冒険者
矛盾が怖い……無いように気をつけてますが。半日遅れました。すみません
技名 瞬 基本繋げて技名っぽくなればいいなって感じです。
瞬発、瞬烈とか
「(凄い威力でしたね)」
基本、人にを使うことはなさそうだがな。
「(ちなみに、あれは何を早くしたんですか?)」
「(アリスの突撃の早さと、移動しながらの回転を、止まってやる時より少し早くしただけだ)」
「(それであの威力ですか……あれ? そういえば、自分に掛ける時は制限はないんですか?)」
「(ああ、言い忘れてたな。生命力を消費する以外は特にないぞ。近付けば効果が増すのは相手に効果を与える時で、維持するのにも生命力を消費する。俺の場合は、アリスを今より素早くするとかだな)」
「(私の場合は、兄さんの身体能力を私の身体能力に近付けるとかだね。生命力の消費は激しいけど)」
差があるからな……
「(なるほど。あの、ところで痛みは大丈夫なんですか?)」
ミースが声を抑えて聞いてきた。
心で声を抑えるってどうやってるんだ。
「(ああ、痛みはあるが、さっきよりはだいぶマシになってるぞ)」
「(なら良かったです)」
ミースを安心させたところで、ここでやることは大体終わりかな。
「(他に確認することはあったかな)」
「(もうないんじゃないかな。あとは、魔法の練習とかじゃない?)」
「(それなら、私が教えられますよ)」
なら、あとは魔法の練習でもするか。
この時は気づかなかったが、魔法を学ぶ過程で、ミースからまた色々なことを学んだ。
まず、魔法の基礎属性は世界に知れ渡っているらしい。なので、アリスと考えて基礎属性に関しては、特別隠すことをやめてミースや、概念魔法、神眼を主に隠すことに決めた。
それと、ミース達妖精は魔力の回復が早いらしく、魔力が尽きた時はミースから分けてもらえるそうだ。契約主である俺がいればアリスにも分けられるらしい。
ただ、生命魔法は生命力を消費するので、回復は基本光魔法で行うつもりだ。なので、そのための要であるミースから魔力を分けてもらうことは余りないだろう。
しかし、分けるのは魔力だけでなく、生命力も分けれるようだ。俺の多くの生命力を、アリスやミースに分けることができるのは大きい。概念魔法を使い過ぎた時や、緊急時などに補える。
そういったことを確認し、昼を食べ、主にアリスの魔法を練習をした。そして、火と水を出せるようになり、土と風を操れるようになったところで、遠くから地響きを感じた。
「なんだ?」
俺は周りを見渡した。
「あれじゃない?」
アリスが指さした方角を見ると。
「(何者かが、魔物の群れから逃げてますね)」
見た感じ冒険者が、ゴブリンやオーク、ウルフなどから逃げているようだ。ゴブリンやオークだけなら足で負けないと思うが、ウルフが邪魔をして全力で走れないようだ。
「どうする? 助ける?」
「うーん、ゴブリンやオークってそんなに強くはない筈だよな。それなのに逃げてるのはなんでだ?」
「え、普通に考えてあの群れだからじゃない?」
「冒険者ならあの程度は倒せるんじゃないか? 普通の奴より強いから逃げてる可能性も……」
「(あの程度?)」
「兄さん、お母さん達を基準に考えてるでしょ。ゴブリン達とはいえ50近くの魔物は簡単じゃないよ。駆け出しの冒険者かもしれないし」
あ、そういえばそうか。
「(ライクさん達の両親もやはりお強いのですね)」
「(兄さんほどじゃないけどね)」
一々そんなこと言わなくてもいい。
「で、助ける?」
「いや、ゴブリン達と戦ったことがなく、冒険者になってもいない俺達で大丈夫か? 万が一があるかも」
「「ないよ(ないです)」」
即答か。
「もし、兄さんで勝てないなら街は滅ぶね」
「(そうですね。ライクさんが勝てないと言うなら逃げましょう)」
いや、勝てないとは言ってない。初めて戦うのだし、一体ずつ段階を踏んでいきたいだけだ。
「じゃあ、逃げている人が俺達に気付いた時の行動で決めるか」
「命の危機は人の本性がでるって言うしね」
「(前にアリスさんが言っていた、何もしない、考えない人は助けない。と言うやつですか)」
なんの話かと思ったが、俺とアリスの人助けに対する考え方の話みたいだ。まあ、そういうことだな。
「(でも、気付きますかね? 少し離れてますし、逃げるのに必死でしょうし)」
気付かない時は、とりあえず助ける。悪人を助けるのは嫌だが、良い人が死ぬのはもっと嫌だからな。
「あ、こっちに気付いたね」
3人組か、1人がこっちに指をさして、もう2人に何か言ってるな。
「聞こえないけど、揉めてる?」
うーん、どうかな。会話内容がわからないと何とも言えないな。
「(あ、進路変えましたね)」
俺達の前を横切ろうとしていた進路から、俺達に背後を向けて逃げ始めた。
「離れていくね。群れから離そうとしてくれたのかな?」
そう考えるのがシックリくるか。だけど、魔物は空気を読まなかったようだ。
「(何匹かこっちにきますね、どうしますか?)」
「離れようとしたみたいだし、こっちに来る奴らを倒すついでに助けるか。先に行ってるぞ……瞬っ」
「ちょっ! 兄さん!」
俺はアリスを置いてすっとばした。
新鮮だなアリスを置いて行くって。
「(ライクさん、使うのは危険じゃなかったんですか? それに、反動があるんですから控えてほしいんですが)」
ミースは俺の中に居たんだったか。
「(攻撃力として使うのは、やり過ぎというだけだ。急いで移動するのには便利だし、全力で早くしてるわけじゃないから平気だ。それに、反動はミースも抑えてくれてるだろ)」
「(それはそうですが……はぁ、無理はしないでくださいよ)」
ミースが呆れたように言う。
無理をすることにはならないだろう、ゴブリン達の強さを感じたいだけだからな。アリスだと問題ないとは思うが、俺が先に確認しておきたい。
魔物にだいぶ近付くと雄叫びが聞こえた。
「ゔがあぁ!」
汚い声だな。これがオークか、結構デカいんだな。とりあえず、動きを見てから技をぶち込むか、魔物ならやり過ぎぐらいが丁度いいだろ。
「がぁ!」
大きい棍棒を振ってきた。俺は大きく後ろに下がる。
デカいからリーチが長いな。ただ、振りが遅い。やっぱりデカいと動作が遅くなるのか。
その後もオークと戯れたが、動作が早くなることもなく、特に危険は無いとわかった。
「こんなもんか」
「ごがぁ!」
今度は棍棒を振り下ろしてきたので、横に避けてから、殺気を出しながら突っ込む。
「瞬、発っ」
「ぐぉぉっ!」
逃げる冒険者とは違う方角にオークが吹き飛ぶ。岩石よりは加減したので、そこそこ飛んで落ちた。
「……」
ピクリとも動かない、死んだかな? 加減し過ぎたかと思ったが、そうでもないようだ。概念を使うまでもなかったかな? まあいいや、後のゴブリン達も処理しないと……
と、思ったが。
「ひゃー」
ゴブリン達が人間みたいな声を上げ、逃げ出した。ウルフ達も怯えて逃げ出している。
「なんだ? オークを倒しただけだぞ」
「(ライクさんの殺気にでも当てられたんじゃないですか?)」
えぇ、軽く出しただけだぞ。でも、このランクならその程度で逃げ出すのか。殺気である程度の強さが確認できるかもしれないな。
そう思っていると、アリスが追いついてきた。
「兄さん! 置いて行かないでよ!」
「悪い悪い、このランクの魔物の強さを確認しておきたくてな」
「それなら私がいても問題ないよね」
それだと万が一、魔物が強かった場合アリスが危険だ。まあ、これからは殺気である程度わかりそうだからいいがな。
「悪い悪い、次からそうするから」
「本当に? 絶対そうしてよ?」
「約束するから。それよりアリス、冒険者たちを助けてやってくれ。そろそろ危ないかもしれないし」
「兄さんは行かないの?」
「倒すのは任せるが、一緒には行くぞ? とりあえず向かおう」
俺達は冒険者たちを追い始めた。
「それで、倒すのは任せるって?」
走りながらアリスが聞いてきた。
「ああ、目立ちたくないし、アリスもその方が安心するだろう?」
あの程度ならアリスが危険になることは、まず無いしな。
「そうだけど、兄さんどうせ周りから強いって思われるのが嫌なだけでしょ」
まあな、男が強いなんて思われても面倒なだけだ。警戒されるし、理不尽に妬まれたりもするみたいだしな。アリスは、強いと知ってる人はそれなりにいるから問題ないだろう。それに、俺は強くはないからな。
「(そこまで強い人になりたくないんですね)」
「だから、兄さんを侮る人がいて私は嫌なんだけどね」
「(そうでしょうね。私もこれからそういう人を見ることになるのですね)」
悪いとは思うが、そういう輩は無視してくれ。向かいながら、そんなことを話していると。
「あれ? 群れの動きが変わったね」
群れが、ある場所を囲うように移動しているようだ。
冒険者の誰かが怪我でもしたのか? あと、随分統率のとれた魔物だな。
「アリス、急いだ方がよさそうだ。ミースはアリスと行ってくれ、四元素の魔法攻撃を教えるつもりでな」
「(わかりました)」
「わかった」
ミースが隠れてから、アリスがスピードを上げて飛び出した。それを俺は、そこそこのスピードで追いかけた。
アリスはすぐに群れに到着し、一撃で囲いに穴を開けた。それを、ミースが炎で穴を広げると、魔物は中心にいた冒険者たちを襲おうとするが、ミースが土で壁を作り守る。壁に阻まれ襲う対象がアリスしかいなくなり、魔物はアリスに襲い掛かるが、問題なく殲滅された。
「(終わった)」
「(終わりましたね)」
そうみたいだな。囲っていた時は統率がよかったが、最後の方はバラバラだったな。
「(で、冒険者の人達は無事なのか?)」
「(うん。怪我はしてるみたいだけど)」
「(それほど大きな怪我ではないです)」
ならあとは、悪い人じゃなければいいが。
アリス達の所に向かった。
「ありがとうね!」
「命の恩人」
「助かった」
アリスが礼を言われていた。女性が2人、魔道士にシーフかな? 男が戦士って感じか。見た感じ俺達よりは年上だな。
「いえ、無事でなによりです。あ、兄さん」
「この人達が襲われてたのか」
「そうなんだよー。いやー参っちゃったよ」
怪我をしたシーフの人が言う。
「ゲオルがまだ行けるとか言うからこんな目に」
「ランとサーリアも納得しただろ」
言い合いを始めたが、宥めて自己紹介をした。
戦士の人がゲオル、シーフの人がラン、魔道士の人がサーリアというらしい。まだ冒険者になって日が浅く、ゴブリン退治の依頼を受けてやってきたそうだが、深入りした結果あの群れに遭遇したらしい。
そして、逃げていたら俺達を見つけて、巻き込まないように離れようとしてくれたみたいだ。いい人達みたいで安心した。
「恩人がいて逃げ道はあってたみたいどけど、ゲオルにも困ったもんだね。あたた」
「命の恩人を見つけて人道的な行動をとろうとしたのは褒める」
「俺達のせいで他人を巻き込んだらダメだろ。助けるつもりが助けられたが」
気付いても揃って同じ意見だったのか、責任感が強い人達だな。
ランさんが怪我をしていたので、俺を通してミースに治してもらった。
「重ね重ねごめんね。ありがとう」
「いえ、大したことじゃないので」
「(悪いなミース、俺が使って感謝されているみたいにしてもらって)」
「(そんなこと気にする必要ありませんよ。練習で概念魔法使ってましたし、生命力は大事ですからね)」
そうか。素直に頼りにさせてもらおうかな。
「でも、回復使えるんだ。便利でいいなー」
「皆さんは使える人いないんですか?」
「そうなんだよー。サーリアが使えたら良かったんだけどねー」
「それは言わない約束」
「あはは、ゴメンゴメン。あと、ライク君、アリスちゃん、敬語を使わなくていいし、呼び捨てでいいよ。命の恩人だし」
「え、いいんですか?」
「うん。別に良い」
「俺も問題ない」
3人とも言うので、言葉に甘えることにした。
「なら、普通に喋らせてもらおうかな」
「私は、こちらの方が落ち着くのでこのままでいかせてください。申し訳ないです」
「いいよいいよ。無理にしてほしいわけじゃないから」
アリスはそう簡単に気軽になるわけないか。
「それで、ラン達はこれからどうするんだ?」
「うーん、もうちょっと狩っておきたかったんだけど……あれ? 魔石ができてる!?」
「ほんと、まだあまり狩ってなかったはず」
「俺も魔石ができてるぞ」
うん? 魔石ってなんだ?
「(確か、魔力の塊だったと思いますが)」
察しがいいことに突っ込むのはもうやめるか。
その魔石ができると何かいけないのか?
「その魔石ってなんなんですか?」
「え? 知らないの?」
「聞いたことないけどな」
「色々な物に使われてるんだけど、余り知られていないのかな? 魔力を送れば動くってことしか知られてないのかな」
「ラン、そっちじゃない」
「ああ、それよりもライク達は冒険者じゃないのか?」
「まだ、なっていないな。今日これからギルドに行こうとしてたけど」
「ああ、そうなんだ……悪いことしちゃったかな」
「かも」
「だな」
うん? 何だ?
改めて聞くと、冒険者になったら、ある機器が渡されるらしい。その機器を装備した状態で、魔物をある程度倒すと魔石ができるそうだ。この時、倒した人が機器を装備していなかった場合、ほかの近くにいる装備者の方に集まったしまうらしい。そして、その魔石が高くも売れて、冒険者のランクを上げる目安にもなるみたいだ。
「悪いし、魔石渡すよ」
「いや、いいよ」
「ちゃんと受け取るべき、これができたのは私達の実力じゃない」
「いえ、サーリアさん達が今まで倒したものも、含まれているんですから受け取れませんよ」
「そんなことは考えなくていい。命の恩人への一部恩返しをさせてくれ」
「いやいや、ゲオル達の生活があるだろ」
「(良い人同士だとよくある光景ですね)」
少々言い合いが続いたが、借りとして困ったことがあったら助けてもらう約束をし、魔石はお金にして分けることにして、納得してもらった。
「本当にありがとうね。色々と」
「気にしなくていい。俺達も良い出会いができて良かったよ」
「私達には最高の出会い」
「そうだな。いい教訓にもなった」
そう言ってもらえるのは嬉しいもんだな。
「さて、それじゃあ目的地は同じギルドだし、一緒に行こうよ」
「別にいいぞ」
「私も問題はないです」
「なら行こ」
サーリアが、重い荷物を持とうとしているゲオルを放って、俺達を押して進もうとする。
「俺を置いて行こうとするな!」
「うるさい、ゲオルは荷物持ちに格下げ」
「俺は戦士だ!」
仲が良いなと思いつつ、街に戻り始めた。途中アリスが荷物を持つのを手伝うと、ゲオルが落ち込んでいた。アリスを相手にすると誰もが通る道だな、とゲオルに親近感がわいた。