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敵がいる

朝倉、ミノツナ、べナルロッドらを乗せたヘリが最後に女木島に到着した。

時間は午前7時24分。日が昇り始めたばかりでまだ寒さが残る朝。先に到着していた部隊は司令部をもう作り上げていた。武器もいつでも使用可能な状態でいつでも攻め込めるようだった。

しかし3000人が居るには少し狭い砂浜だ。

「全員が揃った所で作戦の確認だ」

ルゴ大佐が全員に呼びかけた。

「0番の居場所は一発で分かった。ここから直線で約20メートル先の洞窟にいる。ほぼ目の前だ」

大佐が指差したその先をみなは見やる。ここからは盛り上がった森しか見えないが、そこにあるのだろう。

「まずは偵察を出そうと思う。タェン中尉、ケラザ中尉、ファーンズワース少尉。ロッテドラ少尉」

「はっ」

呼ばれた4人の尉官が前に出る。

「貴官らは部下を率いて0番のいる洞窟を偵察せよ。危険と判断すれば直ちに帰還せよ。できるだけ洞窟や洞窟までの道のりを注意深く調査するのだ」

「ご命令、謹んでお受けします」

40名もの偵察隊は最初の15分は滞りなく任務を遂行していたものの、任務開始から40分後には偵察隊は壊滅に陥った。

タェン隊は3名生存、ケラザ隊は通信途絶、ファーンズワース隊は通信途絶、ロッテドラ隊は2名生存。という驚きの損傷率だった。

この生存というのも偵察隊が襲われた直後の事で救助された後に手遅れだったタェン隊の軍人が2名死亡した。ここでタェン中尉も死亡している。

数少ない生存者のロッテドラ少尉は複数の敵に襲われたと証言。0番単独出ないことが明らかになる。

「それでその0番以外について何かわかったか?」

比較的傷が浅かったロッテドラ少尉は大佐からの質問の受け答えもはっきりしていた。

「そいつらは人型でした。おそらく人間です。言葉は特に発しませんでした。ヨーヨーのような物は使わずナイフなどの近接武器で襲ってきました」

「それで偵察隊がこんな有り様に?」

「奴らの手際の良さは目を見張るものがありました。確実に戦闘訓練を受けた人間だと断言できます。でなければここまで被害は出ますまい」

通信途絶のケラザ隊とファーンズワース隊のことについて尋ねるとロッテドラ少尉は全滅したことを告げた。

「敵が複数、ロッテドラ少尉の証言では4名は最低いたことが判明した!作戦を一部変更する」

一度全ての部下を集めて再び作戦説明を行った。

「0番は出来る限り、生け捕りにしろっと言われたが、この状況では難しいと考える。そこで洞窟や森にミサイルと火を放つ。奴らを火あぶりにしてしまおう」

「しかし大佐」

作戦参謀のエドマー大尉が大佐に歩み寄った。

「火を放つと我々まで火の海に飲まれるのではないでしょうか、そのような手段に訴えずとも別の手段がありましょう」

「これなら確実だ。これ以上犠牲は出したくないしな。火攻めで奴らが苦しみ出て来る様はさぞ見ものであろうな」

「女木島の自然は数少ない前時代から保全されている生態系です。それを破壊することは恐れ多いことですぞ」

「それは分かっておる。ならば貴官には良い案を持っているとでもいうのか?」

「あります。神経麻痺ガスを洞窟周辺に流布させるのです。奴らが動けない内に一挙に占拠が可能になりましょう」

「だが、洞窟の中に撒くのならともかく、0番の取り巻き共にどうやってガスを盛るというのだ。奴らは穴の中に隠れているとはかぎらん」

「ですから、私共がオトリとなり直接奴らにガスを嗅がせて見せます」

「オトリだと・・・!正気か・・・?」

エドマー大尉は力強く頷いた。もう彼を止める事は出来ないだろう。

「よしどうせのオトリならせいぜい派手に行こう。誰か他にガスをまきに行ける奴はいるか!?」

大佐が幕僚たちを見渡すと志願者が30名にまで上った。

エドマー大尉、クラックパルス大尉、ムーンライト大尉、トゥーシー中尉、バンボルソン中尉、レオルス中尉らが指揮官となり、6つの隊が編成された。

ガス作戦開始から8分後にムーンライト隊が全滅した。ムーンライト大尉は悲痛な断末魔を司令部に響かせて戦慄させた。

ムーンライト隊に近くにいたトゥーシー隊もすぐに襲われてこれも全滅。恐るべき敵の強さに連隊は為す術もなくやられていった。

しかし、ここでクラックパルス隊が敵の一人にガスを吸わせる事に成功。敵はその場に倒れ込んで無力化された。

「やったぜ!ついに一人目をやったぞぉ!!」

パーナガガ軍曹は喜びの声をあげたが、それがすぐに悲鳴に変わった。

倒れたはずの敵が何事もなかったかのように起き上がり、バーナガガ軍曹の首筋を切り裂いたのだ。

指揮官クラックパルス大尉は重傷を負ったものの、全滅はまぬがれた。

ガスが効かない事を知った大佐はすぐに後退命令を出したが、レオルス隊から4割の犠牲、エドマー隊から3割の犠牲を出してしまった。

「奴らは何者だ・・・!普通の人間ではないのか・・・?」

大佐が頭を抱えて悩んでいる所に朝倉が現れた。

「大佐、敵は試作体の可能性があります」

「しかし・・・試作体は0番だけじゃないのか?」

「えぇ・・しかし0番は試作体を自ら作っている、としたら?」

「そんなっ・・・!今までの敵は試作体に改造された人間なのか・・!?」

「おそらく。でなければガスが効かないというのはありえませぬ」

「ぬぬ」

「大佐、我ら試作体が奴らを制圧してみせます。ご命令を」

「分かった。試作体の始末は試作体に任せる。君らに任せる」

敬礼して大佐の元から去った朝倉は待っていたミノツナとべナルロッドに会う。

「OKだった」

丸の指サインを出す朝倉。

「へへっ、最初から俺たちが出ていれば良かったのにな」

べナルロッドは指をぽきぽき鳴らし、やる気満々だ。

「フン、じゃあせいぜい活躍してやるか?朝倉」

「当然だ。0番の目的は分からんが必ず奴を跪かせてやる」

10月10日午後11時07分。多数の犠牲者は出しつつも、ついにA国側の試作体たちが本格的に動き出した。



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