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008 人騒がせな練習野郎

  

 結局、どんな場所に行っても音は響くようで、遥か沖合いの無人島で練習する羽目になる。

 それと言うのもあるクエストでそんな場所に行く事になり、これ幸いとクエストそっちのけで練習をしていたからである。

 本来ならその無人島で謎を解いて終わりになるんだけど、その謎を解いて元の場所に戻る魔法陣を放置してひたすらひたすら練習していたんだ。


 ここってさ、大陸から相当に離れた場所って設定になっていてさ、騎獣のワイバーンですら来れないと言われるぐらいの場所なんだ。

 まさに絶海の孤島って感じだからさ、練習するには持ってこいだと思ったんだ。

 だからさ、島に来る直前にログアウト休憩を経て、連続ログイン時間限界まで練習をしてやろうと思ったんだ。


 ちなみにこのゲームは10倍速って事になっているらしい。


 なので1日24時間が240時間になるシステムなのは良いけど、リアル3時間が連続ログイン時間となっている。

 だから目一杯やっても中の時間で連続30時間が限界になっているので、その時間を有効利用しようと思ったんだ。

 本当ならもっと連続でやりたいんだけど、生憎とこのシステムは脳に負担が掛かるらしい。

 なのでリアル3時間の体験でかなり疲れるらしく、一度ログアウトしての休憩を推奨されている。

 もっとも、大抵の奴はそれを単なるトイレ休憩のようにしか思っておらず、軽い食事を摂ったりする人も居るらしい。

 それでも勤め人はそれを区切りにしているようで、だからこそ大抵の人のプレイ時間はリアル3時間単位になっている。


 オレは連続でやるけどさ。


 島の外れの魔法陣の傍らの案内人は、役目を果たせぬまま独り寂しく待っていた。

 普通ならクエストで謎を解いたプレイヤーがすぐに訪れるので、少し会話して魔法陣に導き、お疲れ様の挨拶で終わる役割。

 彼女はその仕事は片手間であり、本来の仕事は別にあった。


 ちょっとリアルなこの世界では、例えNPCと言えどもメシを食わねばならず、夜は眠らないといけない。

 なので魔法陣の傍には管理小屋があり、そこで仮眠を取ったり食事をしたり出来るようになってはいた。

 だが彼女がそれを使う事は本来無く、クエストクリアの連絡を受けて魔法陣で島に飛び、役目を果たしてすぐに戻っていた。


 なのに今回はその小屋のありがたみを知る羽目になる。


 ちなみに彼女の本来の仕事とは、別のクエストでの案内人になっており、交代要員も用意されていない事から、そちらのクエストが

 進行不可能になっていた。

 たまたまそのクエストをやっていたあるパーティは、訪れるはずの案内人がいつまで経っても来ない為、密林の中で立ち往生していた。


(ちょっとこれ、どうなってんのよ)

(おかしいですね。現れるはずなんですけど)

(何か抜けがあんじゃねーのか)

(そんなはずはないんですけどね)

(どうするよ、このままここで待つのかよ)

(食料は現地調達だから良いとして、周辺での狩りもいい加減飽きましたね)

(もう20時間だぞ。とっとと終わらせて次に行く予定が、こんな所でレベリングの予定じゃなかったってのによ)

(そうですよね。ここの素材もそこまで珍しい訳では無いですし、なによりこの湿気は銃の天敵、困ります)

(あああ、もう整備油が残り少ないよ。弾もだけどさ)

(時々拭いてないと、錆びたら耐久値が落ちて、修理代がかさむんだよね)

(そんな余計な出費とか、勘弁してくれよな)

(ああ、貴重なログイン時間も残り9時間ちょっとか。勤め人にはきついぜ)

(そうですよね)

(念の為にGMメールはやっといたぞ)

(GJ!)


 小屋に連絡装置が無かった事がまず第一の失態。

 そして交代要員を用意してなかった事が第二の失態。

 共に運営の想定外な事態なゆえに、プレイヤーの行動を止められずにいた。


 彼女は彼女で順番に仕事をこなすように言われているので、ひたすら島で待っていた。

 彼女の耳に聞こえるのは、ワインを開けるような音。

 それが何なのか分からないまま、段々とそれが恐ろしく思えるようになる。

 まさかプレイヤーが練習しているなどとは思いもよらず、未知のモンスターが歩いている音のようにも思え、ついに彼女は小屋から出られなくなっていた。


(これ、どうします? )

(参ったな。交代要員を送るか)

(クエスト中にあんな事をされるのは想定して無かったですけど、あれも困りますよね)

(いや、しかし、クエストを途中で放棄しても、いかんとは言えんぞ)

(今回の場合は達成後の帰還ルーチンの延長だからたちが悪いんですよ。単に放棄ならそこで終わりと判断してくれますが、帰還案内をうっかり放棄すると、プレイヤーは帰れなくなります。その場合、NPCによるプレイヤーの殺害にも近しい禁則事項に抵触するので、彼女は間違ってもその場を離れる事は出来ないのです)

(やれやれ、何とか行ってくれるようになったよ)

(誰に頼んだんですか? )

(竜神の従者なんだけど、謝礼を寄こせと言われてさぁ、秘蔵の酒を出す羽目になって参ったよ)

(え、その酒ってまさか)

(悪いな、そういう訳で酒盛りは中止だ)

(そんなぁ、やっと手に入れた酒でしょ、あれ)

(まあまあ、提携が巧く行けばいくらでも手に入れる事が出来るようになるんだし、先の楽しみにしておけば良いさ)

(本当に巧く行くんですかね)

(そいつは上の交渉次第だな)

(ミックスワールドですか、面白い事を考えるものですが、早い話が合併ですよね)

(まあ、あっちも古参ゲームなんだし、新しい風を入れたいと思うなら、うちとの提携は受けてくれると思うよ)

(そう願いたいですね。こちらの生産システムでは、あんな美味い酒は手に入らないでしょうから)

(ホタルイカの佃煮なら残ってるぞ)

(仕方がありませんね、今回はそれでお茶会にしますか)

(そうだなぁ)


 きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん きゅぽん~ひゅるる~どぼん 


 《警告します。後10分でクエスト放棄とみなし、スタート地点への強制転移を開始します》


 ほわっ?


 もうクエストクリアして帰るだけなのに、放棄って冗談じゃないぞ。

 なんだよ、そんなの聞いてなかったってのに、いきなり仕様変更かよ。

 ちぇ、いい場所見つけたと思ったのにな。


 まあいいや。


 さてと、魔法陣はどっちだったかな。

  

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