が知ってますよ。お金も取られませんし」


「「「「本当!?(です!?)」」」」


 イア達がすごい勢いで反応した。

 かなり知りたがっていたが、仕事に慣れたら教える約束をして抑えた。


「スラムに居る奴らとは思えないくらい元気なガキ達だな」


「ハガーさんにはこの子達を見てもらうこともあるから、慣れておいてほしいわ」


「……ハガーでいい。俺は奴隷みたいなもんだ」


「あらそう? なら親しみを込めて呼ばせてもらうわ。よろしく、ハガー」


「……ああ」


 オッサンとミラニールさんが何か話していたが、オッサンから僅かな活力を感じたので問題はなさそうだった。


「ようやく来たかい」


 その後、お店に着くと奥さんに開口一番そう言われたので、オッサンのことを説明する。


「別に遅刻だなんて言ってないよ。まあわかった、店で護衛に集中しても暇だろうから働いてもらうよ」


「は? いや、俺は何も出来ないぞ」


 奥さんに戸惑いながらオッサンはハッキリ言う。


「別に難しいことじゃあないよ。ここは宿屋でもあるから泊まり客の相手をするだけさ。することは紙に書いてあるから簡単だ、お金もちゃんと払うよ」


「い、いや俺は字が読めん」


「大丈夫さ絵も描いてる、口で説明もするから問題ないね」


 流石にスラムの人を雇うこともあると準備が万端だな。


「おっさん、大丈夫だぜ。俺たちにできるんだからな」


「そうだね。絵と一緒なら字も何となくわかるよ」


「諦めて働くの」


「少しくらいなら文字を教えられるです」


「なら、イアはそいつに教えてやりな。他は準備をするよ」


「「「はーい」」」


「わかったです」


「……わかった」


 イアに教えられるのはどうなのかと思ったが、オッサンは案外素直に受け入れて、イアの説明を聞いている。


「ハガーは随分大人しいわね。もう少し暴れるというか、言うこと全部は聞いてくれないかと思ってたわ」


 呼び捨て? まあ、オッサンを見る限りヤケクソのように感じるかな。


「私も仕事に入るわ。ライク君、アリスちゃん、後はあの子達と頑張って恩を返すわ。ありがとね」


「いえ、困ったことがあったらミナネさんに言えば俺達に伝わりますから」


「お昼は基本ここに食べに来ますね」


「ええ、待ってるわ」


 そう言いミラニールさん達と別れる。


「(ようやく1つの仕事が終わった感じですね)」


「(そうだね。兄さん、これからどうするの)」


「(そうだな、概念でちょっと試したいことがあるから家でそれをするかな)」


「(じゃあ、付き合うよ)」


「(わかった。アリスの概念でも試してみたいこともあるしな)」


「(危険なことはしないでくださいよ?)」


「(大丈夫だ)」


 概念の強力さは知っているので、今回は俺達の家で気を付けながら試すことにした。


「(で、何を試してみるの?)」


 家の庭に来た途端にアリスが聞いてくる。

 ちなみに、心で話してるのは概念の話をする時はこうすると決めたからだ。


「(いや、俺が考えた瞬ってアリスを超える早さの概念だろ? それ以上早くできないかと思ってな)」


 それで俺は、アリスが視認できない早さの概念だと、更に早くなるんじゃないかと考えた。


「(自分であの攻撃力に引いていたのに、更に攻撃力を上げるんですか……)」


 気になったんだ、仕方ない。


「(兄さんが視認出来ない早さ、でやった方が効果高いんじゃない?)」


「(いや、それだと生命力の消費が凄いことになるって使う前にわかったからやめた。俺の生命力が最大で100だとしたら、数分で50は喰うみたいだったからな)」


「(消費量がそうですと、効果の大きさも考えると恐ろしいですね……)」


「(でもそれ、兄さん自身は認識できるの? 早すぎて扱いきれないんじゃ?)」


「(いや、普通の状態だと無理だから俺の視認速度も概念で早めるぞ。同時に2つの概念を使うから消費が激しいみたいだな)」


「(へぇー、とりあえずやってみてよ)」


「(わかった)」


 俺はアリスの背後に回った。


「え……」


「(え……)」


「見えたか?」


「へ!? い、いつの間に……」


「(気付いたらアリスさんの背後にいました……)」


 どうやら全く見えなかったらしい、消耗はするけど使えそうだな。

 ただこれ、頭の回転を早めてる感じで、相手の動きがゆっくりに見えるから少しやりにくいな。あと、瞬とは別ものだから名前を決めないとな……(じん)でいいか。


 あと、これを使って分かったが、特殊な効果で軽減って言葉は正しくなかったな。まあ、大した問題でもないからいいか。


「(アリス、どう見えたんだ? 一応、目が開いてる時に動いたんだが)」


「(そうなの? 全くわからなかった。私の感覚的には瞬間移動されてるのと変わらないよ)」


 影も形も視認出来なかったのか。それもそうか、アリスの動きは確かにゆっくりだったが、俺の動きは瞬を使った時と変わらない速さだったしな。


「(それで、これは使う機会あるんですか?)」


 やってみたかっただけだし、今のところないだろうな。


「(まあ、気付かれずに移動したい時は使えそうだね)」


 逃げ隠れする予定はないけどな……よくよく考えると本当に使う機会なさそうだな……まあ、次だ。


「(次は私の概念で何か試すんだよね)」


「(何をするつもり何です?)」


「(まず、アリスが近いって概念をどこまで知っているのか確認してからだな)」


 確認した結果、やりたいことに特に問題はなさそうだったが、3人で改めて確認すると近いって言葉の汎用性がかなり高いことにも気付いた。

 強化、弱体を全て無効化できるようだ。通常や健康が100だとすると、強化で120にしたものを100に、毒などの不健康50を100にと言った具合に、全てを正常に近づけることができそうだ。元の身体能力が高いアリスにはかなり合った概念だったみたいだ。

 ただ、アリスの概念は想像では使えず、基盤となる人物や物を知らないと発動できないみたいだ。なので、これだとアリスを超える身体能力を持った人に出会わない限り、自身を強化は出来ない。俺の場合は想像で使える上に、アリスという基盤があるから強力な効果を得た。


「(概念の種類別に長所と短所があるんですね)」


 アリスの場合は長所が凄まじいから、大した短所ではないと思うけどな。


「(それで何を試すの? 兄さん)」


「(いや、収納袋の容量を増やせるんじゃないかと思ってな)」


 前にアリスは物には永続的に効果があると言っていたから、冒険者としてよく使うであろう収納袋の容量を増やしておくべきだと思った。


「(うん? でも、いま持ってる物より容量がある物を私は知らないけど?」


「(それなんだが、母さん達に色々ついて行ってた頃に、覚えてないだけで見たことはあるんじゃないかと思ってな。試そうとしない限り無理かどうかはわからないだろ?)」


「(まあ、確かに記憶に無いし試そうとは思わなかったね)」


 で、試して貰うと様々の容量に出来るみたいだった。

 やっぱり物は1度見るだけでいいんだな。発動の条件が視認だし、物は永続と言ってたから、もしかしてと思ったが便利すぎるな。


「(兄さん……なんか最大でこの街の大きさと同じくらいの容量に出来るみたい)」


 え……


「(す、凄いですね。何でも入りそうです)」


 そんな容量の収納袋をどこで見たんだ……

 まあ、折角の幸運なのでその容量にすることにした。アリスだけだと大変そうだったので俺の生命力も使い2人分を作った。


「さて、やりたいことは大体終わったから、そろそろ冒険者の仕事をしていくか。冒険者のランクも少しは上げた方が良さそうだし」


「ならミナネさんに依頼を聞きに行こっか」


「(……そうですね)」


 ミースの元気のない声はスルーしてギルドに向かい、ランクを上げるためにしばらくランクEとDの依頼をこなし始めた。




「まだ帰って来てないんですか?」


 それは、数日間を適当に冒険者の仕事をこなし、孤児院とお店の様子を見ながら過ごして、ランクもDに上がった頃だった。


「そうなのよね……十分な戦力だった筈なんだけど」


 ラン達も向かった群れの討伐部隊がまだ帰って来ていない。群れを追いかけているにしても、連絡なりがあってもいい時間が経っていた。


「バッチを持ってる人もいたから、危険があればギルドや兵隊の隊長さんに伝わる筈なのよね。でも、今日の夜までに帰らなかったら……」


 ミナネさんが言いかけた途中で、二階から誰かが慌てた様子で下りて来た。


「どうしたの?」


 その人からミナネさんが耳打ちで話を聞いている。


「分かったわ。急いで高ランクの人に緊急の依頼を出しておいて」


 下りて来た人は慌てて作業を始めた。


「ミナネさん? もしかして……」


「隠してもバレバレよね……何か命の危険があったみたいだわ、それも複数人がね。私も色々しないといけないから悪いけど失礼するわね」


 そう言って奥に駆けていき、ミナネさんは真剣な表情で作業を始めた。

 俺はすぐに神眼でラン達を確認してみると、ある森が見えた。が、調整が出来ず森しか見えなかった。


「……兄さん、どうするの?」


「まあ、様子は見に行くか」


「(助けに行く、が正しいのでは?)」


 いや、アリスが優先だから相手次第では逃げるぞ。まあ、本当は行かないのが1番だが、ラン達を放っておくことも出来そうにないからな。

 とりあえず、アリス達と神眼で確認した森に急いだ。

前書きの?は(じん)のことです


良い人ばかりでしたが、次くらいに外道が登場する筈です

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