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第一話 スキル選択と転生

俺は手短な本をとって内容を確認してみる。

スキルもいろいろあるようで、生活魔法関連から種族固有技能まで多彩だ。

何しろ、最初にのぞいたスキルなどは『盗撮』であった。

それはスキルではない!犯罪に類似する行為であると本を叩き付けたものだ。

もっとも、追記では相手秘匿情報の無断閲覧が可能(LV上昇に伴って)とあったのであながち役立たずではなかったのだが、俺はやめておいた。


最初は、バーゲンセールに群がるおばさん達のような状態であったが、今では落ち着いてきている。理由は簡単だ。・・多すぎるのだ。

当初は、それぞれの本棚に種類分けか名前分けされていると思っていたのだが、これが全然なされていない。てんでバラバラなのだ。しかも、量が半端じゃない。

念のため、質問を投げかけてみたところスキルは約8万にも及んでいるらしい。

そんなにあるわけないと考える者も多いが眺めていて納得してきている。

類似性の高いものが複数あるのだ。例を挙げれば『パイロキネシス』と『火炎魔法』だ。

炎を出す、魔力を使うといった点では同様であるが仕組みが微妙に違うようで別となっている。

このように細かくかつまとめられていないために8万。


(時間がいくらあっても足りない。しかも、早い者勝ちという制限もあるために探しているスキルが既に無いという可能性も高い。)


俺はそう考えながら、スキル選択を続ける。

最初は興奮しながら選らんでいたが、それも冷めてしまう。何よりも時間がない。

あれから、既に5時間が経過して残り19時間だ。

中には、もうスキルの本を抱えて係りのところに行った者もいる。

なお、それを見たときに係りの人間に『ここにはいったい何人いるのだ』と尋ねてみた。

それに対して係りの回答は『今回は500人ですんでますよ。』と言っていた。

おい、その含みのある言い方はやめてくれ。


そして、俺は自分のスキル選びを再開したのだ。

第二の人生を送る上で必要不可欠なものには慎重な精査が必要だろう。

いろいろ見ている上で、今のところ候補は6つ。

錬成、身体強化、魔眼(魅了)、索敵、隠匿、進化である。


『錬成』は特定の対象物の材料をそろえて目的の物を制作する能力である。

『身体強化』はLV依存の強化スキル。LVが上がるごとにその上昇率が上がるらしい。

『魔眼(魅了)』は言わずもがなで見つめた対象を魅了し、支配下に置く。

『索敵』は一定範囲を常に自動で認識できるようにするらしい。指定も可能なので探し物などの時には便利そうだ。

『隠匿』は存在そのものを極端に薄める能力だ。暗殺者などが用いるらしいが、俺なら狩りなどで重宝しそうだ。


そして、俺が気になっているのが『進化』である。

説明を見る限りでは、初期はたいした使い道が無いらしい。

だが、LV上昇や特定対象の大量討伐などによって自分自身を文字通り進化させるらしい。

ただ、最初が問題だと解る。

最初、俺たちは『生きる』だけでも必死だろう。故にLVを上げることは最初、苦労することは明らかだ。しかも、『特定対象』がなんなのかは一切説明や補足に記載されていないし、量についても不明である。あまりにリスキーなのだ。


(だが、その一方で後々の可能性が高いのも事実なんだよな)


俺はそう考えていた。

最初は明らかに他のスキルに比べて不便で使い勝手が悪そうだ。

だが、この手のスキルは大器晩成型である。後々の恩恵はかなり高そうだ。

とはいえ、他の5つのスキルもかなり応用性が高い。故に俺はかなり長い時間悩むことになった。


結果として、俺は『進化』を選択した。

かかった時間は10時間。早くもなく遅くもない。

転生先である『ガルフィニア』への新たなる人生に向けてスタートを切ることに俺はわずかな希望と多大な不安を抱いていた。

俺が不動(フドウ) 影道(カゲミチ)だった時には縁がなかったLVやスキル・魔法が普通に存在する世界に放り込まれるのだから仕方がない。

本を見ている最中に小耳に挟んだ内容だが、どうやら向こうはLVが生きてく上でかなり重要なウェイトを占めているらしい。ますます、RPGに近い世界だと俺は思った。


「次の方、選択したスキルを提示してそこの門を潜ってください。潜った瞬間に転生が行われます。スキルは以後変更できませんがよろしいですか?」

「はい。問題ありません。」

「では、進んでください。それでは、あなたの第二の人生が平穏たらんことを」


実に聖職者らしいセリフだが、俺はさっきから見ていて知っている。

言われた当人が潜った後、その人に対しての笑い話や評価がなされていることを。

何度殴りたくなったか気がしれない。当事者意識などかけらもないお役所仕事。

それが、露骨に体現されているのだ。おそらく、俺に対してもそうだろう。嫌になる。

俺は、そう毒づきながら門を潜る。その途端、周りが真っ白になり、俺は意識を失った。




影道が門を潜った後、係りはやはり当人への雑談を始めた。

ただ、その内容はいささか同情が混じったものだったが。


「あの人、ずいぶんと大変なスキルを選択してましたね。」

「ああ、『進化』でしたっけ。あれの選択条件発生率って殺人的に低いと聞きましたよ。」

「お気の毒に。せめて向こうでの種族がマシなものだといいけど。」


そういって彼らは転生済みのリストと未転生者のリストを再度確認する仕事に戻る。

彼らとしては一人のことにかまっている時間などは無いので、すぐに次の相手を送る準備を始めるのだった。



次に影道が目を覚ました時、そこは薄暗い森だった。

獣か虫か、よくわからない鳴き声が当たりから聞こえる。

おそらく夜明け前だろう。

とりあえず、起き上がろうとしたが動きずらい。しかも、やたらと引きずっているような緩慢な動作しかできない。

一先ず、目をつむって今の自分を確認したいと念じてみた。すると、やはり出た。

『ステータスウインドウ』。本当に基礎部分はRPGそのものだ。

そして、目に入ったステータスを確認してみた。


【名前】不動 影道

【年齢】20歳

【種族】液体生命(原種)

【基本能力】攻撃力:5

      防御力:5

      素早さ:1

      MP:0

      SP:1

【スキル】進化(条件未発生)

【装備】なし

【所持品】なし


ああ、うんとりあえずいろいろ突っ込むところが見つかった。

まず、基本能力。すごく低い。某RPGでもここまでひどくないはずだ。

素早さ1の結果がこの動きづらさの原因なのだろうか?

あと、MPが0って、現状では適正なしということですかね。

そして、SPだが何に使うのだろうか?謎である。

だが、特に気になる記載は種族についてだ。何、『液体生命(原種)』って。

俺はステータスを視界脇に移動させながら周りを見る。そして、小さな川を見つけた。

その水鏡に自分を映してみる。

そこには、軟体でどろっとしてて、それでいて人間ではない何かゼリーっぽい物体。


(もろにスライムじゃねーかー!!)


そう叫ぶと同時にピロリン!という音が聞こえた。

ステータスを脇から持ってくると少し変化していた。厳密に言えば種族が。


【種族】スライム((笑))


そんな変な訂正はいらないと思いながら、俺は軟体な自分をグニュグニャと揺らして暫くの間、怒りを発散し続けたのだった。




全員が転生を完了したと係りが連絡すると神官長は肩をほぐす動作をし始めた。


「ようやく仕事が終わったな。毎回、めんどくさいよな。」

「神官長!これは崇高な仕事です。迷い、消滅するはずの魂を救うという」

「我が主が道楽で創った世界へ送るのが『救い』かは別だがね」


そのようにケラケラと笑いながら、彼は本で満たされた部屋を出て行った。

この後も追跡調査は行うが、それは補佐であるルッペルに丸投げされているので彼は事実上、無関係である。


「今回、気になる者などはいたかね。」

「私は、九乗院(くじょういん) 雷雅(らいが)という男が印象に残りましたね。私から見ても特別だというオーラが滲み出てましたよ。」

「僕は、南雲(なぐも) 麗華(れいか)という女性がずば抜けてると思いますよ。」


他にも話を聞いていると、大体10名ほどが『優良』と判断された。

そんな話の中に、『彼』の名が出た。


「そういえば、変わりダネのスキルを選択した奴がいたな。確か不動 影道とかいう男。あれは苦労すると思う。」

「ほう。何でそう思う。」

「さっきちらっと確認したが、能力が低い。しかも、種族がなかなか笑える。スタートが『スライム』だよ。スライム!ぷぷっ、生前の行いが悪かったのかね。」

「・・そいつだけだよな。モンスターに割り振られたのは。」

「面白くなりそうだから、僕は彼を引き続き追跡してみるよ。」


このような会話が行われたのは知る由もない、影道であったがその時偶然にもクシャミをしたのは『お約束』であった。


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