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009 言いがかりには対策を

  

 ひたすらがんばった結果、何とか《砲術LV.10》になったんだけどさ、大した召喚物は出てないんだよ。

 《誘導弾》《連鎖砲弾》ってさ、強力な兵器のように思えるだろうけど、誘導弾と言っても軌道修正ぐらいが関の山で、自動で対象を追ってはくれないんだ。

 しかも修正範囲が小さいから、気付いたら簡単に避けられてしまうんだ。

 威力は多少増えたけど、相変わらず大した威力じゃないし。

 んで、連鎖砲弾ってのはつまり、1発の弾が2発に分裂するだけの弾な訳でさ、これの使い道ってはっきり言ってヘイトを集めるぐらいなんだ。

 早い話が威力の無い攻撃を当てる事により、こっちを向かせる効果しかない。

 試しに角ウサギに撃ってみたんだけど、瀕死になったんだよ。

 一番弱い雑魚モブすら倒せないって、どうなっているんだよ、運営さんよ。

 レベル50でそんな攻撃しかやれない職とか、ちょっとひど過ぎるだろ。

 ちなみに角ウサギを即死させるには、至近距離で撃つ必要がありました。

 いくらノンアクティブだと言ってもさ、角ウサギの横っ腹に砲を当てて撃たないと即死しないってどう思うよ。

 そんな威力とか使える訳が無いだろ。

 そこまでして蛮族やらせたいのかよ、ちくせう。


 今、私は砲弾で魔物を討伐しています。

 一撃即死な方法を見つけたのです。

 ただこれ、凄く場所が限定されるんです。

 はっきり言うと崖の上から崖下の魔物を攻撃しているんです。


 こんなの投げ落とすのと変わらないぞぉぉぉ、ちくせう。


 いえ、投げ落とすほうが成功率が高いです。

 だってワインを抜くような音でバレてしまいますから。

 ただ、その音が聞こえて、馬鹿面で上を見る魔物に対しては効果が高いです。

 ゴブゴブ言うようなのとかは、音が聞こえるとそちらをまず見るんです。

 そうして攻撃が自分に近付いていると思えないのか、不思議そうにそれを見たまま潰れて死ぬんです。


 だけどそれなりに知恵のある魔物は違います。


 音に驚いて一目散なので、空振りに終わってしまうんです。

 そんな相手には砲を使わずにそのまま自由落下させましょう。

 誘導弾ならば多少の自由は効きますから、音さえしなければ倒す事が出来るようです。


 でもなぁ、そこまでして使うような武器じゃ無いんだよな。


 これをやっているのはひとえに、階級称号の蛮族が消えないかと期待しての事なんだけどさ、いくらやっても変わらないぞ。

 それどころかまたしても警告が来てしまう。

 街道の脇の崖の上からの攻撃だったんだけど、目の前のモンスターを攻撃しようとしたら、いきなり上空からの攻撃で倒されたという苦情が出たとの事だけど、はっきり言って同じプレイヤーからの苦情じゃないらしい。

 この世界ではNPCの冒険者も居て、中には貴族の子息の冒険者も居るようで、無礼者とか何とか騒いでいるらしい。

 プレイヤーはこの世界の機構に混ざり込む形での参入なので、そういう階級の存在に逆らうとつまはじきになるらしい。


 もちろん、それも個人の自由なので、逆らっても構わない。


 ただし、その場合は盗賊扱いされたり、謀反人扱いされて討伐依頼が出されたりする。

 なのでそういう者達で構成されたギルドもちゃんとあって、初心者でうっかり逆らって困った人たちの支援なんかもしているとか。

 今回の警告はそのギルドからのものであり、このままでは拙い事になると書かれてあった。

 対処法としては、他の貴族からの擁護を頼んだり、国への陳情でかわす手もあるが、金で済ます方法もあるとの事。

 とにかく相手が相手なので、そのままにしておくのは拙いという話だった。


 参ったな。


 まさかそんな事になっているとは思わなかったけどさ、たかがモンスターの1匹ぐらいの事で苦情が出るとは思わなかった。

 ギルドのほうに問い合わせ、相手を教えてもらった後、その屋敷に出向いてみる事にした。


「貴様があの時の犯人か」


 犯人とか言ってるよ、この子。


「あのモンスターが欲しかったのか? 」

「俺様の獲物を横取りしたのは、貴様かと聞いておるのだ」

「どんなモンスターだっけ」

「こちらの質問に答えぬか、この無礼者めが」

「だからどんなモンスターを横取りしたのか、言わないと分からないだろ」


 どうにも話が理解出来ないんだけど、それからも問答の結果、彼の言いたい事が何となく分かって来た。

 早い話がオレを特定出来てなくて、何か不思議な攻撃で獲物の横取りをした奴が居たって事らしい。


 まあそうだよな。


 オレは崖の上に居たんだし、直接姿が見えていたはずもない。

 しかも攻撃したのは召喚された砲弾だし、対象に当たったら消えるに決まっている。

 ただ、状況判断で家来の人たちがその近くを捜索した結果、一番近くに居たオレを犯人に仕立て上げようとしただけの事らしい。

 それをギルドが察知しての警告だったらしく、何とも素早いというか親切というか。

 どちらにしても、犯人の特定が成されてないのなら、わざわざ特定させる必要も無かろうと、目撃者の振りしてやり過ごす事にした。


 崖の上で薬草採取をしていたら、でかい鳥が木の実を掴んで上空から落として割って中身を食べていた。

 そのうちに目標を誤ったのか、木の実が崖の下に落ちて行き、その鳥は崖下に人間が居るのを知ったのか、その木の実の事を諦めてまた次の木の実を取りに行ったようだったって話しておいた。


 実際、そういう鳥の習性はこの世界にもあって、それで怪我をする人も居るらしい。

 でもまぁ、そういうのは間抜けの代名詞みたいになっていて、怪我人なのに笑い者になるって事で、表沙汰にする人も滅多に居ないとか。

 その関連で動物に被害を蒙った者達にも適用されてしまうようで、その辺りを突くと勢いが緩やかになった。

 どうにもこの世界は人間至上主義とはではいかないが、それなりの上位の存在みたいな認識になっていて、下位の存在からの不利益は避けられるのが当然というような意識になっていて、だからこそ危険なモンスターは排除しないと不利益を蒙る者達が出る為に、その予防の意味もあるらしい。

 特に貴族でそんな不利益は貴族社会ですぐに噂になってしまうので、よほどの事が無い限りは表沙汰にはしない様子。

 それを今回表沙汰にしようとした貴族の子弟が彼な訳で、そこの所を突いてみた訳だ。


 え、えらく詳しいって?


 対策ギルドに問い合わせたら、かわし方のレクチャーを受けてさ、その対策の中のひとつを使ったに過ぎないのさ。

 いやぁ、βからの専門ギルドは慣れているよな。

 もちろん正式サービスになってギルドも新たに結成し直したらしいんだけど、培ったノウハウは継続になっている訳で、今回のレクチャーもその経験に基づいたしっかりしたものだった。


 ありがとうございます。

 

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