004 まだ続くのかよ
バレるまでは内緒にしようと思う『蛮族』の通称。
念の為に運営に問い合わせたんだけど、面白いだろ? って言われてもさ。
君の為にわざわざ設定したんだよ、とか言われても嬉しくねぇぇぇ。
どうやらここの運営は遊び心満載のようで、オレは彼らに遊ばれているように思えてならない。
変えてくれと言っても無駄みたいなので、諦めて隠蔽に精を出す事にした。
2日目もやる事は似たような事。
ただし獲物は更にランクアップする事になる。
途中で色々な魔物を狩りながら先に進んでいるうちに、いくつかレベルが上がってホーマスに乗れるようになる。
なので従獣用のおやつ……まあ、エサなんだけど、それを食わせると従順になり、乗せてくれるようになる。
とは言うものの、彼らとの付き合いは1日だけの物なので、村に戻ったらさようならになる。
それでも何日か同じ個体を馴致していると、馴染みと言うのか、村近くで過ごすようになり、呼べばすぐにやって来るようになる。
でもさ、元は魔物だから知らないプレイヤーに狩られるんだよね。
βで馴染んだホーマスがさ、呼んでも来なかった時は少し悲しかったよ。
ああ、誰かに狩られちまったんだなって。
だから皆も従獣登録がやれるようにしてくれって要望を出していたはずなのに、実装してくれてないのが残念だ。
もっとも、その対策は考えてある。
ホーマスの首に布を巻き付け、そこに名前を書いておく。
『カイトの馬』
さて、これで狩られないと良いけどね。
たっぷりエサをやってブラシをかけて、すっかり馴染んだようなので今日はひとまず放流しておく。
これで時々エサをやっていれば従獣状態になってくれるはずで、そうなれば遠出がやれる事になる。
今日はオーガスを狩る予定だけど、遠出がやれるならもっと他の魔物もいけるようになる。
オーガス……これってさ、オークとオーガが混ざったような魔物なんだ。
つまりさ、オークの大きさのオーガって感じでさ、最初はオーガの子供かと思っていたんだ。
だけどこういう種族らしくて、こいつの角が生産職には人気の品になっていた。
後は肉はそのままでは固くて食えなくて、料理集団も苦心の末に調理法を確立させたんだけど、重要なのは肉じゃなくて内臓だったんだ。
薬師御用達のその素材は、色々な薬に使われるようで、序盤では中々手に入らない事から獲物にしようと決めた訳だ。
それが何かと言うのが話題になっていたけど、公式では明かされる事は無かった。
その素材の名前は『ソウセイ』って言うんだけど、何の事やら分からないよな。
だけどさ、どうやら精巣のアナグラムらしくてさ、滋養強壮の効果があるらしいんだ。
そりゃ確かにリアルでもその手の薬はあるけどさ、まさか魔物の精巣が素材に使われるとはね。
だから恐らく倫理か何かでチェックが入り、アナグラムにして誤魔化したんじゃないかと言うのが皆の見解だ。
こいつらさ、足に絡めてやったらそれを解こうと必死になるんだよ、無防備になってさ。
だから後頭部を鈍器でガツンとやればさ、そのまま脳震盪になるようで気絶すると。
さて、サクサク狩っていきましょう。
こいつらの解体は後にしないと、悠長に解体しながらの狩りはやれないんだ。
ホーマスはノンアクティブだから良かったけど、こいつらはアクティブだから、うっかり解体に夢中になっていたら後ろから逆にガツンと殺られてしまう。
レベルも上がってインベントリの容量も増え、キープもして中は空っぽだから余裕があるしね。
狩ってはそのままインベントリってのを繰り返し、レベルは遂に10台後半に突入する。
いやはや、やけにレベルアップが早いな。
だけど上がるのは召喚だけってのが空しいけど、これっていつかは普通のガンマンになれたりするのかな。
召喚はLV.5になっているけど、相変わらずビギナー銃2丁召喚するのが精々のようだしさ。
そのうちにまたレベルが上がり、召喚レベルも上がったとアナウンスが入る。
召喚リストの更新もあったようで、期待して開いてみると……『砲弾』って何だぁぁぁぁ。
しかもさ、ご丁寧に取っ手が付いた丸い丸い、砲丸のような砲弾を2つ召喚出来るのは良いけどさ、これってビギナー銃をこれに変えなさいって言われているようなものじゃないかよ。
蛮族からはまだ卒業出来ないのかよ、運営さーん。
ちくせう。
そりゃ確かに威力も上がって狩りは快適になったけどさ、良いのかよ、こんなゲームでこんな狩りのスタイルでさ。
ゴーレムだって足に絡めてやれば倒壊して、そのまま粉砕すれば良いだけのお手軽な狩りは良いけどさ、どうにもガンマンな世界観に合わないよな。
オレだけ他のゲームをやっている気分になるから、どうしてもソロでやるしか無いんだよ。
そんな訳で2日目の成果はレベル18で召喚LV.7になりました。
「あらあら、もうオーガスを狩るの? 凄いわね」
「角だけで良かったんだよね」
「アレ、薬師に渡してくれるかしら」
「もう需要が? 」
「どうやらアレ以外の素材が大量に集まったみたいでさ、アレが採れるようになるのをひたすら待っているみたいなのよ」
「んじゃ28体分全部渡しておくか」
「よくそんなに狩れるわね。今の武器のレベルじゃ到底狩れないわよ」
「絡めて倒して殴り殺すだけの簡単なお仕事さ」
「あっはは、さすがは蛮族ね」
「その通称は極秘だ」
「え、まさか、そうなの? 」
「運営の遊び心。専用でも嬉しくない」
「あっはは、それはそうだろうけど、そういうのも面白いわね」
「本当に勘弁して欲しいよ」
「あっはは」
角はヤオヅさんに卸し、肉は料理集団に卸し、アレは薬師に卸して2日目は終了する。
名前 カイト
職業 召喚士
階級 蛮族LV.18
汎用スキル 《銃撃LV.1》《装填LV.1》《命中LV.1》《威力LV.1》《射程LV.1》
職業スキル 《召喚LV.7》
召喚リスト
『初期銃』『砲弾』
早くガンマンになりたい……