年の差かっぽー
※数字がたくさん出てきて読みにくかったため、数字を漢数字ではなく英数字にて表記しております。ご了承くださいませ。
愛があればなんとでもなる。
そう思っていた時期が俺にもありました。
年の差なんて関係ない。
そう思っていた時期が俺にもありました。
よって、愛があれば年の差なんて関係ない上に、相乗効果で俺最強。
そう思っていた時期はありませんでした。さっき思いついた。
そんなこんなで、8歳の年の差といううちの彼女の奉子。俺が今27だから……19!? ちょうわかいな。
8歳差と言えば、ミレニアムベイビーが8歳になる頃だ。もう小学校に入学して2年生になってる時期だよな。その時に生まれた子が奉子ってことか。俺はミレニアムベイビーじゃないけど。きっとミレニアムベイビーって言っても奉子には伝わらないんだろうな。ジェネレーションギャップってやつ。
ジェネレーションギャップっていうといろいろとあるんだけど、懐メロとか聞いても奉子は何も知らないっていう場合が多い。というか、俺の懐メロっていうと近所のレンタルショップでCDをレンタルしまくっていた時期の高校時代の時の曲になるわけで、単純計算で俺が高校生ってことは奉子は……それこそ小学生の2年生とか3年生とかになるわけか。ちょうわかい。全然関係ないんだけど、超和解って書くと、すごい仲直りしたみたいに聞こえるな。
いやいや。そうじゃない。今は俺と奉子の話だ。
そもそも奉子との出会いは、近所のコンビニだ。
『コンビニの店員に恋したんだがどうすればいい?』という某掲示板なら安価で行動を起こしそうな状況で、なんやかんやあって付き合い始めた。
なんやかんやっていうのが、昼から友達と呑み歩いてベロンベロンとまではいかないけど、ペロンペロン辺りまで酔っていた俺が、そのコンビニのトイレで吐いていたところに、奉子が背中をさすりに来てくれて、その時の優しさに俺がトロントロンとして、今までに溜まっていた思いが暴走した勢いで告白した結果のゴールインだなんて結婚式のスピーチでも笑われるから誰にも言ってない。あっ。
まぁそんなわけで、本当にその数年後に結婚し、奉子は現在大学生、俺は社会人という結婚生活が始まっていた。
来年の2月からお酒が飲めるということもあってか、奉子は俺と酒を飲むのを楽しみにしている。俺は飲んでもいいと言っているのだが、変なところで真面目な奉子は、20歳になるまではお酒は飲まないと言っておられる。そーゆーところが好きなんだけどね。
そんで、どうして年の差と愛があるのに問題があるのか、という話に戻る。
それは愛よりもなによりも大事な、この世の中を生きていくための世知辛いもの。
そう、お金だ。
この日本社会は、すべてお金で回っており、挙句の果てには愛なんかでは食べていけないというのが現状である。
「…………」
「…………」
そんな俺たち新婚カップルが抱えているお金問題。いや、割とどうでもいいことなのかもしれないけど、互いのお小遣いの問題だ。
家賃や基本的な生活費は俺の給料からまかなわれている。奉子も一応バイトはしてくれているが、俺としては学生なら学業に専念してもらってもいいと思っている。そのための大学だし。俺もそこそこの給料はもらっているわけだし、奉子一人を養うくらいは容易い。
そこでだ。
奉子には学生として生活をしてもらいたいという俺の思いもあり、毎月お小遣いをあげようという話を持ち掛けた。しかし奉子は自分のバイトの給料から生活費を少し渡して、その残りを自分のお小遣いにしたいとのこと。俺の財布にダメージを負わせたくないとのこと。これが親なら涙を流して喜んで頭を撫でているところなのだろうが、俺は奉子の旦那である。
妻に生活のことで、しかもお金のことで困らせたくないというのが、俺の夢であり目標であった。
だからこそ、奉子には楽に生きてもらいたい、という思いがあった。
だがしかし。奉子は思った以上に頑固であった。
俺がそう提案をすると、自分の意見をひっこめようとはせずに、背中を向けてそっぽを向いてしまった。そんなわけであるからして、俺も負けじとそっぽを向いた。内心は『これで嫌われたらどうしよう』とか思ってるなんてことはかっこ悪すぎて言えやしな……あっ。
この状況が始まってから一時間が経った。
ちらっと奉子の方を振り返って見てみるが、依然背中を向けたまま。
ここは俺が折れるべきなのだろうか。俺の方が大人なわけだし、折れたほうが大人だよな。
きっと奉子が今までの生活で怒らなかったとはいえ、この件でここまで怒るということは、きっとこの件は譲れないということなのだろう。もっと早く察せよ、俺。
俺は奉子の根性に負ける形であきらめることにして、そっぽを向いていた身体を奉子のほうへと向け、その背中に声をかけた。の前に、つけっぱなしだったテレビを消した。
「奉子。悪かった。お小遣いは奉子の好きにしていいよ。元々そこまで奉子にお金の面で迷惑かけたくなかったんだけど、そこまで言うなら俺は何も言わない!」
奉子の方がピクリと動いた。どうやら伝わってはいるようだ。しかしあと一歩足りない、といったところだろうか。
「えっと……奉子だけに、俺は奉子に奉仕をしたかったんだ! な、なんて、ね」
……わ、我ながらクソ寒いおやじギャグだと思う。
「ぶはっ!」
背中を向けたままの奉子が噴き出した。そして肩を震わせて笑っている。
「ほ、奉子、サン?」
くるりと顔をこちらに向けた奉子。真顔を向けられた俺は思わず息をのんでしまう。そしてその奉子から一言。
「よかった。うん。今のは良かった。大爆笑」
真顔で言う奉子。
真顔で言う奉子。
大事なので2回言いました。
俺の精神はずたぼろにされてしまった。
「もう、やめてください……」
俺の言葉に、奉子が笑顔になって言う。
「冗談だってー。本気にしないでよー。お小遣いの件は譲らないけどさ、私は恵一さんのそーゆーところ好きよ?」
「ありがとう。でもお小遣いの件は譲らないのね」
「妻だからって旦那に遠慮してちゃダメ! 譲れないところはびしっと言ってやんなきゃダメよ! って恵一さんのお母さんに言われたんだもん」
「原因は母さんかよ……」
「でもそこは私も譲れないもん。だから、恵一さんが折れてくれてありがとね」
奉子は俺のことを子ども扱いするかのように頭を撫でた。
なんだかなぁと思いつつ、やっぱり最後は愛だよね、と思いました。まる。
おしまい。
これを『女の子シリーズ』の年の差カップルに当てはめてみると、2度おいしいかも。