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オッサンを思い出す

キャラが増えないようにするつもりだったんですが、オッサンが増えざる負えない状況に……

キャラが増えすぎても理解が大変だと思うので、増えすぎないように頑張ります。

「うーん、何か忘れてるような?」


 俺はギルドに向かいながら何か忘れてるような気がしていた。


「忘れ物です?」


「何も置いてきてない筈だよ?」


「(何か覚えておくことなんてありましたか?)」


 うーん、ギルドに行くって言ってからなんか引っかかる……物じゃなくて…………あ、そうだ人だ。スラムでぶっ飛ばした奴を運んでないことを思い出し伝える。

 孤児院からムハサさんの店に向かって、来た道を通らなかったせいだな。


「ああ、いたねそんな人」


「(すっかり忘れてました)」


「そんな人がいたですか。運んであげるんです?」


「いや、いるかどうかも分からないしな」


「(いや、ライクさん。神眼で見れますよ)」


 あ、そうだった。使い慣れない能力はどうにも忘れがちだ。

 ミースが見てくれて、まだ倒れた場合に居るみたいなので少し寄り道して拾うことにした。


「確かこの辺だな」


 俺は辺りを見渡す。神眼は調整しないと正確に分かるわけじゃないのがなぁ。ミースも中々上手くできないようだし。


「いてぇ、あいつら好き勝手しやがって」


 お、いたいた。


「思ったより元気そうだな」


 スラムのオッサンは俺を睨んできたが、前ほど力はないような目になっていた。


「おめぇ……帰って来やがったのか。このボコボコの顔とアザだらけの体を見てそんな感想が出るとはな。おめぇの目は節穴か?」


 その程度が酷い有様とでも言いたいのか? 浅はか奴だな……あんなことをして五体満足で生きてたら何も問題ないだろ。殺されることもなく、四肢も取られ、生かされる方が遥かに悲惨だ。


「っ! あ、ぁぁぁっ」


「兄さん、なんか苦しんでるよ」


 あ、いけね。また軽く殺気が。


「(……)」


「(ミース?)」


「(あ、大丈夫です。何でもないです)」


 ……? まあ、いいか。


「お兄ちゃん、大丈夫です? 怖いような、ツライような感じがしたですけど」


「悪い悪い、怖い思いさせたな。もう大丈夫だ」


 俺はイアの頭を撫でながら言う。

 ふう、もうちょっと冷静にならないとな。


「っはぁ、はぁ、はぁ」


 殺気で息ができなくなっていたオッサンは必死に肩で息をしていた。

 こんな人間を気にしてもキリがないし、サッサと用を済ませよう。


「さて、オッサンを運ぶか」


「どうやって運ぶ?」


「引きずればいいだろ」


「それでいっか」


「え、ちょっ!」


 俺とアリスは、オッサンの肩の服を持ち、オッサンの足を地面に擦りながら連れて行く。俺は当然、肉体強化を使いながらだ。


「痛い痛い! お前らに蹴られた足があぁぁ!」


「1回は気合いで立ってただろ。その時の気合いでも出して耐えろ」


「今は、あの時より遥かに痛いんだよぉ!」


 戦いの最中は痛みを忘れる的なあれか。それは仕方ないな。


「耐えろ」


「罰に丁度いい」


「ぐあぁぁぁ!」


「い、痛そうです……」


「(まあ、仕方ないです。傷つけようとした分が自分に返ってると思えば)」


 そうしてオッサンを運んでいると、ギルドが見えてきた辺りで、相当痛かったのか途中で気絶していた。まあ、叫ばれていても目立って面倒だったので丁度よかった。俺達は引きずりながらギルドに入る。


 オッサンを運んでいるので少しざわついたが、スラムで人を捕まえることは良くあるのですぐに収まる。そして、ミナネさんの所に並ぼうとしたら……


「何にざわついたのかと思ったら、ライク君達じゃない。どうしたの? この人」


 ミナネさんから来てくれた。

 俺はオッサンとイアのことをザッと説明する。


「なるほどね。よかったわね、無事に会いたい人に会え……っ!?」


 ミナネさんがイアを見て一瞬硬直している。


「あの、ありがとうございますです! あと、ごめんなさいです! お姉さんに迷惑を掛けてしまいましたです」


「そ、そうね〜。でも、ちゃんと返してもらうから気にしなくていいわよ」


 ……さっきから少し態度がおかしい。


「私で何か返せるなら何でもするです!」


「な、何でも……」


 ミナネさんが、にやけ顔を抑えようとしてさらに変な顔になっている。


「ミナネさん、イアに変なことしないでくださいよ?」


「へ!?」


「そうですよ。無垢な少女を大人が汚しちゃダメですよ」


「そ、そんな変なことはしないわよ!」


「(ちょっと変なことはするでしょうか?)」


 さてな。


「……? 私が汚れるようなことがお返しになるです?」


「うっ……」


 無垢な瞳でミナネさんがダメージを受けた。


「だ、大丈夫よ。汚すようなことはしないから。むしろ綺麗になるわ」


「綺麗になるのがお返しです?」


「そうよ。準備ができた時にお願いするわ」


「は、はいです」


 ミナネさんの目が力強くてイアは少しどもった。気合い入りすぎだよ。


「で、次の話はこいつね。一応、審議の首飾りを借りてくるわね」


 ミナネさんが二階に向かう。審議の首飾りは前に言っていた嘘を見抜く道具だ。普通はギルドマスターが使うのだが、信頼された職員は借り出すことが出来るそうだ。外へ持ち出すのはダメみたいだが。


「お待たせ。ちゃちゃっとやるわね」


 ミナネさんが首飾りを下げて戻って来た。

 審議の首飾りを使う方法は簡単で、身に付けてから確認する相手を見て質問するだけ。相手が答えなくても質問の仕方次第でわかる便利な物だ。


「あなたは人を襲ったかしら? ……赤ね」


 赤が正しくて、青が正しくない、で宝石のような物が光るようになっている。ちなみに、どちらでもないと黄色に光る。


「(これは、秘密がバレませんか?)」


「(いや、隠し事を暴くものじゃないから大丈夫だ。首飾りだと妖精、概念魔法っていう言葉が出ない限り暴きようがないからな」


「(それもそうですね。1人ずつしか確認できないみたいですし)」


 バレるとしても、妖精や概念魔法をあらかじめ知っている人間くらいだろ。そういう人間が首飾りを持っていて、俺達に使用することはそうそう無い。


「人を襲った確認は取れたから、詳しいことはこっちで確認するわ」


「わかりました」


「それと、2人はこれをどうにかしたいかしら?」


 ミナネさんはオッサンを指差しながら言う。どういうことだ?

 聞くところによると、捕まえた人物がある程度罰を決められるらしい。束縛の魔法や道具などで自由を奪って、荷物持ちなどで捕まえた奴を使う人も居たらしい。ただ、そこまでのことは死刑レベルのことをしない限り無いそうだ。


「どうするか、アリスは何かしたいことあるか?」


「うーん、特に無いかな。居ても邪魔っぽいし、この人に処遇に興味はないし」


「(正直、邪魔にしかならない気がします)」


 そうなんだよなー。まあ、一応考えておくことにして、処遇の度合いが決まったら教えてもらうことにした。


「今日の夜には決まると思うから、夜か明日に来てくれたらいいわ。報酬もその時にね」


「わかりました」


 ミナネさんはオッサンを他の職員に運ぶように言い、引きずられながら連れていかれた。

 俺達は、ミナネさんに礼をしてギルドを後にしようとすると。


「イアちゃん、また困ったことがあったら来ていいからね。むしろ来てね」


「は、はいです」


 食い気味に来るように促し、ちょっと心配になるにやけ顔で、イアに手を振るミナネさんを見ながらギルドを後にした。


「あれは何も変わってないんだね、ミナネさん」


「イア、ミナネさんで困ったことがあったら俺かアリスに相談しろよ?」


「へ? わ、わかったです」


 少しキョトンとしたが、あの様子から何となく察したのかイアは素直に頷いた。

 あの人、可愛い人や物を見るとちょっとおかしくなるんだよな。アリスの小さい頃もあんな感じだったし。今は美人の顔立ちになってきたからか、イアほど騒がれなくなったみたいだけど。


「(……何でしょう。凄く寒気がします)」


 バレたらどうなるか想像もつかないな……


 その後は寄り道することなく、真っ直ぐムハサさんのお店に戻る。


「ただいま帰りました」


「「「おかえりー」」」


 なぜか3人組が声で出迎えてくれる。


「ようやく帰ってきたかい。それと、3人の声は特に問題ないね」


 お客が来た際の、声掛けの練習に使われたらしい。


「3人ともおかえりなさい。イアはちゃんとお礼を言えたのかしら?」


「言えたですよ」


「そう、よかったわね」


 ミラニールさんも、何かの紙を待ちながら出迎えくれる。


「ムハサさんとの話は終わったんですか?」


 厨房の方で、また調理中のようだが。


「ええ、確認することは終わったかしらね」


 持っている紙は覚えることや約束ごとを書いているそうで、必死で覚えようとしていたところらしい。

 その中の大事なこととしては、働くみんなはここで寝泊まりすることにして、食事を持って行く時に孤児院の様子を見ることに決めたそうだ。突然過ぎるのはどうかと思って、今日は孤児院に帰るそうだが。

 しかし、孤児院にミラニールさんがいないことを嫌がる子もいるのではと思ったが、サイク達から聞くと、自分達の迷惑でマザーが倒れたと思っている子が多いらしく、素直に納得するだろうとのことらしい。


「しかし、1日1回としても何度も往復するのは危ないのではないですか?」


 ヤイが心配そうに聞く。


「俺たちは襲われたことないけど、マザーは襲われるか?」


「かもしれないよね」


「危ないの」


「服装はスラムの物にするし、大丈夫だとは思うのだけどね」


 ミラニールさんも絶対大丈夫とは思っていないようだった。


「……兄さん、ギルドに連れてった人使えるんじゃない?」


 確かに、大人の男がいるだけでも護衛として使えるかもしれないな。

 俺はみんなに犯罪者のオッサンの話をする。


「ああ、あの人ですか。スッカリ忘れていました。ギルドが縛ってくれるなら安全ですね」


「やろうとしたこと全てライク君達が解決してくれるわね。近くにいたら恩が積み上がるばかりだわ」


「今は感謝するしかできないのです」


「はいはい、そういうのはいいですから。今は、恩を返すためにみんな頑張って仕事覚えないと」


「そうね。頑張らないといけないわ」


「その通りだよ。あんたは遅れてるんだから、早くこっちに来な」


「は、はいです!」


 みんな、それぞれの作業に取り掛かかったが、お客がドンドン増えている。正直、教育を後回しにすればと思うが、「実戦で多くを学びな!」という奥さんの熱血でドンドン大変なことになって来ていた。


「アリス、これは手伝うしかないな……」


「そうだね……ヤイさんの所を手伝ってくるよ」


「(あの体で凄いパワーです)」


 それが少々面倒なんだよなぁ。


 その後は色々あったが何とか客を捌ききり、飲食店の戦争は終わった。「ふぇー死ぬー」「やっていけるのかなー」「しんどいの〜撫で回した人〜目に物見せてやるの〜」「ま、まだ、やれる……です」「舐めていたわ、飲食店恐ろしい所……」みんなグッタリしていた。

 そこに、「なに言ってんだい、こんなものまだ前哨戦だよ」奥さんのそんな言葉が飛んだ瞬間にみんな落ちた。


「結構疲れたね。初めてのみんなにはキツかったんじゃないかな」


「そうですね。ですが、これなら何とかやっていけるでしょう」


 基本的なことは出来ていたからな、あとは自然に慣れていくだろ。


「(仕事をする側に立つと、見える景色って違うものなんですね)」


 まあな。経験がある、ない、で随分見え方は違うな。


 ふと外を見ると、少し暗くなり始めていた。今日は孤児院に帰る話だったので、みんなの復活を待ってから送ることにする。


「疲れたわねー。気持ちのいい疲れ方だけど」


「「「疲れた(な)(よ)(の)」」」


「次はもっと上手にやるです」


「この様子なら明日も大丈夫そうだねぇ、あんた」


「そうだな。少し心配だったが、この調子で明日も頑張ってもらわねえとな」


 そろそろみんな動けそうかな。


「さて、送りますからそろそろ孤児院に帰りましょうか。暗くなりそうですし」


「あら、本当ね。忙しいと時間を忘れるわ」


 俺の言葉からみんなは帰り支度を済ませていく。と言ってもスラムでの服に着替えるだけなので、すぐに支度は整い挨拶して帰ろうとすると。


「じゃあ、これを持って帰りな」


 そう言って、奥さんがミラニールさんに収納袋を投げてきた。


「これは?」


「食材だよ、経験上この後は余り客は来ないだろうしね。保存庫は私ら2人で使う大きさのやつしかないから要らないのさ。収納袋は、明日来る時にでも返してくれればいい」


 保存庫は食材の劣化を防ぐ物で、個人用から店用の様々な大きさがある。値段もかなりたかいので、持たない店も大勢ある。

 ちなみに、収納袋に保存効果は基本的にない。保存したい物を収納袋に入れて、その収納袋を保存庫に入れても保存の効果は全くない。


「断るのも不毛かしらね、有り難く頂くわ」


「捨てる物なんだから礼なんていらないよ」


「まあ、感謝してくれるなら明日もよろしく頼むぜ」


 捨てるもの、ね。そこそこデカイ保存庫あったと思うんだけどな。奥さんも中々に甘いな。

 その事を知ってか知らずか孤児院組がお礼を言い、俺達も礼をしてムハサさん達と別れ、暗くなり始めた道を照らす街灯に沿って帰っていく。

 子供らは街灯の光ってるところを見るのが珍しいみたいで、ちょいちょい眺めていた。

 夜遅くは危険だし、スラムに動く街灯はないんだろうな。そもそも街灯は動力がバカにならないので、昼間に仕事をしている人が夜に家へ帰るまでの時間しか付いてない。夜に働く人、動き回る人は自己責任となっている。


「街灯がなくなると結構暗いね」


 スラムに入り、街灯から外れると流石に結構暗い。夜だと多分真っ暗だなこれ。


「この時間はまだいいけど、夜にスラムをうろつく人はそう居ないでしょうね」


「(夜のスラムには近付かないのが常識なのですね)」


 一般的にはな。

 とは言いつつも、夜ではなかったからなのか特に何も起きず、無事にみんなを送れた。


「お疲れ様です。護衛の人は明日の朝に大丈夫か伝えられると思いますから、護衛として行けそうならギルドへ一緒に行きましょうか」


「わかったわ。ライク君、アリスちゃん、ヤイ、何度も改めて言われるの嫌かもしれないけど、最後にするから許してね」


 ……? ミラニールさんは俺達の方を向いたまま一歩下がり、子供らと一緒に土下座の姿勢をとる。


「本当に、ありがとうございました」


「「「「ありがとうございました(です)」」」」


 それだけ言うとスッと立ち上がる。


「あとは、ちゃんと行動で返すわ」


「「「「返す(ぜ)(よ)(の)(です)」」」」


 そのみんなの決意を聞いて、俺達は孤児院を後にする。


「今日は感謝されてばっかりだね」


「そのようですね」


「あの感謝の連続はヤイを思い出すな。助ける人は大体あんな感じなんだよな」


「あれだけのことをされたら言いたくもなりますよ。私は気持ちがよくわかりましたね」


「(ライクさんがそういう人を選んでるのでは? 助けたい人かを見るのも勘なんですよね?)」


 ……そうなんだろうか。


 そんな会話をしながら、ギルドに寄りオッサンの件を確認しに行く。


「微妙な人だったわ」


 ギルドでミナネさんにオッサンのことを聞くと、開幕に妙なことを言われる。

 なんでも、オッサンは何度か襲うことはしていても、逃げられたりで成功はしていないようで、人を襲う重罪か、未遂の軽罪かで微妙な犯罪者の状態らしい。

 それならと、束縛をしてもらって街中限定での護衛はできないか聞いてみる。


「それなら、有りかしら。色々契約をしないといけないけど」


「じゃあ、それでお願いします。明日の朝食後ぐらいには来ますから」


「わかったわ」


「あ、ライク君」


 ミナネさんとの話が終わると、入り口で誰かが俺を呼んだ。


「また、奇遇」


「何かしらの縁でもあるみたいだな」


 ラン達だった。無事に帰って来たみたい……ん?


「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」


「あ、いや……ゲオル、今日は攻撃を受けたりしたか?」


「うん? いや、戦闘すらしてない筈だが?」


 ゲオルに何か違和感を感じたんだが、ラン達が俺達に近付くと綺麗に消え去った。


「(ライクさん、何か感じませんでしたか?)」


「(ミースもか、でも今は特に感じないぞ?)」


「(そうですね、私もです。ちょっとゲオルさんを調べてもいいですか?)」


「(わかった)」


 俺は、ゲオルにちょっと体を診てもいいか聞いて、俺を通してミースに診てもらう。


「(どうだ?)」


「(特に問題はなさそうです。気の所為だったのでしょうか)」


 ちょっと違和感を感じたくらいだからな、今はそういうことにしておくか。


「ライク君、ゲオルがどうかしたの?」


「いや、ちょっと気になってな」


「これは肉壁兼、荷物持ちだから心配はいらない。むしろ私達を心配すべき」


「その言葉に心配いらない要素がどこにあるんだ?」


「まあまあ、全員元気そうで何よりだ。調査っていうのは終わったのか?」


「それがねー」


 ミナネさんも加えて話を聞くと、さらに大きな群れが移動したような跡と、一際大きな足跡が合って、大きさと足跡からヴォルフじゃないか、とのことだった。

 ヴォルフはウルフの親とも言える種で、人の何倍もの大きさを誇り、ランクCの冒険者が何人かで倒すレベルらしい。


「よく無事でしたね」


「運が良かった。移動先が私達の来た方向だったら終わってた」


「街とは反対方向だった、ということでしょうか?」


「そうだな。コワの街からは離れる方向だったな」


「街から離れるのは助かるんだけど、不気味ね。とにかく、明日の朝にはカードから募集をかけるわ」


 カードから募集?


「そういえば、ランクEのライク君達には言ってなかったわね」


 冒険者は、ギルドからランクに応じた緊急の依頼があるとカードから通達が来るそうだ。今回は緊急での最低ランクがDからみたいで、初心者と認定されるランクEには通達されず、依頼を知っても連れて行くことは出来ないらしい。


「(まさにライクさん達のことですね)」


 まあ、ルールなら仕方ないな。


「ということで、ライク君達は連れていけないからそのつもりで」


「頼りになるのにー」


「残念……」


「不安だな」


「ん? ラン達は行けるのか?」


「ふふふ、今回の調査でランクDになるんだよ!」


「だから、私達は行く」


「不安だ」


「Cが何人かいれば問題ないわよ。人数が足りなければ行かせるつもりは無いし」


 心配ではあるが、Dになったってことは実力は認められたってことなんだろう。


「味方にも十分気を付けてくださいね」


「戦況が悪くなると、囮として使われることもありえますから。前に出過ぎない方がいいと思います」


「(人間に限らず、裏切る人はどの種族にもいますからね)」


 へぇー、見た目は違っても基本的には人なんだな。流石、伊達に長生きしてないな。


「う、うん。そうだねー」


「そっちは私が担当するから大丈夫」


「後方に位置する奴が見てくれたほうが確実だしな」


 それも気を付けてるなら大丈夫かな。

 それからミナネさんとラン達に食事に誘われたが、ムハサさんの店で食べたので断って、今度改めて付き合う約束をして別れた。


「さて、あとはヤイを送るだけだな」


 外は街灯が点いているが空はもう暗くなっていた。


「気にしなくても、と言うのはもう不毛ですね。お願いします」


「ヤイさんも孤児院の人達みたいにちょっと開き直ったね」


「実際、殆ど同じ立場ですからね、ミラニールさんを見習おうかと。ミラニールさん同様、何を返せばいいのかわかりませんけど」


「(アリスさんと仲良くしてるだけで、助かってるみたいですけどね。実際それがライクさんからのお願いでしたし)」


 本人は恩返しとは思ってないみたいだがな。それに、困った時に俺が頼みやすいから、無理に返す必要はない。今はアリスと仲良くしてくれるだけでいいし。


「……そういえば、アリス達は会う約束なんかはどうしてるんだ? 俺がアリスを連れ回すから家に行ってもすれ違いそうだが」


「それなら大丈夫。さっきムハサさんの所で決めたよ」


「孤児院の人達のこともあるので、来れる時にはお昼をムハサさんの所で食べて、予定などを話そうと言うことになりました」


 友達やってるなー、微笑ましい限りだ。


 その後はヤイも無事に送り届けて、俺達も家に帰って眠りについた。

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