お正月スペシャル 混沌格付けチェック2013 ~お前らホントは何流だ?~ 第1章
さて、今回らいよいよ始まります。
綾「果たして何組が一流を維持できるものやら。」
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それでは早速格付けチェック開始。ここは元ネタ同様に最初は基本となるワインチェック・・・と、行きたいところですが、前回と同じで出場者は未成年者が大半なので違う飲み物でチェックを行います。
一流芸能人であるなら香りだけでも分かるような問題です。
皆さんにはこれから二種類のフルーツジュースを飲んで、より高価な方を選んでいただきます。
ここで間違えた場合は普通芸能人となります。それでは今回比べていただくジュースをご紹介。
まず1つは高級フルーツの果実専門店の老舗「銀座千疋屋」のフルーツの目利き達が選んだフルーツより造られた完熟ふじりんごジュース。お値段にして1本約3000円。
信州宮嶋林檎園で栽培されたリンゴを使用し、味はもちろんのこと、何より酸化防止剤を使用していない無添加でこだわり抜いたりんごジュースを是非御賞味くださいませ。
もう一つは一般的なパックに入ったりんごジュースを、完熟ジュースに似た味に加工したもの。
こちらは1本100円以下。
この二つを飲み比べて、より高い方を選んでいただきます。
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「えー、今回はリベンジを目標にしている方々もいますので、サービスで前回と同じりんごジュースです。でも、前回登場したジュースとはまた違った高級ジュースです。」
「前の格付けが終わった後、後学の為に色々と調べてみたんだが、最近お中元とかでジュースの詰め合わせを送るのが流行ってるらしいしな。」
前回の扱いが懲りたのか、予習をして来た龍星様が言うようにそういうジュースの詰め合わせをギフトとして扱うお店も多い。
指し棒で背後にあるモニターをビッと指すと、その辺りの映像が流れる。
参考として出てきたのは二本のジュースを詰めている箱。
「例えば・・・お子様がいるご家庭とかだな。」
「はい、わたくしも頂いた事がありますの。ジュースはみんな好きですから。しかもただのジュースではない」
「白姫様の言う通り。これらはそれなりに手をかけ、素材も吟味した上で作られています。前回の黄金のリンゴジュース同様、これは本当に美味しい。」
「たかが飲み物でか?はん、どうかしてるぜ。」
「大沢様のどうかしてる発言はどうでもいいとして「おい!どうでもいいって」では、早速スタートです!「喋らせろよ!」もちろん今回も不正解になればなるほど、扱いがぞんざいになっていく仕様です!」
そこで前回出場したみんなの表情が一気に曇る。
特にあの扱いを体験している二人は・・・それはもう真っ青な顔をする。
もう一度指し棒で画面を指すと、それを表にしたものが現れる。
「みなさん今は豪華な椅子とふかふかスリッパ、それに黒に金字で描かれた看板がありますね。だが間違えると・・・まず普通の椅子とスリッパにプラスチックの板になり、三流だと丸椅子とボロボロスリッパに紙の看板。」
「そこから更に間違えるとそっくりさんとして扱われ、椅子はゴザでスリッパは足袋に看板はダンボールになる。そして万が一全問不正解などかましたら・・・・・・映す価値として扱われる。だけど、問題あるまい。なぜなら全員一流なのだから。」
「今度は前回みたいにいくと思うなよ!」
「喧嘩とはまた違った強さ比べか。面白そうだ!」
龍星様と一麻様が燃えているなぁ。万里やエレノアさん辺りは戦々恐々としているのに。
まぁ、その気合がこの先続くかどうかこれから分かるけどな。
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それでは前回と同様、一流芸能人の皆様には控え室へ移動。
今回はお正月という事で、高級おせちを用意させていただきました。
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『明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします』
まずは6人ずつで向かい合わせに座り一礼。
それから手を合わせ、早速おせちを頂く。
「おせちかぁ・・・私、実は食べるのって初めてなんです。」
「えっ・・・あぁ、騎士団ってなんかそういうのとは無縁というか、また違った物とか食べていそうですね。」
「ふだんより食事が豪華になるんだけど、こういう料理は食べた事がなくて。」
「なんよなぁ。大和王朝国家におったはうちも作りよったけど、おせちは作るの大変やから。でも」
エレノアさんはガツガツ食べる万里くんやシュウ君をほほ笑ましそうに見つつ、ごまめを食べてご満悦。
「大変な分、三が日は楽できたんよなぁ~。」
「ですよね。でも徐々に飽きてきて・・・うちではカレーとかやってました。一度おせちの余った具材をごった煮して、とんでもカレーを作った事があって。」
「あ、つぐみの家もか。実はうちでも母さんが作るんだよ。でもそれがまた意外と美味いんだよな。」
「伯母様の料理は美味しいですの♪」
「うんうん、一度はやるよなぁ~。」
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正月と言えば、おせちもいいけどカレーもね!――そんな文化について話しているところ恐縮ですが、最初のチェックです。
最初の挑戦者は初出場の吉沢秀久様。
ジャニケルファウンデーションが誇るオリ主で、オリ主にして場に溶け込み存在感を瞬時に無くすという一流芸能人。
その力の一端が見られるのか、非常に楽しみです。
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「薄太郎様は初登場ですが、リンゴジュースの知識に関しては?」
『うおぉぉぉぉい!その前に紹介と今で名前が間違っている事にツッコミたいんだが!』
「どうやらないようだな。次いくぞ次。」
『黒姫も俺の事ぞんざいに扱いすぎだろ!・・・まぁいい、実は親戚からもらったお中元でこのジュース飲んだ事あるんだよこれが!』
「おぉ、それは心強い!え、じゃあ今回のチェックは楽勝とか?」
『当然!』
うわ、ドヤ顔で言い切ったし!ムカつくくらいのドヤ顔だよこいつ!
『これを機に全員の認識改めさせてやる!』
「本気で勝ちに来てるなこいつ、これは期待できるか?・・・いや、これはこれでフラグっぽいな。むしろ落ちる方が面白いだろう。」
「計算し過ぎだぞ黒姫よ。」
『ジャニケルファウンデーションからの刺客は果たして認識を改めさせる事ができるのか、最初のチェックに挑みます。』
秀久様の前に金色のように輝く液体が注がれた円柱形のグラスが置かれる。
秀久様から見て右がA、左がBとなっている。
Aから飲み・・・いきなりクスリと笑った。
「秀久様、笑いましたね。」
「だなぁ。これはあれか、早速分かっちゃったとか?」
続いてBのジュースを飲んで・・・・納得顔。
そのままグラスを置き、襟を正してから。
『うん、やっぱり高級なだけあって美味しいな。飲んだ瞬間にあの時飲んだ味が』
なんか語り出した!?しかもまたドヤ顔だよ!またドヤ顔決めてやがるし!
『最初見た時はなんだジュースかって肩透かしをくらったけど、いざ飲んだ時はもうすごいと思ったよ。だって今まで俺の中にあったジュースのイメージが変わってな。それで色々と調べたら新矮化栽培って方法で作られたリンゴを』
「すみませーん、なんか長くなりそうなんでここカットで。」
『相分かりましたー。』
そうしてカットしたけど、秀久様は結局三分以上語ってくれた。
後ろで直立していたお店の人が、それはもう思いっきり苦笑いだよ。
『――味の良さを引き出しているジュースは、当然Bだ。』
「あやつ・・・一体何分語ったんだ?」
「いやー、これはフラグだな。チェックでドヤ顔と語るのは駄目だっての。」
「恐らく自分の存在をアピールする為に長時間も語ったのだろう。これは・・・ローリングか?」
秀久様はそのままAの部屋へ入り・・・あれ、なんか足を止めた。
それで振り向いて、追いかけてきてたカメラへ向き直った。
『えー、初めて参加するという事で若干緊張はしているが』
「なんか語り始めたぞ!?」
「ちょっと待て、ドキュメンタリーかなんかと勘違いしているのかこいつは!?」
いや、これも自身の存在感のアピールだ。まさか、ここまで不遇な扱いに不満があったとはな。
こいつ、この企画を踏み台にして一躍主人公に返り咲く気だな。
『だが、俺は勇気を持ってこのドアを開ける!たとえ』
案の定、あざとくアピールする薄太郎様は、ようやくドアを開けてBの部屋に入る。
そのまますたすたと進み、ソファーへ座って息を吐く。
もうあれだ、正解だから動揺する必要もないって顔してるよ。・・・また腹立つな。
『ここから俺の戦いがはz』
「まだ語る気か!?おい、こいつは番組の趣旨無視して目立つ事しか考えていないぞ!」
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はい、時間がないのでカットです。秀久様、申し訳ありませんが自重してください。
続いてのチェックは、レフェルプロの雨宮つぐみ様。
つぐみ様とチームメイトの深紅様は、前回ただ一チームで一流芸能人と認定されました。
それはつぐみ様ご自身も含め、親戚一同かなり嬉しかったらしい。。
そんなつぐみ様ですが、年明け早々のこのチェック――前回のような冴えは見られるのか?
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「まぁ、つぐみ様にとっては楽勝な問題でしょうが」
『いきなりプレッシャーかけてきたよ!?でも、前回と同じぐらいに美味しいのが飲めるのは嬉しいなぁ。』
美味しいものに触れる機会は嬉しいつぐみ様のチェックスタート。
つぐみ様は慎重にリンゴジュースを飲み比べて・・・
「・・・なにこれ!?」
Bのリンゴジュースを飲んで、愕然としたような表情を浮かべる。
『あー、そうなるな。あんなに味の違うの飲んだら普通そうなるな。』
「綾人、秀久様がまだ何か」
「放置でいい。・・・やっぱ二つともそれくらい違いがあるんだな。」
『これは・・・Aかな。』
お、分かれた。秀久様が信じられないって顔してるけど、つぐみ様的には確信があるっぽい。
『まずこの二つだけど、本当に味が違うの。それでどちらが美味しいかと言われるとAかな。Aのリンゴジュースはとても鮮烈な印象で一気に目が覚める思いだった。うん、これはAだよ。逆にBは・・・甘みは同じくらいなんだけど、不自然な感じがして、まるで甘味料たっぷりなジュースって感じだよ。』
『いやー、それはないって。新矮化栽培のリンゴ舐めてるだろー。』
「お前がつぐみ様を舐めてるだろ!つぐみ様と深紅様が前回どんだけ暴れたと思ってるんだよ!」
『果たして新矮化栽培を舐めているのはどっちか。緊張のまま、つぐみ様は誰もいないAの部屋へ。』
つぐみ様はチェックを終えたのか、幾分足取りも軽く部屋へ入る。
そうして誰もいない部屋を見て、一気に顔を青くした。
『お、落ち着けあたし。前回ので慣れてるじゃない。まずは自分の感覚を信じる事だよ。』
「なぁ、つぐみ様が必死に呟いているが。」
「つぐみはこういう状況に弱いんだよ。」
つぐみ様は深呼吸してからソファーへ座り、お菓子をポリポリと食べ始める。
『いや、アレはないぜつぐみ。絶対Bだって。』
『そう?なんかBはいがらっぽい感じがしたんだけど・・・』
『そんなわけないだろ。あの甘さは新矮化栽培じゃないと出せないって。』
「しかも早速絡んでる!?ていうか、どんだけ新矮化栽培にこだわってるんだよこいつ!?」
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続いての挑戦者は、メタルチョップスティックコーポレーション所属の宮野万里様――去年の万里様は散々だった。
Leticia of fantasyでも主人公として頑張り、シリアス戦闘もこなせるにも関わらず、なんと前回この番組にそっくりさんが登場し、散々醜態を晒して万里様の評判を落としていったのだ。
ここでその悪評を全て覆してほしいものです。
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「万里様、一応聞くけどリンゴジュースは?」
『・・・死の淵から生還して、それから千里さんの命令で色々と調べてネット通販とかで購入したりして飲み比べた。だから・・・今回は前の俺とは違う!』
「そうだな。飲み慣れてないのが高いという考え方で誰にも俺を弄らせんと豪語していたな。」
『ほんとあの時の事ぶり返すのやめてくれぇぇぇぇぇぇ!てーかお前、前回いなかったよな!なんでお前がそのネタ引っ張ってんだよ!?』
万里様、笑顔な黒姫に怯えつつもグラスに口をつけ飲み比べ。
一度二つを飲み比べて、怪訝な顔をして首を傾げ始めた。
それでもう一度Aから飲んでみる。
『・・・あれ、これなんか全然違うぞ?』
「万里様、迷ってるみたいだな。」
「前回の事があるから、嫌でも慎重になるんだよ。」
『えっと・・・うし、Aだ。』
その答えが出た瞬間、秀久様はしたり顔を浮かべ、つぐみ様は頭を抱え蹲ってしまった。
『終わった・・・』
『まぁ、万里じゃなぁ。』
「つぐみ殿・・・心中察するぞ。」
前回のあれを見ているから、多少慎重なくらいじゃあ駄目なんだなぁ。そりゃあ絶望くらいするって。
『あのよ、まずどっちも甘いんだよ。でも、どちらかというと、Bの方が・・・いや、違うか。Bは甘いだけで、リンゴっぽい味がないんだよ。違いがあるかわからねぇが、なんか前のチェックのジュースはリンゴの味はしっかりしていたし。』
『いや、そんなの当たり前だろ!銀座千疋屋の目利き舐めてるでしょっ!』
「出た!秀久様の舐めてる発言頂きました!」
『あと何回言うのか、みんなもカウントしてみよう。それでは万里様、Aの部屋へ。』
万里様はやや悩みながらもAの部屋へ入る。でもドアを開いた瞬間、万里様は硬直した。
だってそこには・・・ソファーの上で深々と頭を下げるつぐみ様の姿があったから。
『お願い万里君、今すぐ私の目の前から消えてください。』
『なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!お前キャラ変わってる上に元旦早々なに言ってんだよ!』
『万里君こそ元旦早々なに言ってるの!前回のアレを見れば、万里君を歓迎なんてできるわけないよね!一体なにが狙いなの!』
『とりあえず落ち着け!いくらなんでもキャラ変わりすぎだからな!?いや、何も反論できないけどよ!』
『うみゅ・・・』
そこからつぐみは俯いて、二人の間に微妙な空気が流れる。
まぁ、気持ちはわかるけど・・・キャラが変わるまでショックなのかつぐみ様は?
とりあえずは落ち着いたようなので気にしない事にしよう。
それより問題は・・・モニターからその様子を見ている秀久様だよ。なんか大笑いしてるし。
「秀久様、大笑いだな。」
「既に勝者気取りだよこの人。それもしょうがないか。」
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さて、それではここで正解を発表しよう。正解は・・・Aのジュース。
つぐみ様、万里様、さすがです。
ただ秀久くんは栽培方法に相当こだわっていたが、その着眼点自体は正解である。
先ほど同じ味に加工したと言ったと思うが、Bのジュースには砂糖と少量の塩を投入している。
それもAのジュース――『完熟ふじりんごジュース』の糖度と色を同じになるよう調整した上で。
ただそのために本来持っているリンゴの味わいも殺されているため、甘さのみで判断するのは危険。
そう、つぐみ様と万里様達の指摘は見事的中していたのだ。
いがらっぽさと風味がないのは加工のためである。
ちなみに新矮化栽培とは、りんごの木を大きくさせずに小さい木のままで、収穫1カ月~10日前には果実周辺の葉を摘まず収穫直前に葉が十分に光合成し、りんごに本来の味を乗せる栽培法である。
そのため糖度は通常のリンゴ以上で、酸化防止剤を使用していない無添加な為、臭みが無く程よい香りが特徴である。
当然のように司会者三人にも事前チェックを受けてもらっているので、その様子を見てみよう。
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「「「せーの!」」」
三人揃ってジュースを飲ませてもらったので、前回と同様札を挙げて答え合わせ。
それで・・・全員Aを挙げていた。
横並びになっている俺達は、お互いの札を見て納得しながら頷き合う。
「やはりAだな。」
「だよなー。黒姫もそこは」
「考えるまでもない。Aの甘さは自然で、後味が段違いだ。」
黒姫は髪をかきあげながら笑って、改めて正面――スタッフがいる方を見る。
「それで?」
『正解はAです。』
「「おっしゃ!」」
「・・・うむ。」
三人揃ってガッツポーズを取って、そこからハイタッチへ移行。
いやー、やっぱそうだよなー。
甘さは同じくらいなんだけど、質そのものが違うし。
リンゴの風味がちゃんと出てるのはやっぱAだよ。
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視点は変わってスタジオへ移動。
スタジオで座って待機している残された方々は、モニターに移る格付け芸能人達の様子を見守っている。
「・・・なんか秀久のキャラ変わってへん?」
「だよな・・・あいつ、どんだけ目立ちたいんだよ。」
モニターに移る秀久様を見た深紅様の指摘に、呆れた顔で一麻様が答える。
一麻様も突如変貌したチームメイトに戸惑っている模様。
そんな迷える一流芸能人の皆様に俺は朗報を流す。
「それではスタジオの皆さんには正解をお教えしましょう。」
それを聞いた瞬間、スタジオメンバーに緊張が走る。
実はスタジオのみんなにも試しに飲み比べて貰っていて、出した解答は大沢様を除いた全員がAを選んだ。
『正解は・・・A。レフェルプロ、メタルチョップスティックコーポレーションの2チームはおめでとうございます!そしてジャニケルファウンデーションは残念でした。』
「よくやったでつぐみ!」
「ちっ、俺が間違える筈がねぇ。イカサマだイカサマ。けど、クズにしてはいい働きだ。」
ナレーターの言葉に深紅様は歓喜し、大沢様は間違えたのに上から目線。まぁ、こっちが正解しても意味は無いんだけどな。
それとは裏腹に、一麻くんはプルプルと腕を震わせている。
「・・・秀久の奴、帰ってきたらどうなるか覚悟しとけよ。」
秀久くんに死亡フラグがたった気がするが、その前にやる事がある。
「それでは間違えた人達の席とプレートは即時交換。スタッフのみなさん、お願いします。」
俺の号令と共に、慌しく番組スタッフがスタジオを走り回る。
そして手際よく一流芸能人だった一麻くんと秀久くんの座っていた椅子とプレートを撤収。
代わりに普通の椅子とスリッパにプラスチックの板が置かれた。
「・・・相変わらず手際いいなここのスタッフ。」
「エレノアさん、信じてますから!いや、ホント正解してくださいよ!」
その光景を見た龍星様は感心したように呟き、イリア様はすがる思い出エレノアさんに祈る。
まぁ、明日の我が身だしな・・・
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秀久くんがまだまだドヤ顔ですが、次の挑戦者へいきましょう。
続いての一流芸能人は、ワンナイトミュージアム所属では初出場の鷹白千夜様。
詳細なデータがない為詳しい事は説明できませんが、彼女もまた前回出場した銀くんと星くんの雪辱を晴らす為に送られた刺客である事は間違いない。
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「えー、千夜様は前回出場した銀くんと星くんと一緒の出身ですよね?」
『えぇ、そうよ。この企画に呼ばれるとわかっった時は2人からも色々と言われたわ。』
「そっか。それで、2人は何と?」
『自分達の雪辱を晴らすとか、そういうのは気にしなくていいからとにかく楽しめばいいって言っていたわ。それに2人がこっちに帰ってきた時に話してみたんだけど、いい勉強になったって言っていたの。だから私も楽しむようにするわ。』
「それは何とも素敵な事ですね。こちらも大変嬉しくなりました。それでジュースの方は?」
『自信はないけど、とにかく飲んで見ない事にはわからないわ。』
『格付け初挑戦の千夜様。先輩の雪辱ではなく自身が楽しむスタイルで早速チェックへ入ります。』
千夜様はAとBのリンゴジュースを見比べ、まず一口。
それから・・・ごくごくと勢いよく飲み干し、続いてBも飲んでニッコリ笑顔でサムズアップ。
その笑顔に思わず安心してしまい。
『これは・・・Bね。』
不意打ちでかまされた返答に、俺達三人はズッコけてしまう。
「いきなり駄目だったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「それよりなぜだっ!あんな一気に飲み干してたら、普通Aだろっ!」
「おい、それよりも秀久様が」
黒姫に促されモニターをチェックすると・・・うわ、『やっぱりなー』って顔して頷きまくってる!
うざっ!そして恥ずかしっ!お前間違ってるからな!ドヤ顔で語ってたイタイ奴なだけだぞ!
『多分ふだん私が食べているジュースやリンゴとは、違う味だと思うの。やっぱり価格の分手を入れているし、例えばそう・・・レベルが違う? だからBよ。』
「・・・ちょっと待て。なにか返答がおかしいぞ。」
「だよ、なぁ・・・・・・あ、まさか!?」
確か千夜の住んでいるところ、あの辺りって無農薬野菜の販売所とかが普通に・・・間違いない!
「千夜、ふだんから美味しいトマトとか食べてるんだよ!でもそのレベルが高いのとか、全く自覚してないっぽい!?」
「正解が正解だって分かってないのか!?これは惜し過ぎるだろ!」
「感覚を信じる事は大事のようだな。だが・・・」
黒姫がそう言いながら一瞥するのは、当然ドヤ顔なあいつ。
「感覚が狂っている輩もいるから、一概にこうとは言えないな。」
「「全くだな。」」
『・・・あ、ちょっと待って!』
もうこれで決定かと思っていると、急に千夜が苦しそうに口元を押さえ始めた。
「え、なに?どうかしたのか千夜?」
『うぅ・・・なにこれ!なんか口がベトベトしてきた!てゆうか苦しい・・・げほげほっ!す、すみません!なんでもいいから飲み物を・・・Aのジュースでもいいので持ってきてくれない!』
「なんか変な要求してる!?」
「口がベトベト?・・・あ、そういう事か。」
Bのジュースは『銀座千疋屋』に合わせて、砂糖を投入している。そう・・・砂糖だ。
はちみつとかじゃなくて白砂糖や塩をそのまま入れてるから、実は後味が悪い。
だからこそ今回の問題、かなり甘めなサービス問題的な意味もある。普通はそれではてなマークつくし。
どうやら千夜は舌に関しては、かなり鋭敏な感覚を持ってるみたいだ。
千夜はAのジュースを追加でもらい、それをごくごくと飲み干してから静かに息を吐く。
どうやら落ち着いたみたいだ。
『・・・あの、すみません。答えAに変えます。』
「なんかさらっと答え変えてきた!?」
『その、甘くていいなと思ってたけど・・・後味が最悪で。これは・・・無理。これが一本3000円なんて詐欺もいいところよ。』
「うん、それで正解だぞ。むしろ騙しにかかってるぞ、Bのジュースは。」
『それは神の救いか、千夜様、やや疲れながらAの部屋へ。』
Bの部屋をチラリと見て、軽く唸りながらも千夜はドアを開く。
それでようやく微妙な空気を流していたはずの二人の握手を見てパッと表情が明るくなる。
『・・・わー、つぐみ様と万里がいる!』
『来てくれてありがとう!ささ、お菓子は用意してあるから!まだ口の中が甘いなら、せんべい食べてもいいよ!』
『あら、ありがとう。』
『何でつぐみだけ様付けなんだよ!でも、じゃんじゃん食べろ!これで希望が見えてきたからな!』
千夜はソファーに座って早速せんべいにかぶりつく。・・・おぉ、また幸せそうな顔を。
それとは真逆で表情が芳しくないのは、秀久様。もう本気で呆れながらため息を吐いていた。
『千夜、あれはないよ。お前・・・銀座千疋屋に失礼だよ。あの甘さがいいんじゃないか。明らかにBの方だよ、俺が飲んだ銀座千疋屋のジュースは間違いなくあの味だった。』
その言葉にスタジオのメンバーと俺達は大爆笑。いやー、秀久様は愚かだなぁ。
もうここまでくると笑えてしょうがない。
「そんなわけないだろ!お前それ詐欺られてるぞ!きっと銀座千疋屋じゃなくて・・・銀座詐欺出須屋で飲んでるだろ!」
『いやいや、どうして!飲んでる時はともかく、飲み終わったら後味最悪よあれっ!?』
『だからそういう失礼な事を言ったらダメだろ!これ全国放送なようだし、お店側からお断りとお説教くらうぞ!俺はBのジュースを飲んだ時、リンゴの木の映像が一気に浮かんだぞ。瑞々しいリンゴの風味が、そのままジュースに込められている。』
もうその言葉で俺達は更に笑うしかなかった。そのままって・・・そんなわけないっつーのっ!
あのジュースには砂糖と塩が入ってるんだから!そのままじゃないからな!
『みんなさぁ、まずは感覚をもっと伸ばそうぜ。本物に出会うとね、そういうイメージを自然に受け取るものなんだから。』
「それ凄いギャグ!まずお前が駄目だろー!」
黒姫は耐え切れず、プルプルと震えながら崩れ落ちる。
いやー、これがブーメランになった時の事を考えると・・・非常に愉悦!
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司会者三人が愉悦部になったところで、次の挑戦者へいってみよう。
次は・・・楽しんでます聖騎士団所属のエレノア・アリアドネ様。
前回映す価値なしとして扱われたエレノア様、気合いを入れてリベンジです。
この華々しい新年一発目のチェックを、見事正解で終えられるか。皆様、固唾を飲みながら注目です。
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「エレノア様はジュースは飲んだ事ありますか?」
『こら、質問おかしいやろっ!なんでうちがジュースも飲んでない貧乏人みたいになってるんよ!』
「前回のあれを踏まえて言っておられるのでしょうかそれは?」
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいetc』
前回の醜態を出したら、やっぱりこうなるかぁ。この人、また呼ばれるとは思ってなくて全然反省してないな。
このチェックは知識だけでなく味覚が試される。千夜様のチェックを見て、それはよく分かる。
リンゴの味とか風味とか、そういうのをちゃんと知らないと情報に振り回されるわけだ・・・まぁ、秀久様みたいに。
『と、とにかく頑張るわ。前回みたいなのはほんと・・・嫌やから。』
「いや、むしろみんなそれを期待してるんだけど。言うなら、石田純一や梅宮辰夫の立ち位置だよ。」
『嫌や!絶対正解してやるで!あんな屈辱と恐怖を新年早々味わうって・・・救いがなさすぎやろが!』
『気合い十分なエレノア様、恐る恐るチェック開始です。』
エレノア様は前回の失敗も踏まえ、いきなり口をつけたりはしない。
じっくりグラスの外側からジュースを観察し、恐る恐るグラスを持つ。
それからグラスを軽く揺らし、それによって生まれた液体の波間を見る。
「おい、なんかグラスを回しているぞ!中身を必死に確認しているぞ!」
「ワインじゃないっつーの!いいから早く飲めよ!」
その声が届いたのかどうか分からないが、エレノア様は恐る恐るジュースを飲む。それもかなり慎重にちびちびと。
その姿がもうおかしくて、笑うしかない。どんだけ怯えてるんだろこの人。
ただ・・・それも口をつけるまでの話、ある程度味わうとエレノア様はハッとして目を見開く。
『・・・安心したわ、めっちゃ簡単な問題で。』
「お、自信あるっぽいな。さて結果は?」
『正解はBや!』
ナチュラルに間違えたよ!俺達はテーブルをバシバシ叩きながら、ドヤ顔エレノア様で腹が痛くなる。
『あれよ、うちだっていいリンゴはめちゃくちゃ甘いって知ってるで?つまりよ、これだけ強烈に甘いのなら、こっちが本物に決まってるっちゅー事や!』
『・・・やったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
『これは私達の勝利みたいね。』
『もう確定だ!これで俺達の勝利は揺るぎない!』
あー、Aの部屋が盛り上がってるよ。前回あれだったから、エレノア様が来ないと安心しちゃうんだ。
この辺りは前回参加者であるが故だな。まだノリを引きずっているとも言えるけど。
『全く・・・そんな無駄な希望にすがっちゃって。後で恥かくだけだからやめといた方がいいぞ。』
『馬鹿か!それはこっちの台詞だっつーの!あの人が前回どんだけ外してたと思ってんだよ!』
『そもそもね、こっちはなんか薄いんよ。きっと素材が悪いんや、それくらい分かるわ。やっぱり本物って、すぐ分かるものなんやね。飲んだ瞬間にびびーってしびれがきたし。』
「おいおい、エレノア殿が学習してないぞ!してるっぽい感じで、実は年忘れかましているぞ!」
『やはり普通同士引きあうものなのか。最悪な新年へ転がり始めたエレノアくんはBの部屋へ。』
エレノア様は祈るような表情で恐る恐るBのドアを開け・・・呆然とした。
そんなエレノア様を秀久様は、笑顔で出迎え手まで振ってくる。
『・・・・えっ?』
『はーい、エレノアさん。いや、ホント分かってくれてよかった。他の人達はてんで駄目だし。』
『つぐみがおらへん・・・・・・え?』
エレノア様は秀久様の事などガン無視で、部屋に入りただつぐみを探す。
若干ストーカーに見えなくもないのは気のせいじゃないはず。
「つぐみ、信用されてるなぁ。エレノアさんにここまでショックを与えるか。」
「でもつぐみ様は前回を合わせると、パーフェクト記録更新中だ。それなりに権力を持っていてもしょうがない。」
「だな。もうつぐみの背後には後光が差さされてるんだろ。」
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最後の挑戦社は、LAN武カンパニーからは今回初出場の榊白姫様。ご存知みなさまの妹ワン娘キャラ。
人懐っこく、惚れた相手には一途に尽くすお嬢様な白姫様ですが、果たしてこのチャレンジはどうクリアするのか。
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「白姫様は先ほどのお話通りだと。」
『はい、そういうジュースの詰め合わせについては知っていますの。あと、銀座千疋屋とは昔から交流がありますの。』
「マジですか!?」
『あそこの果物は本当に美味しくてお父様やお母様も大好物ですの。だから家のほうに昔から定期的に送ってもらってるんですの。』
とんでもないパイプラインが明かされましたがチェック開始――なんだけど、当然俺達の注目度は跳ね上がる。
だって、既にソレを食した事がある人間が、とんでもない発言かましまくりだから。
秀久様の二の舞となるか、それとも・・・少し緊張しながらも見守っている間に、飲み比べ終了。
白姫はもう一度Aのジュースを飲んで、息を吐きながら笑う。
『あ、よかった。これはすぐに分かりますの・・・Aです。』
「おぉっ!」
「さすがは私の元キャラだな。」
「しかも迷いなく言い切ったな。」
ガブルが言うように、白姫の中に迷いはない。
あくまでも飲み比べただけで、口を付けた瞬間から答えが分かったっぽいな。
『え・・・マジで?』
『まさか白姫までこれなんて・・・信じられない。』
「信じられないのはおのれの味覚だと思いますよ秀久様。」
『なによりBは、加工って言ってましたたけど・・・手を抜き過ぎですの。これは砂糖と塩を入れて、糖度を同じにしていますよね?』
「お、さすが白姫殿!一気に見破ってきたぞ!」
『確かに甘さは同じくらいでしたけど、それだけでですの。これで騙されるのなんて、日常生活でコーラや炭酸の飲み物しか飲んでいない人だけだと思いますの。』
その時、秀久様がどんな顔をしたか・・・それはご想像にお任せする。
そっかそっか・・・秀久様は炭酸ジャンキーらしいしなぁ。だからジャンクな方に傾くんだ。
妙な納得をしている間に白姫様は、Aのグラスを見て嬉しそうに笑う。
『貧富の差とかは関係なく、健康的な生活を送っている人なら、絶対Aが美味しいって感じる筈ですの。』
「あははははははははははっ!白姫ー!それ以上はやめてやれー!」
「秀久様が・・・秀久様がいろいろ否定されてる!生活習慣まで駄目だしされて、ちょっと泣きそうだぞ!」
『わたくしは飲んですぐに分かりましたの。これが銀座千疋屋の完熟リンゴジュース――飲んだ瞬間襲ってくる甘みと、優しいコク。そして飲み干した後に感じるリンゴの香り。初めて飲んだ時の感動をそのまま呼び起こしてくれましたの。本日はどうも呼んでくれてありがとうございますの。』
『スタッフの小細工など、このお嬢様にはお見通し。白姫様はAの部屋へ。』
秀久様が動揺している中、白姫様がAの部屋に入る。
すると、白姫様はみんなを一瞥して首を傾げる。
『・・・秀久さんとエレノアさんはいないんですの?』
『やめてー!そんな純粋な目でうちらを探さんでー!』
『シロちゃんは正解してよかったね。もうね、自信持っていいよ。』
『ありがとうございますのつぐみお姉ちゃん。』
『よっし!もうこの勝ちは覆しようがない!』
白姫様はつぐみ様達にペコリとお辞儀し、二人もそれに返して脇にズレる。
そうして白姫様が着席すると、プルプル震えてい秀久様が唐突に口を開いた。
『・・・白姫、お前までそんな事になるなんて非常に残念だよ。まさか普段から口に入れているのに、あの味を理解してないなんて。』
『理解してますの!変わらずあの味ですの!』
『いいや、銀座千疋屋のジュースは絶対こっちだ。あの鮮烈な甘みは間違いなくB。あぁ、俺には浮かびあがったよ、農家の姿が。ジュースを飲んだ瞬間、リンゴ達が育った自然を感じた。』
「違うだろ!秀久様が一体化したのは、間違いなく砂糖とかだから!」
駄目だ、本当に正解だと信じて疑ってない。
しょうがないのでこのまま乗り込んで、その勘違いと突然の豹変で生まれたそのキャラを砕きますか。
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それではお待ちかね、結果発表のお時間です。みなさん、チェックの方お疲れ様でした。
いつも通りに支配人達が正解の部屋へ赴きますのでしばしお待ちを。
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二人を連れる形で部屋の前まで来て、俺は深呼吸しながら両手を伸ばす。
それぞれのドアノブに手をかけ、改めてガブルと黒姫へアイサイン。
二人はそれですぐに頷いてくれた。
なので俺は・・・・・・まず勢い良くBの部屋を開け、顔をちょろっと出す。
「やったでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「・・・ほら、俺の言った通り」
それからドアを勢い良く閉じ、そのままAのドアを開けて室内へなだれ込む。
そして黒姫と両手を挙げ、みんなの健闘を称える。
「「「おめでとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」
みんなはそれを見て立ち上がり、まず万里がガッツポーズ。白姫はハシャいでそのまま俺とハグ。
「おっしゃー!」
「・・・よかったぁ。」
つぐみは緊張が解けて一気に崩れ落ちた。
まぁ連続正解とかかかってるから、プレッシャーが半端なかったんだろう。
「え、本当に正解!?私、お説教とかされないの!?」
「そんなの無いに決まってるだろ。むしろ説教されるべきは」
俺が部屋に設置してあるモニターを指差すと、全員が納得した様子で頷いてくる。
それを覗いてみると、エレノアさんは頭を抱えながら床に倒れていた。
『やっぱりかぁ・・・もう嫌やー!』
『え・・・いや、あの・・・嘘だよな?ほら、さっきドア開けたし。』
「そんなのフェイントに決まってるだろうがっ!馬鹿かお前っ!?」
『なんだ、その言い方!』
「黙れ普通芸能人が!自分がこれまでなに言ったか、よーく思い出した上で発言しろっつーの!」
「はぁ!?俺がなにを・・・」
そこまで言いかけて、秀久くんはハッとしながら絶叫――それが響く中、白姫達ははしゃぎにはしゃいでいた。
そんな白姫がちょっとかわいいので、軽く頭を撫でて落ち着かせておく。
じゃないとほら、テーブルとかに当たって怪我しそうだし。
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なんだよなんだよー、新年早々普通が二人も紛れ込んでるよ。
しかも一人は無駄に似合わないキャラ作ってるしよー。
誰かー、コイツに健康的な生活習慣教えてやってー。
※第一チェック結果
千夜・澪次:一流芸能人
龍星・白姫:一流芸能人
エレノア・イリア:一流芸能人→普通芸能人
深紅・つぐみ:一流芸能人
秀久・一麻:一流芸能人→普通芸能人
万里・大沢:一流芸能人
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元のスタジオに戻ってきた俺達を出迎えていたのは・・・二つのグレードダウンした席。
豪華だった椅子も、スリッパも、名前を描いた表札も、全てが安っぽくなっていた。
でもそれはしょうがない事、普通の二人には相応の扱いをするしかない。
というわけで着席してもらった上で、軽く纏める。
「それでは第一チェック終了――正解された皆様、おめでとうございます!」
「ただ・・・残念ながら一流しかいないこの場に、なんと普通が二人もいます。そんなお二方の席は、説明した通りランクダウンです。・・・ほんとがっかりだよ!」
「「・・・ごめんなさい。」」
黒姫がやや悲しげに説明すると、その普通のチームの約二人は居心地悪そうに呻く。
特に秀久は、もう顔真っ青だった・・・まぁ、あれだけ言えばなぁ。
「さてさて・・・千夜様。」
そんな秀久には後で触れる事にして、黒姫が台本を持ってニッコリ笑顔を浮かべる。
「まずは初正解、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「私、最初に千夜様がBと言った時は本当にヒヤヒヤしました。千夜様はもう少し自分の舌に自信を持たれた方がよろしいと思います。」
「そうそう、俺も同意見。少なくとも味覚の点では」
俺は指し棒を手元で回転させてから、びしっと秀久を指す。
「そこの砂糖大好き秀久くんに勝ってるから。」
「遠慮なく傷口を抉りにきてるよこの人!?」
「確かに・・・危なかったしなぁ。僕も千夜はもっと自信を持っていいと思うよ。」
「チームメイトの澪次はスルーしてるし! お前ら神経図太いだろ!」
「次に万里様、正解おめでとうございます。ですが・・・お願いですからもっと暴れていただけますか。」
黒姫が軽くコメントすると、今回は一流なはずの万里様がズッコける。
「私、万里様にはコメントする事がなくて、かなり困ってしまいます。なんでもいいんですよ?化学調味料とか。」
「だからなんで駄目だしだ!?あとそれはもう許してくれ!本当に悪かったと思っているんだよ、俺は!」
「つぐみ様・・・こちらは万里様とは違って、良い意味でコメントに困ってしまいます。」
「俺は悪い意味かよ!俺だけが悪いって事かよ!」
黒姫は天使の笑顔を浮かべながら、肩にかかった髪を一旦かき上げる。
「あまりに完璧過ぎて、私などがコメントするのがおこがましいレベル。やはり前回唯一の一流芸能人だったあなたには、我々とは住む世界が違うのですね。」
「さ、さすがにそこまで褒められると・・・でも、ありがとう!」
「つぐみ、ここは胸を張っていいところやで。」
「白姫様、ありがとうございます。あなたのおかげで本当に銀座千疋屋の味を知った人が、どういうものか証明されました。あなたがこの場にいなかったらと思うと、私は生きた心地がしません。」
「ありがとうございますの!」
「よくやったなぁシロ。兄貴として鼻が高いぞ。」
「さて・・・エレノアくん!」
明らかに声のトーンを落とした黒姫は、名前を呼びながらビクッとしたエレノアさんへ向く。
エレノアさんはやはり前回のあれがあるせいか、なにを言われるのかと身構えているようだった。
「本物は触れたらすぐ分かるものだそうですが、あなたはあの合成ジュースからなにを感じ取ったのでしょうか!よければ私に教えていただきたいと思います!一体どのあたりが本物だったんでしょうか!」
「ご、ごめんなさい!お願いだからもうお話し合いだけはご勘弁をー!」
「だが断る!」
「・・・間違えるとこうなるのね。」
はっきりとした黒姫の言葉で、エレノアさんは頭を抱え連続ごめんなさい状態になり、イリアさんは居心地が悪くなってきている。
でも・・・そんなのは流しつつ、黒姫は一番の問題児へ向き直った。
「秀久くん、あなたに朗報です!銀座千疋屋のフルーツマイスターの方々が、あなたとお話したいと申しております!あなたが飲んだと思われるジュースは銀座千疋屋を舐めている明らかな偽物ですなので!」
「げ・・・!」
「いえ、あなたが悪いわけではありませんっ!悪いのは銀座千疋屋の偽物なんて出す方です!あなたは味を勘違いしていただけなんですから!鋭い感覚とにわか知識を持ってチェックに当たった秀久様が、まさか銀座千疋屋を舐めているなどありえませんから!」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!ごめんなさい、俺が悪いんだ!俺が勘違いしていただけなんだ!舐めてた!銀座千疋屋舐めてた俺!」
あー、泣き出した。でも泣く必要なんてないのに。
黒姫が言うように、悪いのは名前を語った奴らだよ。
まさに銀座詐欺出須屋だよ。秀久くんはその被害者で、知らなかったからこそ、あの自信家なキャラを生み出せただけなのに。
「恐ろしい・・・これが格付けか・・・」
「そうだぞ一麻・・・でも、相変わらず鬼だなこの企画。」
「失礼な事を言うな。こういう事もあろうかと、秀久くんへ電話を繋いでいるというのに。」
「そういうところが鬼だっつってんだよ!しかも、なんでお前らそんな楽しそうなんだよ!」
「では秀久くん、応援メッセージをお受け取りください。」
スタッフが持ってきた受話器を、秀久くんは恐る恐る受け取って耳につける。
それでこっちを見るので、『そのまま話して』とアイサインを送る。
「も、もしもし。」
『秀久、とりあえず銀座千疋屋へ謝りなさい。というか、全員にだ!』
「父さん!? え、まさか・・・」
『家のテレビで母さんと一緒に全部見てたぞ!何だあれは!お前をそんな失礼な子に育てた覚えはないぞ!』
「そんなぁぁぁぁぁぁぁっ!じゃ、じゃあクラスメートとかも・・・!」
当然見ていただろうなぁ。
秀久くんが絶望の淵に立たされる中、電話の相手が父親の蒼さんから、母親の紗理奈さんに代わり、秀久くんに優しい声をかけ始める。
『ヒデくん、今度本物の銀座千疋屋のギフトを注文しようか。そうしたら本物が分かるわ。だってあれよ、農家の姿とかが見えたんでしょ?だったら本物を飲めば、ヒデくん自身が農家になれるわよきっと。』
「ごめんなさいー!」
『銀座千疋屋にも行きましょうね?榊さんの家があそこの常連みたいだから、おすすめメニューとかもお母さんがばっちり聞いてくるから。一つ一つ本物の味を知ればいいのよ。大丈夫、ヒデくんは経験が足りないだけだから。それが備われば大丈夫よ。』
「・・・もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
そこで電話は終了し、受話器はスタッフへ返却。俺達はその様子を見ながら笑って拍手する。
「いや、素晴らしい。家族との信頼があればこそのハートフルエピソードですね。」
「だな。子を支えていこうとする親の愛情、吉沢家の絆が見えた。これはいいものだ。」
「どこがや!?お前も黒姫も本気かいな!明らかに殺しにかかってるやろ!様子見られてるぞって、明らかに圧力かけてるやろうが!しかも同情までされて・・・どうするんやコレ!?一問目にして秀久がボロボロなんやけど!」
「エレノアくん、それ本気で言っているの?・・・だったら正解すればよかったじゃないのかな!」
「そうだぞ!私達はな、みなが一流芸能人なら大丈夫な形で編成してるんだ!文句を言われても困るぞ!私達はむしろ被害者だからな! 一流じゃないエレノアくん達が悪いんだからな!?」
「正論過ぎて反論できないぃぃぃぃぃぃぃっ!」
あぁ、エレノアくんまで頭を抱えて・・・俺達のハートフルエピソードをそんなに気に入ってくれたのか?
その様子に安堵しつつ、俺は次のお題が書かれた冊子を取り出す。
「さ、というわけでハートフルエピソードも交えつつ。」
「おいおい、コイツら意地でもハートフルエピソードにするつもりだぞ!プレッシャーかけてるのとかガン無視だぞ!」
「CMの後、次のお題を発表です!」
「次回へ続くとも言うな。」
リベンジ組みはエレノアさん以外は全員クリア。
綾「今回の万里は一味違うようだな。やはり、生と死の狭間までいっただけはあるな。」
黒「そして、前回と同じ過ちを繰り返したエレノアはまたも最初からコレか。」
つぐみ(混沌)「あ~、消えるねこの人。もう、コレに出ること事態がフラグになってそうだよ。それに比べて向こうのあたしはGACKT様ポジを維持してるね。」
芹香(混沌)「・・・・・・・・(向こうのリュウくんとシロちゃんも順調だね。)」
ガ「だが、新たに最初からやらかした奴が居たな。」
綾「秀久の奴、正解を信じて疑わなかったから、あんな似合わないキャラになってたんだな。でも、見ているがわからしたらあまりにイタさにドン引きだぞ。」
黒「その結果、通常の3倍以上に恥をかいているな。コイツも消えそうだな。」
それは神のみぞ知る・・・なんちゃって。
今回も公平に決めたから。
綾「今回もクジで決めたのか?」
今回はダーツで決めた。
フレンドパークで出てきたみたいな的が回転するダーツ。
綾「無駄に豪華な決め方だなおい。」