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「冒険者ユーリ」の世界にやって来ました  作者: yamaki
第一章 冒険者学校一年目編
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3. 依頼


 先の決闘から一月ほど経った。

 転移魔法(テレポート)という反則技を使うことで決闘に勝利した克洋は、無事にララたちのパーティーの一員になることに成功していた。

 中堅に属する冒険者パーティーである彼らの仕事は様々である。

 オーソドックスな魔物退治は勿論、街を行き来する承認の護衛、魔物が出没する地域への薬草の採取。

 RPGで課せられるクエストそのままの仕事を克洋はこなしていった。

 今日の克洋たちの仕事は魔物の間引き、人を積極的に襲うタイプの魔物は一定数以上に繁殖すると軍勢となって人里に襲う修正がある。

 これを未然に防ぐため、定期的に巣に赴いて魔物の駆除を行うのも冒険者としての大切な仕事である。


「よし、手はず通り行くぞ!!」

「了解!!」

「あ、ああ…」

「ダーリン、怪我しないでね!!」


 オーク、それが今回の克洋たちの討伐対象となる魔物である。

 某大作ゲームなどの影響でオークと言えば豚鼻の魔物とイメージしがちであるが、実はオークは最初から豚鼻だった訳では無いらしい。

 それを踏襲しているかどうかは不明だが、冒険者ユーリに出てくるオークも豚鼻では無かった。

 オークの事を簡単に説明するならば、ゴブリンを一回りスケールアップした魔物と考えればいいだろう。

 小柄な子供程度のサイズであったゴブリンと違い、オークは成人男性程度のサイズをした人型の魔物である。

 サイズが増えた事で敏捷性が無くなった代わりに、オークはパワーファイターとしの特徴を持つようになっていた。

 その腕力はまさに人外の物で有り、普通の人間がオークと力比べをして勝てる見込みは無いだろう。

 力だけで無く耐久力に関しても、オークはゴブリンを上回っている。

 見た目だけはゴブリンと同じ緑色となっているオークの皮膚だが、その厚さはゴブリンを軽く超えており素人ではオークに傷を付ける事すら難しい。

 武装の面でもオークはゴブリンから進歩しており、何と木の棒の先に石を括りつける工夫をしているのだ。

 この原始的な武器もオークの腕力で振り回される事で、洒落にならない威力を発揮してしまう。


「おらおらおらっ!!」


 ゴブリンを上回る体格から生み出されるパワー、耐久性、武装、オークの討伐は駈け出しの冒険者でも苦労する案件である。

 しかしララたちのパーティーは、駆け出しを当に卒業した中堅クラスのパーティーだった。

 オークより一回り大きな巨体を持つアルフォンスは、その体格を最大限に活かしながら豪快にオークたちを蹴散らしていく。

 手に持った斧を振るう度にオークの体は砕けていき、その様はまるで暴風のようであった。


「喰らえ!!」


 アルフォンスに負けじと、ルリスもまたオークたちを次々に狩っていった。

 ルリスの持つ細身の剣が振られる度に、オークの体はまるでバターのように容易く切り裂かれていく。

 前述の通りオークの皮膚の硬さはゴブリンの比では無く、生半可な事では傷を追わせることが出来ない。

 見るかにパワータイプのアルフォンスなら兎も角、冒険者として鍛えているとは言え女性の腕力しか無いルリスが何故オークの体を貫くことが出来るのだろうか。

 その答えは彼女の剣の刀身に輝く光にあった。

 魔力付与エンチャント、それがルリスの冒険者としての武器である。

 彼女は自分の力の無さを魔力付与エンチャントで補う事で、冒険者として活躍していた。

 ルリスは魔力付与エンチャントの使い手としては熟練者と言っても過言では無く、魔力付与エンチャントによって強化された刃はオークをも容易く切り裂いた。


「ぃぃぃぃっっ!!」

「くっ…?!」


 そして克洋もまた、パーティーの一員としてオークと対面していた。

 刀を構えた克洋の前に、石の刃を括りつけた木製の槍を持つオークが対面する。

 オークは鼻息を荒くしながら、手に持った槍を我武者羅に突き出してきた。

 しかしオークの槍は当たることは無かった、槍が辿り着く寸前に克洋の姿が消えていたのだ。


「うぉぉぉぇ!!」

「っ、ぎゃぁあっ!!」


 転移魔法テレポートよって背後に回った克洋は、目の前にある背中目掛けて刀を突き刺した。

 ルリスほどの劇的な効果は無いが、魔力付与エンチャントによって強化された克洋の刀はどうにかオークの体を貫いた。

 止めを刺すため克洋はオークに刺さった刀を捻り、体内の内蔵を抉っていく。

 オークは断末魔を漏らしながら、その場に倒れ伏した。


「よしっ、止めを行くわよ!! 大地爆裂波(グランドストーム)


 攻撃魔法を得意とするララは発動まで一定以上の時間を要する欠点はある物の、人間が発動可能な最高峰のレベルである上級魔法を使うことが出来た。

 ララたちのパーティーメンバーの基本戦術は、アルフォンスやルリスが敵を足止めしている間にララが大砲の準備をする。

 そしてララの大砲によって、相手を一網打尽にすると言う物であった。

 克洋たちがオークを足止めしている間に、彼らの後方で準備していたララの上級魔法が発動する。

 魔法の発動ともに大地が隆起していき、残ったオークたちを飲み込んで行くでは無いか。

 オークたちは断末魔を上げながら次々に大地に挟み込まれて、その体を押しつぶされていく。

 やがて魔法の効果が切れて大地が元通りになった時、そこにはオークの肉塊のみが散らばる凄惨な光景が広がっていた。







「お前は転移魔法テレポートに頼りすぎだ。 その体たらくでは何時まで経っても剣は上達しないぞ」

「すいません…」


 仕事が終わり拠点としている街へ戻る道すがら、ルリスは克洋に対して今日のクエストに対する反省点を伝えていた。

 その言葉は些か棘が有るものだったが、これは決闘の意趣返しという訳では無く単に彼女の性格故の物だろう。

 ルリスの言う通り、今日の魔物の討伐で克洋は転移魔法テレポートを頻繁に使用して、魔物の背後から攻撃するという卑怯な戦法を撮り続けてしまった。

 相手が二足歩行の人型に近い魔物である事から、克洋はオークと刀を使って斬り合うのを恐れたのである。

 仕事自体は無事に達成したが、確かにこの戦いぶりでは克洋の刀の腕は何時まで経っても上達しないだろう。

 ルリスの言葉は言葉こそ強い物であるが、言っている事は一々正論で克洋は反論する術も無い。

 冒険者としての技量が皆無である克洋は、これまでのクエストでララたちの足を引っ張ることが多々あった。

 克洋は不甲斐ない自分に対して思う所があったらしく、肩を落として見るからに落ち込んでいる様子だ。


「オークの攻撃如きならば、その御大層なドラゴン製の防具で全て防げる筈だ。

 それにも関わらずコソコソ逃げまわって…、それではそのお前に不釣り合いな防具が泣くぞ」


 現在の克洋は駈け出しの冒険者としては不釣り合いな、ドラゴンの鱗を使用した豪華な軽鎧を身に纏っていた。

 その軽鎧は克洋の胴体や手足の一部を、ドラゴンの鱗をつなぎ合わせた装甲で覆っている。

 これは冒険者として活動を始める際に、ユーリの村の住人がプレゼントしてくれた代物であった。

 魔物の部位が武器や防具の素材として使われている事はファンタジー世界で良くある話であり、冒険者ユーリの世界においても例外では無かった。

 そして先にも触れた通りドラゴンの部位は武具の素材としては一級品で有り、駈け出しの冒険者である克洋が持つには出来過ぎの代物である。

 この軽鎧の素材として使われている素材は、実はユーリの村において克洋が倒したドラゴンの遺骸から回収した物を使用していた。

 先の戦いにおいて、村にはザンが連れてきたザンのドラゴンたちの死骸で溢れ帰っていた。

 これは言うなれば宝の山であり、ドラゴンによって与えられた村の被害など十分に埋めるだけの財貨となったのだ。

 そして村人たちの純粋な好意もあり、克洋が自らの手で倒したドラゴンの素材を使ってこの軽鎧が作られたのである。


「そうきついこと言うなよ、こいつだって段々慣れてきたんだしさ…」

「そうそう、それに克洋くんの本職は魔法使いなんだから、転移魔法テレポートを多様するのは仕方ないわよ。

 なんたって、フリーダ様の愛弟子だものね…」


 説教を受け続ける克洋に対して、ララとアルフォンスのフォローが入れられた。

 二人は口々に克洋の良かった点をあげながら、ルリスをなだめていく。

 確かに今日のクエストでは克洋は転移魔法テレポートを多用して逃げまわっている事が多く、その腰に差した刀を殆ど使っていなかった。

 しかしララたちの認識では克洋は転移魔法テレポートを使う後衛タイプの冒険者で有り、前衛で戦わない事は決しておかしな事では無いのである。

 前にも触れた通り、克洋の転移魔法テレポートはこの世界において上級魔法と認定されている魔法だ。

 この魔法を多用する上、フリーダと関わりを持つ克洋を後衛タイプの冒険者であると認識するのは無理は無い。


「俺はそんな大層な物じゃ無いですよ、一応フリーダさんに簡単な魔法は教わりましたけど…」

「あの伝説の魔法使いに教えを受けるだけで大した物だよ。 フリーダの弟子よ」


 克洋は先の決闘において、多数の冒険者の前で堂々と高難易度の転移魔法テレポートを披露してしまった。

 その上、何処からフリーダとの関わりが漏れたことにより、ララたちを含むこの地域の冒険者たちから克洋はフリーダの愛弟子という認識を持たれてしまっていた。

 勇者のパーティーであったフリーダの名前はビックネームであり、今まで彼女が弟子を取ったという話も無かった。

 そのため克洋は何時の間にかフリーダの一番弟子扱いされるようになり、他の冒険者たちから一目置かれるようになってしまったのだ。

 自分には不相応な評価に対して、克洋は微妙な表情を浮かべることしか出来無かった。




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