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依頼

諸事情の続きがありまして、投稿が遅れるかと思います。

あと、題名の良いのが浮かべば、変えるかもしれません。概念魔法という言葉は残しますが。

 俺は自分の部屋で朝を迎えた。

 飲み食いは程々で切り上げていて、俺達は家に、ラン達は宿屋も兼任しているムハサさんの所に泊まった。そして店を出る時に、会う約束をしていたので着替えて向かうことにする。


 母さん達は帰ってなかったので、昨日と同じようにアリスが食事を作り、ミースを起こす作業をして、朝食を食べるところで、ミースの食事について考えたことを伝える。

 一体化ということができるなら、感覚も共有できるんじゃないかと思った。ミースは体が無いのに味覚などがあることから、生命力や魔力がその役割を果たしていると思い、それなら共有できている魔力、生命力を通してできるんじゃないかと考えた。


「(どうでしょう? 私達は自分達のことを深く考えないので、試してみないとなんとも言えませんね)」


「食事をする必要がない以上、そこまで味覚を欲しがるのはミースだけなのかもね」


 確かに。重要な見える、聞こえるなどが一体化しても問題ない以上、感覚を共有する必要がないからな。ミース以外の妖精達は必要と感じず、何も考えなかったんだろう。


 ミースが練習し始めると、案外簡単にできた。で、そこから思わぬ副産物も生まれた。

 俺と感覚を共有した結果、ミースとアリスが俺の目線、神眼で見ることが出来るようになった。集中する必要があるため、戦闘では使えないようだが、もう1つの機能は使えそうだ。


「(凄いですね。人を探すのに便利ですよ)」


 俺は気付かなかったが、神眼の上空から見るマップ機能は、人や建物を思い浮かべるとその人や建物を捜してくれるらしい。が、建物の中までは見えないようで、幻術などの変化や隠れるような魔法の使用中では、見えなかったりするかもしれないな。


「本当だね。あ、ヤイさんがギルドにいるよ。男物の私服だけど顔は女性だね、兄さんにはこう見えてたんだ」


 本当だ、ラン達もいるみたいだな。使って見ると便利だな、本来の視界が塞がれるから1人で多用はできないが、ミース達がいれば安全に使えそうだな。


「なら、ミースの問題も解決したし、ラン達と約束もしてるし、早速向かうか」


「そうだね」


「(面倒をお掛けしました)」


 別に面倒ではなかったがな。

 俺達は、素材など回収に必要な収納袋を持ってギルドに向かった。

 ちなみに、持っている収納袋は人が何体か入るほどの容量で、サイズは手より少し大きいくらいだ。あと、人が入るといっても、生き物が入るわけではない。物だけが入るようになっている。この容量でもかなりの値段らしいが、冒険者をするとは言っていたので、母さん達に渡されていた。信頼が重い……


 そんなこんなでギルドに着くと。


「「ライク君!」」


「「……え?」」


 ランとヤイが同時に呼び、お互いを見て同時に首を傾げた。


「あれ?」


「(ヤイさん、幻術使ってませんね)」


 え? そう言えば違和感がないな。よく見ないと掛けているのか、解いているのかわからないな。


「ライク君。この人はー?」


「知り合いですか? ライク君」


 ヤイに聞きたいことはあるが、とりあえず知り合った経緯をお互いに紹介した。


「紹介されたランだよ。よろしくねー」


「サーリア」


「ゲオルだ」


「ご丁寧に、私はヤイと言います。よろしくお願いします」


 ヤイが丁寧にお辞儀をする。


「硬いよ!」


 ランが叫ぶ。


「ラン、ヤイはこういう奴だから諦めてくれ」


 アリスとヤイだとそう簡単じゃないからな。


「ランの気安さは、ライクと親しい人には通じない?」


「そうみたいだな」


「えっと、別に私はランさん達が嫌いなわけではないですよ?」


「ほんとー?」


 ラン達とアリスが話始めたので、相手を任せて俺はヤイの格好について聞く。


「ヤイはどうしたんだ? その格好と顔。イザとかにバレるんじゃないか?」


「イザ様は執事服の姿しか知らないですし、鈍いので大丈夫です。あと、アリスさんに宣言してしまいましたからね」


 イザの評価が可哀想なことになってるな。アリスに宣言というのは、アリスと克服すると宣言したことらしい。

 今回ここに来たのは、昨日あったことをミナネさんに聞いて心配したこと、朝にここに来れば会えると思ったからだそうだ。今日は仕事が休みだったので丁度良かったみたいだ。ちなみに、今イザにはキーマが付いているらしい。


「ヤイが決めたことならその意思を尊重するが、そんなに1人では歩き回らず、遠慮せずに俺かアリスを頼れよ?」


「だから、ライク君は心配し過ぎですよ。ミリアさんには幻術だけを教えてもらってたわけではないのですよ?」


「(前は弱々しかったと思いますが……)」


 アリスと出掛けた時の話をミースから教えてもらって、アリスに聞いたことにして聞いてみると。


「あ、あれは! ちょっと調子が悪かっただけです。この格好ならちゃんと撃退できます!」


 前の時は、女の格好で心が完全に女性になってしまっていたからだそうだ。

 格好で心の持ちようが変わるもんなんだな。


「ところで、ライク君達はこれから依頼でも受けるんですか?」


「まあ、受けるつもりだが、その前に約束を果たしておかないとな」


「約束、ですか?」


「ああ」


 俺はラン達に視線を向ける。


「あ、ライク君。そっちの話は終わった?」


「ああ」


「なら、約束を通り魔法のことを教えてもらう」


「戦い方についても頼む」


「兄さん大人気だね」


「(目立ちたくない想いは、叶いそうもありませんね)」


 ラン達だから大丈夫だろ、目立ちたくないことは伝えてあるし。

 あと、ラン達が言っているのは飲み食いの時に鍛えてほしいと頼まれたことだ。俺はラン達なら良いかと思い、約束をしてギルドの地下で少し見ることになった。

 ヤイにもそのことを伝えてると。


「それなら、私も是非お願いしたいです」


 と、言うのでラン達に確認したら問題なさそうだったので、ヤイも見ることになり一緒にギルドに入った。


 中は人で一杯だった。朝は依頼の取り合いになるらしく、基本的に人で溢れるそうだ。そんな中、受付で奮闘しているミナネさんの所に並び、地下を使用して良いかの許可を取りに行く。


「はい! 次の人! あら、ライク君達ね。今日は依頼でも受けるの?」


「いえ、今日は地下を使いたいので、空いているのか、使って良いのかの確認を取りたいのですけど」


「朝の地下は混むことはないから大丈夫よ。でも、時間帯によっては空いてないし、トラブルの元だからギルド員に確認はするようにしてね」


 ミナネさんがそう言うのも、基本的に訓練場は幾つかの部屋に分けられていて、その1つ1つをグループで使う形になっており、1つの部屋がグループで使えるほどには広いらしい。で、混み合ってくると、部屋を誰が先に使ってたなどで揉めることがあるそうだ。その時ギルド員の証明があるとスムーズらしい。


「ギルド員って重要ですね。脅されたり、証明者として雇われたりしそうです」


「その辺は大丈夫よ。そんなことをすれば厳罰だし、ギルド長が嘘を見抜く道具を持っていて、冒険者がギルド員に証明してほしい時に使うそうだから」


 ギルド長が敵だったり、嘘を言う場合があったら終わりじゃないか?


「ちなみに、ギルド長が裏切る場合も考えてあるそうよ。教えられてないけどね」


 ああ、そうなんだ。国の機密と似たようなものかな。


「教えてくれてありがとうございます。じゃあ、そろそろ地下を借りますね。また怒る人が出そうですから」


「ふふ、そうね。聞きたいことができたらいつでも聞いてね」


 ミナネさんに礼をして、アリス達みんなと地下の訓練場に向かった。


「そういえば、ギルド長に会ったことないなー」


「会う必要も、機会もない」


「二階で色々やってるんじゃないか?」


 母さん達は会ったことがあるらしいが、余り信用するな、とは言ってたな。まあ、サーリアの言う通り会う機会はないだろうし、余り考える必要はないだろうな。


「さて、何からやる?」


 訓練場についてから、何を聞きたいのか確認をして、魔法についてはミースから聞きながら、戦闘技術は教えられることを教えていった。


 魔法は基礎の属性について少し詳しく知った。人の場合、魔法は精霊が行ってもらうものだが、間違って伝わり、とんでもない魔法が発動することもあるのかと思っていたが、段階を踏まないと精霊は理解しないらしい。

 例えば小、中、大の順番に伝えないと伝わらないし、「大」の魔法を使おうとして、途中から「中」の魔法を使おうとしても、精霊は何の魔法も発動しない、その時はまた「小」から伝え直しらしい。なので、その段階を踏むために、大きく強い魔法は発動するのに時間が掛かるそうだ。


 次に、精霊に伝える魔法は自分のイメージによるということ。見たことがない、イメージできない魔法は精霊に伝わらないからだ。それなら逆に言えば、明確にイメージできれば自分独自の魔法が使えるんじゃないか、とミースに言うと「は!?」と驚いて、変化魔法はそういうことかと納得していた。


 戦闘技術については、足腰の動きを重点的に教えて、鍛え方も叩き込んで、継続が一番の近道と教えた。ただ、俺の動きは非常識だという自覚はあるので、常識の範囲の訓練を行った。


「難しいねー」


「イメージ……」


「キツイな……」


「ライク君は簡単にやりますね……流石です」


 ヤイ、ラン達はそれぞれ苦労していた。

 正直ヤイとラン達は戦闘の才能があるほうだと思うが、今のままだと不安だな。ちょっとしたミスで死んでしまうかもしれない。


 ……少し悩んだが、ここで鍛える間はヤイとラン達に成長、上達を早める概念を使ってみることにした。明らかな変化があるわけでもなく、ラン達の感覚のところなので、変に思われることは無いと判断した。


「(ライクさんの生命力はどうですか? 多くは減ってないように見えますけど)」


「(大丈夫だ。一時的だし、大きな効果を与えたわけじゃないからな)」


「(案の定、人のために使ったね。使い過ぎないように本当に! 気をつけてね)」


 わ、わかってるから。

岩石地帯での練習は何も言わなかったが、他人に使うと心配になるらしい。まあ、1人で使うのと複数人で使うのとでは消費が違うから当然か。


「あれ? なんとなくわかってきたかも」


「イメージは集中力と創造……」


「何とか、形になるかもしれないな」


「いつもの自分と違うような気がしますが……」


 ヤイは敏感だな。でも、その程度の違和感なら問題なさそうだな。


 そうして、簡単に教えられることは教えたところで、そろそろお互いに冒険者として依頼を探すことにした。


「ライク君、ありがとねー」


「勉強になった」


「あとは、俺達の力で依頼をこなしながら実力をつけることにする」


 ラン達は依頼で俺達の力を借りるつもりはなかったようだ。実力差があり過ぎるから論外と自分達で言っていた。


「そうか。今日の依頼はこれから探すのか?」


「違うよ。実は昨日の群れのことを少し調査することになってるんだー」


「ミナネに言われた」


「俺達は場所を知っているし、怖さも知っているからな。無理をせずに程々で帰ってくるとするさ」


「そうなのですね、ご武運を祈っております」


 ヤイがお辞儀をする。

 主人を見送る使用人のようだな。


「気を付けてくださいね」


「俺からは無事を祈って魔法でも掛けるか、ちょっと触れるぞ」


 俺はラン達の肩に触れて、概念でラン達に敵から逃げる時に限定し、足を速くするようにした。限定的だから目立たないし、有事の際には役立つだろ。


「(……ライクさんの優しさなので余り言いませんけど、ちゃんと考えて使ってくださいね)」


「(兄さんの優しさは嬉しくもあり、不安でもあるから困るよ)」


「(わ、悪い……)」


 概念魔法の生命力の消費量がわからないアリス達は不安みたいだ。消費の目安みたいなものを考えた方が良さそうだな。


「何か知らないけど、ありがとね。行ってくるー」


「なんの魔法か気になるけど、行ってくる」


「ライクだし、悪いことじゃないだろ。また後でな」


「気を付けてな」


 そうして、ギルドからラン達を見送った。


「さて、俺達は依頼でも見てみるか」


「ヤイさんも一緒にね」


「私も、ですか?」


「だって、危なっかしいし」


「ですから! 私もちゃんと戦えますからね!?」


「わかったわかった。それでも、俺達といた方が安全だろ」


「まあ、そうなんですが……」


 ちょっと不服そうなヤイを連れて、朝のラッシュを捌き終わり、グッタリしているミナネさんにどんな依頼があるのか聞いてみた。


「そうねー、今残っているものだとライク君達には簡単なものしかないわね」


 そう言って、Fランク、Eランクの依頼を見せてくれた。

 ちなみに、冒険者の最低ランクはEなのだが、Fランクというものがある。これは冒険者でなくとも依頼が受けられるし、魔物と戦うこともなく、街で行う簡単なものがほとんどだ。


「うーん? ミナネさんこれは?」


 俺が気付いたそれは、Fランクの依頼で報酬が銅貨1枚という最低額の依頼だった。


「ああ、それね。私が個人的に引き受けたものよ。銅貨1枚を渡されたんだけど、1枚じゃあね……」


 確かに、1枚で依頼として承認していたらキリがないだろうしな。それに、銅貨1枚だと冒険者に報酬を渡すとギルドに利益がない。なので、ギルドに依頼する時は、依頼内容べつにある最低限の金額は用意しないといけないそうだ。


「ならなんでFランクのところに書いてるんですか?」


「消し忘れてたのよ。1度書いたのは、依頼しにきた子に依頼を受けたよって安心させようとしてね。私が個人的に受けたから嘘ではないでしょ?」


「人が良いですね。そんなに暇ではないでしょうに」


「褒められるようなことじゃないわよ。出来ると思ったからやろうとしてるだけよ」


 こういう人はどうにも助けたくなるな。


「で、この「お姉ちゃん達を探して」って依頼はどんな子が出したんですか?」


 銅貨1枚の依頼にはそう書いていた。


「スラムの子みたいだったけど、中々できる子だったわ。読み書きを少しできて、お礼もいえて、何より将来は美女ね間違いないわ」


 そこが重要なのか……

 俺はミナネさんの助けになればと思い、依頼を受けるつもりで詳しい内容を聞いてみた。


 まず、2人に助けてもらってお礼がしたいから会いたいので、スラム街にある孤児院に来てほしい。会ったのは2日前で、アリス、ヤイと同じ髪型、同じ髪色らしい。


「あれ?」


「スラムの子……」


「(2日前ですか)」


 ……ん?


「ちなみに、助けてくれた内容としては、屋台の食べ物をくれたことと、安全に帰れるようにしてくれたことらしいわよ」


「「……あ」」


「(確定ですね)」


 見る限り、恩人はアリス達みたいだな。

 ミナネさんにはそれはアリス達だと伝え、俺達が行くことを伝える。


「やっぱりそうなのね。アリスちゃんかな? とは思ってたんだけど、ライク君以外の人と歩くイメージ湧かなくてね」


 そこへヤイと来て、もしかして? と思い、後で聞くつもりだったようだ。


「でも、行ってくれるの? 別に無視してもいいのよ?」


「俺としては問題ないですけど、ヤイは……」


「大丈夫ですよ。ライク君達がいるんですから」


「任せて、指1本触れさせないから」


「(私もいますからね、問題になることはないですよ)」


 まあ、それもそうだな。


「ありがとね。今度、個人的になにかお礼をするわ」


「必要ないですよ。昨日も今日もお世話になってるんですから」


 そう言ってミナネさんに礼をして、俺達はギルドを出た。


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