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孤児院

もうじき事件がある筈。


 子供らは肉体強化で俺が運ぼうとしたが、どう頑張っても2人が限界だった……ので、アリスには一番年長っぽい子供を運んでもらった。


「確かこの辺りの筈ですが……あ、ありました」


 ヤイが指差す方を見ると、古くボロボロの教会と宿舎のような建物があった。


「古いけど教会があるのか」


「はい。人が変わっていなければ、シスターが子供達を見ているはずです」


 こんな所で、子供の面倒を見る代わりの人が簡単に見つかるとは思えないな。


「この教会、誰を崇めてるのかな」


「(おそらく女神様だと思いますよ。大きさのなどの違いはありますが、私が隠れていた教会と同じですし、昔からある女神様の教会ですね)」


 へぇー、そうなのか。ミースが昔って言うくらいだから、相当前からこの形なんだな。


「とりあえず、教会を覗いてみましょうか」


 俺達は連れ立って教会に向かい、覗き込むと誰かが祈りをしていた。格好がシスターだったので、祈り終わるのを待ってから声をかける。


「すみませーん」


「(中もボロボロですね。建物として大丈夫でしょうか)」


 スラムの住人はそんなことを考えないだろうな。


「あ、はい。何でしょ……?」


 振り向いたシスターさんはかなり若かった。正直もっと年老いた人をイメージしていたので意外だった。

 そして、シスターさんは俺達を見てから、抱えている子供達を見つめていた。


「……!? イサカ! サイク! ラール!」


 シスターさんが駆け寄って来る。

 この様子からやっぱり孤児院の子みたいだな。


「あ、あの! この子達どうしたんですか!?」


 俺は襲われたこと、撃退したことを伝え、ここの孤児院の関係者か確認してから、襲ってきた理由を聞くために連れてきたことを伝えた。

 そこそこ暴れたあの場所だと、また違う住民が集まりそうだったしな。


「ど、どうしてそんなことを……」


「それはこの子達から聞きます。とりあえず、この子らを寝かせる場所はありますか?」


「あ、はい……宿舎の方に。あ、あの……理由を聞いたらどうするつもりなんでしょうか」


 シスターさんが不安そうに聞いてくる。


「それは、この子達の理由次第です」


「そう、ですか……」


 シスターさんは明確に落ち込む。

 そんな態度を取られてもやることは変わらない。


「まあまあ、何かの勘違いの可能性もありますから、そこまで悲観的になることはないと思いますよ?」


「そう、ですね」


 言葉ではそう言うものの、心配と不安で一杯一杯のようだ。

 相手次第だけど、そんなに酷いことをするつもりはないんだがな。


「(意外に厳しい面もあるようなので、酷いことになる可能性はありそうですけどね)」


 ミースが俺に伝わるように言う。

 ……相手次第だ。


「ところで、今はあなたが子供たちを見ているのですか? 前はミラニールというシスターが居たと思いますが」


 ん? この人が昔からやってるんじゃないのか。


「いえ、ちゃんとマザーはいますよ。ただ……病で床に伏せっているので、代わりに1番年上の私がシスターとして祈りをしたり、子供たちの面倒を見ています」


「そうですか……ミラニールさんが病に」


 心配そうにヤイが言う。

 ヤイが世話になったのはその人か。


「ヤイさん、せっかくだしお見舞いしていったら?」


「そうですね、会えたらと思ってましたし。すみません、ミラニールさんに挨拶していっても良いですか?」


「あ、はい。マザーも宿舎の方ですから案内します」


 シスターさんの案内で、俺達は宿舎に向かいながら少し話をした。

 シスターさんはラミナさんと言い、年はヤイと同じくらいのようだ。さっき言っていたようにミラニールさんと言う人の代わりをしている。

 教会の関係者なのかと思ったが、そういうわけではなく、ラミナさんも孤児院の子供でミラニールさんに恩返しがしたくてシスターをしているらしい。


 そう言ったことを聞きながら、子供たちを部屋で寝かせて、ミラニールさんの部屋に向かう。


「(あの子がいませんね)」


「……他に子供たちがいないね」


 ミースが呟き、アリスが見回しながら言う。

 そう言えば、ここには呼ばれて会いに来たんだったな。


「他の子たちは食べ物などを探しに行っているので、今はいないです」


 孤児院と言ってもそんなものなんだろうな。

 少し聞くと、お金や食べ物はミラニールさんが何とかしていたらしい。体調を崩してからは、子供たち自身で何とか(しの)いでいるそうだ。


「着きました、ここがマザーの部屋です。マザー? 少し失礼します」


 こんな所で孤児院をする人はどんな人なのかね。

 ラミナさんが扉をノックをしてから、声を掛けて部屋に入る。


「ラミナ、お勤めお疲れ様……あら? お客さんかしら」


 ベットで女性が座っていた。子供たちのおばあちゃんをイメージしていたが、見た目はみんなのお母さんといった人だった。


「マザー、ちゃんと寝てくれないと困ります」


「今日は体調が良いのよ。それよりそちらの方達は?」


「はい。マザーを見舞いたいと言う人がいらっしゃったので」


「それは嬉しいわね。何もない所だけどゆっくりしていってね」


 ミラニールさんは微笑みながらそう言う。

 ……確かに何もないが、それよりも部屋がボロボロで病人が暮らすのに適切とは思えない。大丈夫なんだろうか。


「お邪魔します」


「失礼します。ほら! ヤイさん!」


「わ、わかってますから」


 少し後ろに隠れていたヤイをアリスが引っ張り出す。


「あなたは……」


「えっと、ミラニールさんお久しぶりです。もう分からないか、覚えていないかもしれませんが」


 ヤイはベットに近付いて、膝を折り目線をミラニールさんに合わせる。


「……覚えているわ」


 ミラニールさんが座ったままヤイを抱きしめた。


「……え?」


「無事で良かった……」


 ヤイは少し固まっていた。


「あの日以来、全く姿を見かけなかったから。あの男に何かされたのかと……」


 ミラニールさんが少し涙を流した。


「なんだヤイ、昔も今もお前を心配する人がいたじゃないか」


「っ! し、心配を、お掛けしま……した」


 ヤイが泣きむまでしばらく待ち。ミラニールさんに俺達の自己紹介を済ませる。


「そう、あなたが助けてくれたのね。ありがとう」


「お礼を言われるようなことじゃないですよ。俺がそうしたかっただけなので」


「そう、ヤイは幸運に恵まれたのね」


「そうかもしれませんが、そこそこ大変だったんですけどね」


 まあ、確かに幸運だけではないな。


「ところで、ここには何をしに? 私に会いに来てくれたこともあるんでしょうけど、何か切っ掛けでもあったの?」


 俺達は依頼である子に呼ばれたことを伝える。


「多分、イアね」


「そういえば、2日前に持ってきた食べ物を貰ったと言ってましたね」


 2人は依頼を出した子がわかったらしい。


「じきに帰ってくる筈だけど、どうする?」


「特別やることもないので、孤児院で少し待たせてもらいます」


「そう、ゆっくりしていって頂戴。お話できる相手がいると私も嬉しいわ」


「そういえば、ミラニールさん。元気そうに見えますけど、病気なんですよね?」


「そうね。今は調子が良いけど、座ることもツライ時があるわ」


「そうですか……」


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。そのうち治るわ」


 重い病気なんだろうか? 治せるなら治してあげたいが、病気を治すイメージなんかわからないしな……


「(ミース。病気を治す経験とかあったりするのか?)」


「(一応ありますが、ミラニールさんの体を詳しく調べないと何とも言えませんね。それに、治したとしても、ミラニールさんには余り寿命が残ってないと思います)」


 ……え? いや、ミースの余りは俺達とズレている可能性もあるか。


「(余りってどれくらいなんだ?)」


「(あと、5年生きたら良い方でしょうか)」


 俺達の感覚でも長くは無いな……

 でも、どうして寿命がわかるのか聞くと。


「(前に、人は生命力を溜める話をしましたね。その溜める場所には許容量があるのですが、それを超えてしまうと老化が早まるのです)」


 生命力は必要以上に多く持っていると、成長を早めると同時に老化を進めるんだそうだ。この老化は主に体の内側からの老化らしい。ミラニールさんにはその痕跡があったということか。


「(そして、この溜めた生命力は余程のことがない限り消費されません。1番簡単で危険がないのが生命魔法や子供を作る行為です)」


 寿命が短くなる原因は子供を作らないこともあるが、許容量が少なく、食べ物で生み出す生命力の量が多いなどの条件が揃うと、普通の人より20年は寿命が短いらしい……


「(この会話はアリスには伝わってるのか?)」


「(いえ、基本的に片方から聞かれたことは片方だけに返すことにしました。私から話かける時、戦闘中や緊急事態は別ですけど)」


「(今回みたいなこともあるかもしれないし、それがいいかもな)」


 今回はアリスが少しショックを受けることもあるが、伝えるとヤイとの間に重要な秘密ができてしまって気まずくなるだろうしな。


「(で、寿命はどうにもならないが、病気は治せるかもしれないんだよな?)」


「(そうですね。調べれば治せる可能性はあります)」


 色々確認すると、調べる方法も俺の中から行えるみたいなので、ミースを知られる危険は少ないだろうと思い、試してみることにした。


「(アリス。ミースにミラニールさんを診てもらうから少し合わせてくれ)」


「(わかった)」


 俺はミラニールさん達に近付いて提案をしてみる。


「あの、もしかしたらミラニールさんを治せるかもしれないです」


「「え!?」」


「ほ、本当ですか! ライク君」


 ミラニールさんを含む3人が驚く。


「多分、としか言えないけどな」


「で、でも治療の経験があるのですか?」


 ラミナさんが心配そうに聞いてくる。

 こんな若造だからなぁ、心配にもなるよな。


「ハッキリ言ってないです。なので、ミラニールさん達の気持ち次第ですね」


「そうですか……」


 ラミナさんが考え込んでいる。


「兄さんはこう言ってますけど、自信がないとこんなふうに言う人ではないので大丈夫だと思いますよ。少なくとも悪いことにはならないと思います」


「私も大丈夫だと思います。ライク君は信頼できる人ですから」


「しかし……」


「じゃあ、やってもらいましょうか」


「マザー!?」


 ミラニールさんは迷いが一切ない声で言う。


「何か問題なの? ラミナ」


「いや、経験がないなら何かしらのミスの可能性があるかもしれないじゃないですか」


「気にし過ぎよ、治療で重大なことになるなんて聞いたことないでしょ?」


「私達が知らないだけの可能性もあると思いますけど」


「そんなことまで考えたら病気なんて治らないわよ。そんなことよりも払うべき物が私達には無いことの方が問題よ」


「……え?」


「ラミナ……相手の好意とは言え最初からタダでしてもらおうとするのはダメよ。心を改めなさい」


「っ! 申し訳ありません!」


 ラミナさんが俺に頭を下げる。

 流れ的にミラニールさんはラミナさんを試したのかな? 教育者だなー。


「いえ、大丈夫ですよ。自分がそうしたかっただけで、何かを要求するつもりはなかったので、問題ないなら治療をしますよ?」


「ダメよ。私達が何も返せない以上そんなことは許されないわ」


 この人もこのタイプか……試されている気もするが、適当に納得してもらうか。


「じゃあ、ミラニールさんへのお礼、ということなら問題ないですね」


「お礼? 何かした覚えはないけど」


 ミラニールさんが腑に落ちない顔をしている。


「ミラニールさんは俺達の友達の命を助けてくれましたから」


「そうだね。私もいつかお礼をしないと」


「……ヤイは、本当に良い友達をもったみたいね」


 ミラニールさんはやれやれといった顔をしている。


「私などには身に余るお二人ですよ」


 大袈裟だな。


「じゃあ、お言葉に甘えようかしら」


「マザー!?」


 ラミナさんがまだ不安そうだったが、ミラニールさんが治療で悪いことが起きることはない、と断言して黙らせた。


「じゃあ、私とライク君以外は出て頂戴」


「え!? マザー、わざわざ部屋を出る必要があるのですか?」


「周りに人がいたら集中できないでしょ? それに、治療の過程で秘密にしたい何かがあるかもしれないからダメよ」


 別に居ても大丈夫だと思うが、ミースの安全をより考えるなら助かるな。


「しかし……」


「ラミナ! いい加減にしなさい! さっきからライク君に失礼ですし、心を改めることが全くできていませんよ。いいから部屋から出て行きなさい」


「っ! 失礼しました……」


 ラミナさんはガックリ落ち込んでトボトボと部屋を出る。


「えっと、私も出て待ってるね。兄さん」


「ライク君、お願いします」


 2人も部屋を出て扉が閉まる。

 ラミナさんのことは気になるが、まずは調べることからだな。


「とりあえず、体に触れて調べる必要があるですけど、大丈夫ですか?」


「ええ、お願いするわ」


「(ミース、頼む)」


「(わかりました。少々待ってください)」


 俺は、調べる行為は集中する必要はないことと、少し時間が掛かることを伝え、話をすることにした。


「良かったんですか? あんなに落ち込ませて」


「いいのよ。あの態度は正さないといけないから」


「そんなに失礼でもなかったと思いますよ? ミラニールさんを心配していただけでしょうし」


「今回の場合は問題なかったわね。ただ、もし治す側の人が、治す側の気持ちを考えない態度、信用しない態度に嫌気が差して、治せるチャンスを逃してしまうことはあり得るわ」


 確かに、人によっては十分あり得るかな。


「それに、心配することも大事だけど、心配するだけでは何も良くはならないわ。自分で出来ないことに遭遇した時は、誰かを、何かを信用しないとどうにもならないんだから」


 ……そうかもしれない。


「だから、あの子には人を見る目を養ってもらいたいのよね。将来あの子が子供たちを見ることになるかもしれないんだから」


「そうですか。でも、なんでそんな話を俺に?」


「だってライク君、良い子だし、私の目には頼りになる気配を感じるわ」


 どんな気配だ……


「助けることを期待されてるなら、残念ながらラミナさんのために動くことはないですよ」


「そう、残念ね。じゃあ、誰のためなら助けてくれる?」


 ミラニールさんがニヤニヤしている、母さんに似た何かを感じるな。


「ミラニールさんのためなら、助けることもあるかもしれないですね」


「……負けたわ、こっちが恥ずかしくなるわね。ライク君、本当に15才?」


「そうですよ。まだまだ若輩者(じゃくはいもの)です」


「子供が自分を、若輩者と認めるのは子供っぽくはないわね」


 そうだったのか……


 そうこうしている間に調べる作業が終わった。


「(治せそうか?)」


「(はい。おそらく問題ありません)」


「いけそう? ライクく、ゴホっゴホ!」


 ミラニールさんが派手に咳き込む。


「大丈夫ですか!?」


「ごめんなさい、急にツラくなってきたわ……」


 ミラニールさんの顔色が見る見るうちに悪くなってきたので、ベットに寝かせる。


「治せそうなので、すぐに治療しますね」


 ミラニールさんが小さく頷く。

 俺はミラニールさんの手に触れて、ミースに治療を行ってもらう。


「(大丈夫そうか?)」


「(大丈夫だとは思いますが、急に病原が活発になったみたいで少し集中させてもらいます)」


 ミースが黙りこんで少しすると、神眼の影響か3人の気配がこっちに向かって来るのがわかった。


「(兄さん、寝かせてた子供の内2人が向かって来るよ)」


「(軽くあしらっといてくれ、ミースはそのまま集中しててくれ)」


 3人目は、この部屋が1階なことを理由に、窓から入って来るつもりみたいだな。


 ミラニールさんの顔色を確認しながら、近付く気配を確認していると、派手に音を立てて子供が侵入してきた。


「お前! マザーに何してる!」


 予想通り窓を割って入ってきた。


「治療をしてるから邪魔をしないでほしいんだが」


「嘘だ! その手を離せ!」


 聞く耳を持つわけがないよな。手を離すとミースがやり難くなるから了承できないな。ミラニールさんはまだ喋れる状態じゃないし。


「この!」


 いきなり手に持ったナイフで斬りかかってきた。


「危ないなっ」


 手が離れないようにして避ける。

 繋いでる手を狙わない辺り冷静じゃないな。そして、自分たちのマザーがいる場でナイフを振り回す姿にイラっときたので、また軽く蹴飛ばす。


「ぐあっ!」


 ……俺も冷静になりきれないところは子供だなぁ。


「くぅぅっ」


 今度は気絶することなく、痛みに悶えていた。

 そこへ、部屋の扉が開いた。


「兄さん、大丈夫?」


「ああ、アリスとヤイは無事か?」


「はい、大丈夫です。今度はちゃんと撃退しました」


 それは何よりだ。

 廊下には倒れてる2人の子供と、混乱しているラミナさんが見えた。


「こ、このやろう!」


 俺を襲った子供が、気合で立ち上がり俺に向かってきたが、突然俺の前に誰かが立ち塞がり子供への視界が遮られた。


「……何をしているの?」


「マ、マザー」


 ミラニールさんが、いつの間にか子供と俺の間に入って子供の方を見つめていた。

 え? 動いて大丈夫なのか?


「(ミース、ミラニールさんはもう大丈夫なのか?)」


「(はい。生命力が減っていたわけではなかったので、悪いところを治したら問題なく動ける筈です。妙なことではあるのですが)」


 命に関わる病気だと、溜めていた生命力を使って病原を何とかしようとするものらしい。今回ミラニールさんは重い症状だった筈なのに、あまり生命力が減ってなかったのですぐに動けたそうだ。


「サイク、なぜこの人を襲ったのか答えなさい」


 元気になり、怒っているミラニールさんは中々に迫力を感じる。


「だ、だって、そいつがマザーに触れてたから危ないと思って」


「サイク、私に嘘は通じないわよ?」


 流石に孤児院のお母さんだな。


「そ、それに! そいつイアを攫おうとしている奴らの仲間だよ!?」


 へぇー、内容はデタラメだが関係があることは知ってるのか。


「サイク、慎重に答えなさい。次に嘘を吐いたら、あなたを孤児院から追い出します。2度と関係者とも、家族とも思いません」


 孤児院で暮らす子供には中々にキツイことを言う。ミラニールさんは、厳しくするべきところはとことん厳しくするみたいだな。


「えっ……」


「マザー!? それはあまりにも!」


「黙りなさい。サイクが正直に言えばいいことです」


「あ、あの、えっと……」


 あまりのことに、サイクという子供は声がうまく出ていない。


「どうしました? だんまりですか? ここを出たいということですか? それなら止めませんから出て行きなさい」


 ミラニールさんが外へ出て行くように促す。


「っう、うぅぅ」


 怒涛の勢いだなぁ、泣いちゃってるよ。


「何なのですか? 答えるつもりがないなら早く出て行きなさい」


「ごめんなざい! じょうじきにいゔがらっズズー、こごにっいざぜてぐだざい!」


 サイクという子供は鼻水と涙を流しながら何とか声を出す。

 その後は泣き止むのと、倒れてる2人の子供が目覚めるまで待ってから、話を聞くことにした。

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