輸入消費税は関税ではない
トランプ氏が、消費税について関税と同様に見なすような発言をしたようです。しかし、この認識は正しくないと言えます。
消費税については、日本人でも正しく理解していない人が多く見受けられます。例えば、多段階で累積的に掛かって、表面税率以上に消費税が取られている、と誤解するような話ですね。輸出入の消費税についても、同様な不適切な理解がある人がいるようです(トランプ氏のように)。
関税というのは輸入商品のコストを上昇させて、国内生産品の競争力を維持するためのものと考える事が出来ます。そこでここでは、輸入消費税が輸入商品のコストを上昇させることは無い、ということを説明します。
例として、200万の車を輸入し、それを220万で売る業者を考えます。
輸入消費税がある場合、200万を輸出元に支払い、かつ20万を輸入消費税として国に納めます。そして、販売時に22万の消費税を受け取るわけですが、輸入消費税は仕入れ税額控除の対象となるので、差し引きの2万円だけ追加で国に納めることとなります。
結果として、国に納められる消費税は20+2の22万。業者の利益は20万、となります(消費税関係は全て相殺されて0になる)。
もし、輸入消費税が無かったとしたら。200万を輸出元に支払うだけで仕入れができます。そして販売時に22万の消費税を受け取りますが、仕入れ税額控除の対象がありませんので、22万をまるまる国に納付します。
結果として、国に納められる消費税は22万。業者の利益は20万です。要するに、輸入消費税は有っても無くても国に入ってくる消費税も業者の利益も同じ、という事なのです。ですので、輸入消費税があるからと言って、業者はそれをカバーするためにより高い値段で車を売る必要が無いのです。
これに対して関税が20万かかるとしたら。その関税は払いっぱなしとなるので、同じ20万の利益を得るためには売値を240万まで上げなければいけなくなります。消費税とは全く異なる結果を生むわけです。
では、何であっても無くても変わらないような輸入消費税があるのか。それは納税義務のない「最終消費者が」直接輸入した場合に、消費税支払いをバックレる可能性があるため、そうならないようにその前の段階で消費税を徴収しているわけです。
韓国人がよく金を密輸して、消費税をかすめ取る犯罪を犯していますが、これが可能なのは密輸した金を売却したのが消費税納税義務のない個人であるためです。消費税納税義務者である法人などは、この意味で金を密輸しても消費税をかすめ取る事はできなくなります。
まあ、トランプ氏の場合、すべてがディールでブラフであったりするので、割り引いて見なければいけない部分もありますが、少なくとも日本人としては、このあたりの事は正しく理解しておく必要があると思います。