005 逆恨みの結末
嫌な奴は何処にだって居るようです。
それからも毎日ログインしての狩りは順調に進み、階級と召喚レベルは順調に上がっていった。
他のスキルは全然上がらないのが残念だけど、それはガンマンになれてからの話だろう。
運営の遊び心はどうやら留まる所を知らないようで、砲弾の次は強化ロープやら連結器具だった。
つまりさ、紐より強い強化ロープが召喚出来るようになり、接続部の補強のつもりか連結器具まで召喚出来るようになったんだけど、どうしても蛮族路線でやれと言うんだな。
砲弾と強化ロープとカラビナみたいなのを召喚し、それぞれを繋いで蛮族の道具の完成だ。
さて、今日もやりまっかいな。
そう思っていたんだけど、攻略組がエリアボスを倒すらしく、何故かリアフレからの誘いが入った。
あいつ、対人戦オンリーかと思ったら、攻略もやってんのな。
「本当にオレが参加しても良いのか? 」
「お前、あのスタイルでやってんだろ。ならさ、多分有効だと思うんだ」
「あんまり広めたくないんだけどな」
「頼むよ、人数がヤバいらしくてよ」
「へいへい」
まあ、言われたら仕方が無いよな。
「おいおい、地雷職が居るぞ」
「ほー、こりゃ珍しいな」
「お前な、そんな地雷職で攻略に参加とか舐めてんのかよ」
「おいおい、そんな事を言ってやるなよな」
「だってそうだろうが。まともに当たらないし威力も無いとか、寄生目当て確実だろ」
「黙って聞いていれば随分だな、アンタ」
「あんだよ、文句あんのかよ、地雷職」
「レベルいくつだ」
「聞いて驚け、18だぜ」
「うわ、驚いた」
「ふふん、5日目にしてこのレベルはトップクラスだぜ」
18とか2日目に到達していたからマジに驚いた訳で、今は32なんだよな。
「それで? 地雷職のてめぇはいくつだ。2か? 3か? 」
「逆にして両方並べたぐらいだ」
「おいおい、アンタ、マジか」
「あんだよ、どういう意味だよ」
「うわ、マジだ、この人」
部分公開を使い、階級だけオープンにすると周囲が賑やかになった。
通称は武士の情けで非公開に出来るようでなによりだ。
それが無かったら泣き寝入り覚悟だったんだけどな。
「嘘だろ、地雷職がなんでそんな、ありえねぇ」
地雷地雷と煩ぇな、こいつ。
初対面でいきなり地雷職呼ばわりして上から目線だった野郎は、それから話しかける事はなかったものの、どうにも雰囲気がよろしくない。
その他の面々は高レベルの秘訣なんかを聞いて来るけど、あんまり言いたくないけど仕方が無いよな。
どのみち狩りになったらバレる手法な訳で、召喚して組んでおいた道具を見せる事になる。
「おいおい、召喚レベルが上がるとそんな事になるのかよ」
「けどさ、これはもうガンマンじゃないよな」
「確かに。だけど序盤のレベ上げには有効だろうから、後々ガンマンになるのならお得かもな」
「まあなぁ、5日目でレベル32とか、他の職じゃ絶対に無理だしな」
オレは遊撃からのチャンスを見ての絡め取りの役割を担い、揃ってエリアボス討伐に出発した。
結果的にそれは成功し、比較的楽に倒せたと好評だったけど、もう呼ばないで欲しいな。
そんな訳で円満のうちに解散になったんだけど、地雷野郎のちょっかいが始まった。
ソロ狩場に向かうのに後ろから付いて来る奴。
何をするのか朧気に分かるけど、赤ネになってまでオレを貶めたいのか?
さて、そう言う事なら防護対策をしますかね。
動きが鈍くなるのは致命的と、エリアボス討伐でも使わなかった防具だけど、PK対策の防具は用意してあるんだよ。
襲撃のトマス推奨の、完全防備って名前のアイテムがさ。
木陰に入ってそいつを装着し、歩いて行くと後ろから発射音。
バカめ。
《討伐許可対象から攻撃を受けました。反撃しますか? 》
当然だ。
振り向いて道具を投げて絡ませるだけで大ダメージになったようだけど、そのまま殺すから心配するな。
「ぐぅぅぅ、この、野郎、いきなりPKかよ、さすがは、地雷職、だな」
既にPK認定されているのに気付いて無いのか、貶める気満々な台詞を吐いているが、ログの公開は速攻でやるから問題ないはずだ。
散々わめくのを無視して、鈍器でガンガン殴ればそのうち光の柱になって消える奴。
さてと、残留アイテムは何を落としたかな……あれっ?
プレイヤーがフィールドでHPが尽きると何かしらロストするんだけど、それはPKで殺られても変わらない。
それは反撃を食らったPK職も同じなので、あいつの遺留品を確保した。
それは良いんだけど、あいつ、運が無いのかねぇ。
発掘銃のロストとか、あんまり聞いた事が無いんだけど、初のPKで反撃食らってメイン武器のロストとか、可哀想な奴。
普通は回復薬とか銃弾がロストするもんだけどな。
さてと、召喚士じゃ戦利品は使えないから店売り確定だな。
念の為に型番をリアフレにメールしてみると、欲しいから売ってくれと言われた。
その時に地雷野郎とのやりとりと事の顛末、ログを見せて攻略組の連中に伝えてくれと頼んでおいた。
「ゲイルか、くっくっくっ、オレの獲物だな」
「メイン武器をいきなりロストした、ビギナーPKをあんまり苛めてやるなよな」
「正義は勝つ」
「聞いているのかよ」
「心配するな。引退に追い込んでやる」
「そこまでする事は無いだろ」
「卑怯者にゲームをする資格は無い」
「お前、そのうち勇者って通称になるかもな」
「おお、いいなそれ」
~☆~★~☆
(あいつ、いきなりフィールドで襲って来てよ)
(お前さ、そんな赤いネームで何言ってんだ)
(え、嘘、だろ。反撃しようとしただけなのに、何で)
(悪いが、事の顛末は既に攻略組はみんな知っている。ログも公開されていてな、てめぇからの攻撃ってのはバレてんだよ、この卑怯者が)
(そ、そんな)
(別にさ、ロールとしてのPKなら攻略に参加するのも良いさ。けど、てめぇは違うだろ。他人を貶めてレベル越されてたぐらいで逆恨みして、いきなり襲って反撃を食らい、挙句にそいつを貶めようとする卑怯者だ。そんな奴、攻略組に用はねぇ。やりたいなら1人でやるんだな)
(くそぅ、あの野郎っ)
(まだ逆恨みする気か、呆れた奴だ)
(このままじゃ居られるかよ)
(そう言う事なら仕方が無ぇな)
《……ああ、だから街から出たら好きに狩れ……情報に感謝する》
(元のよしみで通報は無しにしてやろうと思ったが、反省の色も無いとなればもう容赦はしない。これからも見かけたらPKKに通報だな)
狩りが終わって街に戻ったら、地雷野郎に絡まれて、そのままGMコールに及んだ結果、姿が消えてそれっきりになった。
もしかしたらしばらくアカウント停止になったのかも知れないけど、あんな奴はどうでも良い。
さて、どうにも蛮族から逃れられないようだけど、これからどうしようかねぇ。
名前 カイト
職業 召喚士
階級 蛮族LV.33
汎用スキル 《銃撃LV.1》《装填LV.1》《命中LV.1》《威力LV.1》《射程LV.1》
職業スキル 《召喚LV.14》
召喚リスト
『初期銃』『砲弾』『強化ロープ』『連結器具』
自業自得な彼の運命やいかに。