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『子供』

作者: 柴田優生

誰にだって、大切にしたいものは存在するだろう。人によって異なるが、それは、命をも変えて死守したいもの。そんな僕にも、大切なものが存在する。それは、

「パパ、テストで0点とっちゃった」

俺の息子の勇夫いさおだ。僕には、結婚している妻と、長男の勇夫、そして勇夫の2つ下の妹の真愛まながいる。息子がいる父親なら共感するだろう。子供という存在が、どれだけ尊く、かわいい存在なのか。

「そっかぁ。0点とっちゃったか」

「うん。ごめんなさい」

「どうして謝るんだ。テストはしっかり頑張って受けたのか?」

「うん。パパとママにね、テストで100点取ったって自慢するために、頑張ったの!!」

「そうか。なら、それでいいじゃないか。頑張りは点数じゃないからな。頑張ろうとしたその姿が一番だ」

「パパ・・・!!次のテスト100点取るからね!!」

「あぁ、頑張れ。じゃあ、次のテスト100点取ったら、お前の欲しがってたゲーム機買ってやるよ」

「ほんと!?よーし、頑張っちゃうぞ!!」

「はははっ。勉強しないとだな」

そうして、勇夫は自室へ向かっていった。子供は、単純だ。僕はこの約束を裏切ることだって出来る。だって、これは息子が本気を出すまじないの言葉でもあるから。しかし、僕はそんなことをしない。だって、大切にしたい息子だから。


僕は、元々結婚するつもりもなかった。だって、そもそもが好かれないから。ただ、怠惰に生きて、将来適当に生きよう。と思っていたら、気づけば大人になっていた。同級生が次々と結婚していく中、僕だけが付き合ってすらなかった。仕事場の同期に、流石に子供欲しくないのか?と言われて、我に返った。そして、今の嫁を見つけて、付き合って結婚して、子供にも恵まれたのだ。


そんな、怠惰に生きた過去がある。俺の息子には、そうなって欲しくない。だから、俺は息子を助ける。充実した毎日を送れるように。たしかに、子供というのは大変だ。男の子は特に、お金だってかかる。すぐに、

「パパ。ごめんなさい。買ってもらった玩具壊しちゃった」

ものはすぐに壊すし、いつ大きくなるかも分からないから、服や靴も変えるのがはやい。それに学校のお金や、食事代。挙げれば、キリがないほどに育費用が大変だ。それが、子供が二人以上になったら。その倍だ。

「パパ。こんな息子でごめんなさい」

しかし突然、勇夫がそんなことを言ってきた。

「どうしたんだよ突然」

「だってさ、僕はパパの息子なのに、何も出来てないじゃん。パパはいろんなことが出来るのに。頭だっていいし、運動も出来るし」

まぁ、それに関しては、数々の世界を渡り歩いてきたからな。そうなってもおかしくないのだが。しかしまぁ、息子が悩んでるのなら、父親が慰めるべきだろう。

「謝る必要なんかない。お前は今何歳なんだよ」

「僕は、7歳だよ」

「まだ、10代でもないじゃないか。お前はまだ子供なんだ。そんなことで悩まなくてもいい」

「でも、パパ困ってるでしょ!!物は壊すし、テストだって期待通りに点取れていないし!!」

「たしかにな。育児は大変だ。お金はかかるし、子供が何かを壊したり、人様に迷惑をかけるかもしれない。でもな、それ以上にいいことがいっぱいあるんだよ」

「でも、パパはこんな出来損ないの息子、嫌いでしょ?」

「そんなわけあるか。父親であるなら、息子がどんなんであろうと、愛するもんだ。お前は、それ以上に偉いことをやっているじゃないか。妹にも、手を挙げないし、妹の玩具も、勝手に奪ったりしないだろ?」

「うん」

「それに、テストだって、毎回一生懸命頑張ってるんだから。それでいいじゃないか」

「ほんと?」

「あぁ、本当だ」

育児は、大変だ。慣れないもんだから、最初はイラついたりするだろう。それに、最近は生きにくい世界にもなってきた。子供一人いるだけで、数千万は飛んだりする。しかしそれでも、

「じゃあ、パパのためにもっと頑張る!!」

無邪気で、純粋無垢で、一生懸命な子供というものは、可愛いもんだ。たしかに、お母さんたちは辛いだろう。出産はとんでもなく痛いし、そんな思いをして生んだ子供が悪さばかりする。辛いだろう。しかし、どんな子供でも、愛せば温かみを感じられるものだ。子供を愛せば、辛くなったときに、大好きな大好きな子供の顔が脳裏に浮かぶ。その度に、胸のうちが温かくなる。


大切なものとは、なんだろうか。人によって、それは異なるだろう。僕の大切なものは、『子供』だ。命を代償にしても、守りたいもの。それが、子供だ。

育児は、大変だ。しかし、子供というものは、お金で決めるものじゃない。愛した人と、新しい、尊い命をまた愛すのだ。この、愛した子供の、無邪気に笑うその微笑ましい世界が、未来へと、繋がっていくのだ。

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