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002 スタートダッシュ

 

 さてさて、勝手知ったる広場からとっとと移動して、廃材置き場に行かないとな。

 正式オープンからの人達は、広場でコミュニケーションに忙しいけど、オレ達β組は速やかに行動するはずだ。

 だってさ、廃材の程度は雲泥でさ、握り易くて殴り易い武器になりそうなのってあんまり無いんだよ。

 後は弾に加工出来る廃材も重要でさ、今のこの時期を逃すと外の廃材を発掘しなくてはならないんだ。

 そんな訳でここ、はじまりの村の廃材置き場には、もう数人の人影が見える。

 がさごそとそれらしき場所で見ていくと、下のほうに埋まっている木の箱。


 これはもしかして……


 やった、これはちょっとした幸運かな。

 そろりとインベントリに収納して、何食わぬ顔をして廃材を漁る。

 木の箱はどうやら序盤の特典のような位置取りとして、そこかしこから出てきた。

 他の奴らもそれを見つけ、こっそりとインベントリに入れているようだ。


 うん、誰も騒がないのな。


 静かに速やかにポッポナイナイする面々ってのも何だけど、あの中には火薬が入っているんだ。

 もちろん外の廃材を発掘しても火薬はたまに出て来るけど、序盤のこの廃材置き場での発掘はチュートリアルも兼ねているようでかなり確率が高い。

 弾に加工出来る廃材と火薬の木箱を持てるだけインベントリに入れた後は、得物になりそうな非金属な棒を2本とナイフになりそうな非金属な何かの破片を手に入れた。

 生産スキルが無くてもこれぐらいの細工はやれるし、やっていればスキルは勝手に生えて来る。

 そんな訳でβでもやっていた、廃材からナイフもどきを造る工程をやっていく。

 どのみちすぐ切れなくなるから替刃になりそうな廃材刃もかなり拵え、ポシェットの中に入れておく。


 インベントリとは別のこのポシェットは本来、銃弾や回復薬を入れる為の物なんだけど、そこに替え刃を入れた訳だ。

 この手の廃材から作られたナイフの刃は、すぐに切れなくなる代わりによく切れるんだ。

 魔物の解体にはこいつが最善で、だからこそ可能な限り拵えておいたって訳。


「おま、もう造ったのか」

「早い物勝ちだよ、君」

「な、な、な、その刃、少し分けてくれよ。もう無いんだよ、ここらには」

「造るのが面倒なだけだろ。ほれ、こいつをやろう」

「尻に敷いていたのかよ、この野郎。無いと思ったら」


 ああ、この辺りのナイフの刃になりそうなのは集めて尻に敷き、その上で作業していたんだよ、悪いな。


「キープしておいたオレに何て言い草だ」

「あ……そっか、悪い」


 相変わらず素直な奴だ。

 冗談が通じないのに最初は焦ったけど、慣れたら実にからかい甲斐が、クククッ。


「で、職は何にしたんだ」

「ああ、βと変わらず襲撃職さ」

「そんなに対人戦が楽しいかねぇ」

「最高だぜ。って、お前、あれからキャラ交換しなかったのか」

「G(ゴルと言う名の通貨単位)が惜しかったんだ」

「くっくっくっ、しっかしよぅ、それで戦えるのか? 」

「例の方式でやるさ」

「やっぱりお前は蛮族だな」

「ほっとけよ」

「くっくっくっ」


 蛮族……


 そう、最初は1つの召喚で紐を付けて振り回していたんだけど、召喚レベルの上昇と共に2つ召喚が可能になってからは2つの銃を紐で繋ぎ、獲物に投げて足に巻き付けて捕らえて、鈍器で殴り殺すって方式で狩りをしていたところからそう呼ばれたものだ。

 すっかり違うゲームのような狩りの仕方を見ていた他の同類達も、一時は真似もしていたみたいだけどやはり銃を撃ちたいとキャラ交換していった。


 皆が角ウサギを狩る為に草原に行くのとは別に、オレは反対側の草原に向かう。


 いきなりは狩れないはずの馬のような魔物を狩る為である。

 もちろん、紐は購入済みであり《召喚LV.4》では2丁の銃の召喚はやれている。

 歩きながら2つの銃を紐で繋ぎ、手に提げて門を潜る。

 キャラレベルは下がったけど、やっていた事はやれるはずだ。

 そんな訳で獲物を発見して速やかに狩りの始まりだ。


 軽い挑発で突進してくる獲物に対し、回避しながら投擲する。

 慣れた手腕のせいか、一発で足に巻き付き、そのまま転倒してもがいている。

 後頭部を鈍器で殴り付け、脳震盪を誘発させて首の血脈を断ち、血抜きをしておく。


 まずは一匹。


 おっと、いきなりレベルアップか。

 さすがに序盤からこんなのを狩ると即座に上がるか。

 良かった、レベルが上がらないと獲物をインベントリに入れられなかったんだ。

 血抜きをしていた獲物を解体して次の獲物を探して歩く。

 さすがにレベルアップの恩恵か、少し回避が楽になっているようで、狩りはスムーズに進行していく。


 一応全年齢対応なこのゲームだけど、VRゲーム自体の可能年齢のせいでリアル小学生は居ないはずだ。

 この国ではVRは15才になってからと言われていて、それ未満で内緒で潜る奴は成り済ましをしているとか。

 でもさ、発覚したらそいつの親は常識が無いと揶揄される事になり、何かの障害が発生しても大抵自己責任になってしまう。


 そう、運営が明らかに悪くても、未満での参加に勝ち目は無いんだ。


 そこまでして子供を参加させようって親も滅多に居ないらしく、通常は15才を越した者達で構成されている。

 そんな訳で獲物の解体も少しグロっぽい表現になっているけど、これも自動解体の設定もやれはする。

 つまり、自動解体の設定にすれば、獲物を倒したら自動で解体してくれてインベントリに収納されるんだ。


 ただその場合、1つの獲物から1つの部位が精々なので、こうしてノーマル解体をやっている。


 ノーマル解体とは言うものの、相当に簡略化されているのに、この手間すら惜しむ連中が居るのも確かだ。

 それはガチ勢と言われる攻略組の連中だけど、彼らは狩るのがメインで素材はそのまま店売りするらしい。

 レア物とかもノーマル解体で出る事が殆どなので、攻略組の素材には大した物が無く、ノーマル解体の素材が喜ばれるのは言うまでもない。


 ナイフを突き立てるとつらつらと皮が剥げていく。


 そうして肉の部位もいくつかに分かれてインベントリに入っていく。

 一匹の獲物から、皮と肉、それに角や牙、蹄や尻尾などが得られるのがノーマル解体の旨みだ。

 そんな訳で獲物を狩っては解体しながら、初日の狩りでレベルがいきなり7つも上がってしまったのである。


 β初日では2にするのがやっとだったのにな。

 

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