黒羽の守護者
カラスと少年について、少し書きました。
第1話:一片のパン
中学二年生のハルトにとって、放課後の公園は唯一の避難所だった。クラスの主犯格・ダイキとそのグループから逃れ、冷たくなったコンビニのちぎりパンを口にする。
「……お前も、腹減ってんのか?」
目の前に降り立ったのは、一羽の大きなカラスだった。ハルトはふと思い立ち、パンの柔らかい部分をちぎって放り投げた。カラスは一瞬、鋭い瞳でハルトを観察したが、すぐにそれを飲み込み、一度だけ短く鳴いて飛び去った。
翌日、驚くべきことが起きた。公園のベンチに座るハルトの周りに、昨日のカラスだけでなく、さらに三羽のカラスが集まっていたのだ。彼らは一定の距離を保ちつつも、ハルトがパンを差し出すと、まるで手品師の手元を覗き込むような仕草で寄ってきた。
第2話:報復の旋律
一週間後、変化は決定的なものとなった。ハルトが道を歩けば、電柱から電柱へと黒い影がついてくる。ハルトが足を止めれば、彼らも羽を休める。
その日の放課後、ついにダイキたちがハルトを校舎裏に追い詰めた。 「おいハルト、最近調子乗ってんじゃねえぞ。一人でニヤニヤしやがって」 ダイキがハルトの胸ぐらを掴み、拳を振り上げたその時だった。
「カァッ!!」
空を切り裂くような叫び声と共に、太陽が遮られた。数十羽、いや百羽近いカラスの大群が、校舎の屋上や木々から一斉に飛び立ち、ダイキたちの頭上を旋回し始めたのだ。
「な、なんだ!? なんだこいつら!」 ダイキが怯んだ隙に、一羽のカラス――あの初日のカラスが、ダイキの足元へ急降下し、鋭い爪で地面を激しく叩いた。それは明確な「警告」だった。他のカラスたちも一斉に激しく鳴き声を上げ、凄まじい羽音を響かせる。
第3話:カラス使いの少年
ダイキたちは腰を抜かし、悲鳴を上げながら逃げ去った。後には、静寂と、ハルトを見守る黒い軍団だけが残った。
それ以来、学校でのハルトの立ち位置は一変した。 ハルトが登校する際、校門の街灯には必ず「彼ら」が座っている。ハルトが移動すれば、窓の外の木々に黒い影が宿る。誰一人として、彼に手出しをしようとする者はいなくなった。
「あいつ、マジでカラスを操ってるらしいぞ……」 「昨日見たんだ。ハルトが手を挙げたら、カラスが肩に止まったのを」
いつしか、生徒たちの間でハルトは**「カラスの魔法使い」**と呼ばれるようになった。
第4話:静かなる契約
放課後の公園。ハルトの肩には、あの日のカラスが誇らしげに止まっている。ハルトはもう、怯えてパンを食べることはない。
「……ありがとう、みんな」
ハルトがポケットから出したキラキラしたビー玉(彼らへの「報酬」だ)を差し出すと、カラスはそれを嘴で受け取り、満足げに喉を鳴らした。少年とカラスたちの間には、言葉を超えた、奇妙で強固な「同盟」が結ばれていた。
カラスと少年の今後について、もう少し深く考えようとおもいます。




