5年を経て
体内暴走した田中がほぼ自滅に近い形で生命を消滅させてから5年が経った頃。
A国が新たな試作体を確認した。某国は15体の試作体以外に0番と呼ばれる試作体が存在することを白状したのだ。それが今A国の索敵に引っかかった。
0番の電波は非常に小さいもので見つけるのにも苦労した。0番も15の試作体にも知られていない存在だったが、彼らと同じように逃げ出したというのだ。
某国は田中を超える危険すぎる0番の存在をなかったことにしたかったが、A国に対処してほしいと最近泣きついてきたのだ。
0番討伐のためにかつての試作体の8番、12番、13番が緊急招集された。
彼らは一度はA国から逃げたものの、その力で協力して欲しいとせがまれて3年前に少佐待遇としてA国の指揮下に入ったのだ。
A国の作戦本部長ビオレット元帥が朝倉らの上司にあたる陸戦隊を束ねる総監のショベルスコップ中将に0番を廃滅させるか生け捕りせよと指令が下った。
ショベルスコップは試作体3人を麾下に持つルゴ大佐の連隊に出動を命じる。試作体を相手にするからにはA国の全戦力を差し向けても良いほどなのだが、未だ各地で発生する暴動の鎮圧に兵力を割いているのだ。
ただちにルゴ大佐は連隊の主要メンバーをA国作戦本部の司令部に招集した。
集まったのは副連隊長のハマチレンコン少佐、ミソグルト少佐、バルバハッハ大尉、クラーカー大尉、エドマー大尉、タェン中尉、レオルス中尉らのメンバーの他にもおなじみの彼らもそこにいた。
ミノツナ大尉、べナルロッド大尉、朝倉大尉である。試作体の彼らは大尉待遇で軍に正式に籍をおくことに決めたのだ。
尉官の総勢34名がルゴ連隊が作戦本部の司令部に集められた。
スクリーンの前に立つルゴ大佐が周りに立つ部下に説明を始める。
「貴官らに集まって貰ったのは他でもない。A国は某国の言う0番試作体というものの捜索活動を続けていた。そして本日、0番を発見した」
そこでスクリーンに0番の現在位置が地図上に赤く表示される。
「ここは瀬戸内海に浮かぶ島々の中の女木島だ。この島に微弱ながらも試作体特有の電波を受信した。0番はこの島に潜んでいると推測される」
そこでA国の作戦本部から女木島までの矢印のルートが示された。最短距離で。
「ここからでは0番の正確な位置は分からん。従って奴のあぶり出しは女木島に着き次第行うものとする」
そこでクラーカー大尉が質問を投げかけた。
「いきなり島に入るのですか?それは危険ではありませんか?上陸したと同時に奇襲を受ける可能性があります」
「クラーカー大尉の言うことも最もだが0番の電波はあまりにも弱い。ということはその体は弱りきっていると上層部が判断した。奇襲の心配はなかろう
A国から女木島まではおよそ50万キロ。長い旅が予想される。
「この作戦は現時点から開始される。では各自装備の準備にかかれ。2時間後に輸送ヘリで離陸する」
この作戦のために3000人もの兵士が動員されることに。しかしこの3000人は試作体のような不測の事態に対処できうるような特殊な訓練を積んできた部隊であり、田中討伐の時のような醜態は見せないはずである。
あれから5年が経って軍に3年在籍した朝倉、べナルロッド、ミノツナの3人も階級は大尉になり、直属の部下を持つようになった。
朝倉にはリッジストン准尉、ラニング曹長、ウドン曹長、ヨロツ軍曹ら30名の下士官。ミノツナとべナルロッドも同じ人数の直属の部下を持つ。
彼らに準備の指示を出して用意されるのも一苦労である。階級が上がるに連れて給料も上がって良かったが、疲れを感じる事を多く感じる事が増えた3人だった。
2時間後の5月3日午後9時00分、ルゴ連隊を乗せた輸送ヘリが作戦本部から離陸した。フライトはおよそ10時間。
この作戦がルゴ連隊が経験した戦いの中で最も苛烈で過酷なものになるとはまだ誰も予想だにしなかった。




