表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「冒険者ユーリ」の世界にやって来ました  作者: yamaki
第二章 システムとアーカイブ編
68/97

2. 次のイベントへ


 神の神殿、それは人里離れた小高い丘の上に存在していた。

 ファンタジー世界らしく認識障害の魔法やら人払いの魔法やらで隔離された遺跡は、完全に外界から隔離された異界と言って良かった。

 シャンやフリーダと言う天才・奇才の協力で在り処を推測し、此処にあるという前提で執拗に探索しなければ決して見付けられなかっただろう。

 流石はこの世界で長年の間、神の武具と同様に伝説上の存在でしか無かった古代の遺跡様である。

 そんな遺跡から少し離れた場所にフリーダの伝手で集められた、臨時の遺跡発掘チームの拠点となる仮設住宅が設置されていた。


「…グラァァァァ!!」

「うわっ、たつお!! 待て、待て待てま…、あぁぁぁぁっ!!」


 無事に神の神殿の最奥部まで到達した克洋とシャンは、正反対の表情を浮かべながら拠点へと戻ってきた。

 神の神殿の存在を証明出来た事にご満悦な考古学者シャン、お目当ての品が手に入らなかったショックから未だに回復していない克洋。

 そんな対象的な二人を最初に出迎えたのは、空から急襲してきた馬ほどの体格のある白色のドラゴンである。

 この一年で成長した克洋の飼いドラゴン、たつおは昔のように主の体にじゃれつくために空中よりダイブして来たのだ。

 しかし子犬サイズの昔ならいざしらず、現在のたつおにそんな真似をされては克洋の体が持たない。

 慌てて静止の声を掛けるがた既に勢いが止められないのか、そのまま克洋は白いドラゴンに押し潰されてしまう。


「よう、その様子だと上手くいった見たいだな」

「パーティーのメンバーを置いて二人だけで行くなんて、よくそんな無茶が上手く言ったわね。

 これもフリーダ様のお弟子様の力と言う奴かしら…」


 一足早く主の下に向かったたつおに続いて現れたのは、ララとアルフォンスとバカップル冒険者たちだ。

 キマイラからの傷が癒えて冒険者として再開した両名を、克洋が神の武具探索の道連れとして誘ったのである。

 この一年の間、克洋はこの場に居るメンバーと共に神の武具を求めて旅を続けていた。

 しかし今回の神の神殿の探索では、たつおとこの二名の冒険者たちは拠点に留守番となっていた。

 遺跡内は凶悪なトラップで幾つも設置されており、正攻法に攻略をしようと思ったら時間がかかり過ぎる。

 ユーリたちの卒業試験まで時間がない事から、人数を絞った上で克洋の転移魔法(テレポート)でゴリ押す戦法に切り替えたのだ。

 幾多の殺人トラップや兵装を克洋の転移魔法(テレポート)で無理やり潜り抜けて、克洋はシャンと共に最奥部に到着したのである。


「はい、無事に最奥部に到達し、この遺跡があの伝説の神の神殿であることが確認できましたよ。

 これも全ては克洋氏のお陰です。 彼のフリーダ様の力添えによって、私は自身の仮説を実証することが出来たんです!

 これから本格的な調査を初めます、忙しくなりますよ!! ふふふふふふ…」

「凄いわ、本当に神の神殿を攻略しちゃうなんて、きっと私達パーティーの名前が歴史に残るわよ」

「これも俺たちの愛の力の賜物さ、ハニー!!」

「だ、誰か、こいつを除けて…」

「ギャウ、ギャウ!!」


 考古学者シャン、神の武具や神の神殿などの神話時代の遺産を専門に研究をしている若き異端者である。

 その辺の素人ならいざしらず、専門家にとってはそれらは代物は伝説上の存在でしか無く真面目に取り組むような物では無い。

 周囲の人間から変人扱いされながらも、シャンは決して諦める事無く孤独な研究を続けていた。

 原作では一時的にユーリたちの旅に同行して、神の武具と同レベルの伝説上のアイテムを見付ける事で自身の考えの正しさを証明した不屈の考古学者である。

 今回は克洋たちの存在によって神の神殿発見という形で、一足早くに彼女の苦労が報われたようだ。

 シャンたちは伝説の神の神殿の攻略に成功したことに対して、たつおの重みに苦しむ克洋に気付くこと無くそれぞれ喜びに浸るのだった。











 神の神殿部の最奥部にあった空の台座に懐から取り出した神の書を置いた瞬間、神殿内の空気が一変した。

 肌で感じ取れる程の敵意に満ちた気配が一瞬で消え去り、それを切欠にあの殺意だらけのトラップが発動しなくなったのである。

 言うなれば神の書を通して管理者権限を行使し、遺跡内の防衛機能を全て停止させたという所だろうか。

 外にいるアルフォンスたちの話によると、このときに遺跡に張り巡らされていた認識障害などの魔法も消え去ったらしい。

 その後は神の書を再び回収しても遺跡の状態は変わらず、とりあえず此処を自由に探索できるようになったようだ。


「風の神を奉る神殿、その核とも言える神の書が戻った事でこちらへの敵意が収まったんでしょうね。

 …神の書を持つ克洋氏を神殿の主として認めたのかしら?」

「…フリーダさんの指示だ。 これの存在は極力、周囲には漏らさない方がいいと言われていてな」

「フリーダ様の…、そうですか。 それなら仕方有りませんね…」


 やはり神の書の存在を黙っていた事が不満らしく、シャンは若干トゲのある態度を克洋に向けていた。

 そこで克洋は虎の威ならぬ大魔法使い様の名前を出すことで、神の書の存在を秘匿していた件を力技で誤魔化そうとする。

 流石にこの世界で名高いフリーダの効果は絶大であり、シャンは渋々と納得した素振りを見せた。


「…とりあえず此処の調査は任せるよ、俺は用事があるんで一足先に此処を離れるよ。

 悪いけどアルフォンスたちは暫く、この考古学者様の護衛に付いていてくれ」

「分かった、応援が来るまでは俺とハニーが彼女の面倒を見ているよ。

 応援の冒険者たちが来たら、そいつらとバトンタッチして俺たちもそっちに向かうよ」

「今回の一件はすぐに冒険者組合の耳に入るでしょうね。 きっと上の連中は慌てて、こっちに増援を寄越すわ」


 これ以上話していてもボロが出そうなので、克洋は当初の予定通りユーリたちの待つ冒険者学校へ向かおうとする。

 "冒険者ユーリ"の原作における次の一大イベント、ユーリたちの冒険者学校の卒業試験が迫っているのだ。

 呑気に遺跡の発掘に付き合っている訳にはいかず、一刻も早くユーリたちと合流しておいた方がいいだろう。

 克洋たちの後任となる冒険者については、これまたフリーダを通して既に手配をして貰っていた。

 アルフォンスたちを後任の冒険者たちが来るまでの繋ぎとして残して、克洋はこの場を離れようとする。


「ふむ…。 ではお主はこれから、ブレッシンの冒険者学校に向かうのだな」

椿つばき、来ていたのか? そのつもりだよ、これで漸くお前に那由多を紹介できるぞ」

「楽しみでござるよ、あの噂に聞く"殺人姫"と対面出来ると…」


 何時の間にか克洋たちの近くまで来ていた人物は、黒髪黒目に着物姿と言う那由多を思わせる少女だった。

 しかし女物の艶やかな着物を着こなす那由多とは対象的に、この少女のそれは男物の地味な着物である。

 容姿こそ那由多と同レベルの整った容姿であるが、その口調や乱切りのショートヘアが女性らしさを打ち消していた。

 椿つばき、那由多と同郷である東の国出身の武芸者であり、紆余曲折を経て克洋のパーティーに加入した少女である。

 克洋の妹となっている那由多に興味のあるらしい椿は、刀の柄に手を置きながら不敵な笑みを浮かべる。

 どうやら彼女は此処に残らずに、克洋と共に那由多が居る冒険者学校へ向かうつまりらしい。


「残念だけどお前はアルフォンスたちと一緒に後追いで合流だ。 悪いがたつおは一人乗りでね」

「っ!? 待て! 拙者を置いていくな!!」

「待つかよ! 行くぞ、たつお!!」

「グルルゥゥ!!」


 しかし残念な事に椿は克洋と共に、冒険者学校へと行くことは出来ない。

 何故ながら冒険者学校までの足として使う予定の克洋の愛竜、たつおは一人乗りであるからだ。

 主を載せて飛べる程に成長したたちおであるが、このドラゴンはまだまだ子供なのである。

 流石に人間二人を載せて長駆するのはたつおの負担が大きく、克洋は椿を置いて一人でいかざるを得ない。

 こちらを止めようとする椿を転移魔法(テレポート)で掻い潜り、克洋を載せたたつおは空へと消えていくのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ