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魔王様、やりすぎです。  作者: みたまおう
第1章 異世界転移編
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第五話「魔王様、仲直りです。」

 ………冒険者になったのは良いとして、ここからどうしようか……。

 セレネを人混みに置いていくのを実行してもいいが、後で殺されそうだから、止めておくか。

 後は、今日はもう暗くなって来るし、寝床が必要だが金が無いもんな。


「セレネ」

「どうした? サイト」

「今日はもう休むんだが、金とか持ってないよな?」

「うーん……金貨の形が、私の世界と違うから、使えんだろう。何か金になりそうな物があったかな?」


 そう言うと、黒のマントの後ろを弄り、目の前に持ってくる。

 それは、金塊だ……初めて見たが、とても高そうだ。


「……これは違うな」


 そう言い、後ろに戻そうとする。


「おいおい、待て待て、金塊ならこの世界で売れると思うんだが」

「いや、これはなんと言うか……私の宝物と言うか……向こうの世界から持ってきた、一つだから、あまり使いたくないなって感じで……」


 俺は素早く、その金塊を奪い取る。

 すると、セレネは「あー」と、子供がおもちゃを取り上げられた時のような声を出す。

 そして、取り返そうと、手を伸ばしてくるので、俺も上に手を伸ばし、セレネの頭を抑える。

 幸い、セレネは俺より、全然背が低いので、届かない。


「馬鹿やろう、お前分かってんの、今日の寝床も無いんだぞ」

「うるさい! 私のお宝。世界が滅ぶぞ」

「物騒な事、言うなよ」


 子供みたいに、涙目になり、返して欲しそうにする。

 だいぶ心に来る。

 でも、返して欲しいからって、世界が滅ぶって……もうちょっとマシなうそつけよな。

 かなり必死に、取り返そうとしている。

 本気を出せば、俺より強いから取り返せる筈だが、俺が傷つかないように力を出していないのだろう。


 でも、そんなに大事な物なら返して上げようか?

 いや、いや、甘やかしたらろくな大人にならないからね。

 ライオンの子は崖から落とされる、なんて話も聞いたことあるし、かわいい子には旅をさせろだ。

 仕方ない、仕方ない。


 そう言い、俺は金塊を、金貨に変えた。



ーーー



 セレネがほっぺをむくれさせ、そっぽを向いている。

 本当に、魔王に見えない。


「なあ……セレネ、機嫌治せって」

「サイトなんて、知らない」


 そう言いつつ、俺が歩いた道をついて来る。

 ド○クエか?

 まあ、パーティーを組んだから、あながち間違えじゃないな……このまま、家に不法侵入して、壺でも割ろうかな?


 これからの付き合いとして、話を聞いて貰えないのは非常にまずい。

 何か機嫌取りの物を、探すか。

 当たりを見渡す、ここは市のような場所で、何か、良い物が売っていないか探す。


 目の前に、洗剤が売っている。

 洗剤か…あまり機嫌を取れなそうだが、一様見ておくか……。

 何々、これを使えば、一家のお洋服は新品同様、さらに、体に優しく、環境にも良い。

 この世界で、環境を気にする奴いないだろ…誰だよ、こんなCMで出てきそうな洗剤作ってる奴。

 ボルギジニア工房、皆により良い未来を、と裏に書かれている。


 お前かよ……なんか、本当にごめん。

 ちょっとした罪悪感に襲われるが、今はこんな事をしている場合ではない、と思い、他のお店も確認する。

 だが、そんなに良いものは、見つからず、未だ、セレネは付いて来ているが、一向に話を聞いてくれない。


「はぁ……これから、どうしよう、セレネは口聞いてくれねえし」

「………ふん!」

「はぁ…」


 今日はもう諦めて、宿を探すか。

 セレネとは、これから時間を掛けて仲直りしていこう。

 

 ぐぅ~


 聞いたことのあるような音が聞こえる。

 これは、お腹が空いたときになる音だ。

 誰か、お腹を空かせたのだろうか?

 辺りを見渡す、俺の目には、顔を赤らめながら、お腹を抑えているセレネの姿が映った。


 そう言えば、転移してから、一度も食べ物を口にしていなかったな。

 それに、セレネは食事に行く時に、歪みを見つけたと喋っていた。

 ずっとお腹が空いていたのかもしれない。

 あ、そう言えば、ギルドに居る時に、あの騒がしいセレネが、ギルドの中で静かだったのも、そのせいなのかもしれない。


 うーん…もう、暗く、屋台も閉じ始めているし、ここら辺に飯を売っている店は無い。

 俺は手に持っている物を思い出す。

 そして、後ろを向いてビニール袋をセレネに向ける。


「……」


 セレネが怪しそうにこちらを見て、睨みつける。

 だが、全く怖くない、なんなら可愛い。


「えっと……お腹空いてるんだろ? こん中に食べ物が有るから、それ食えよ」

「すんすん……本当だ……食べ物の香り」

「匂いで分かるとか、犬か、お前は」


 いつものツッコミが出てしまう。

 拗ねているのに、こういうのは良くなかったか?

 だが、セレネはそれのお陰で少し、気が楽になったのか、近付てビニールを手に取る。


「その……ごめんね。私の為に、頑張ってくれてるのに……いつ帰れるか分からないから、持って来たものを大事にしようと思って、意地になっていたんだ。

 だから、私は、嫌われるんだな……」


 少し、寂しそうな顔で、自分を卑下する。


「……いや、こっちこそごめん。無理やり奪い取って、あり得ないよな。俺もこんなんだから、他の人から、浮いて……引きこもりになって、親にも迷惑掛けて、情けないよな」


 俺はセレネを嫌な気持ちにさせてしまった。

 なら、俺もそれか、それ以上に反省しなければ行けない。

 セレネはこっちを見て凄く驚いている。


「じゃあ、お互い様で…」

「そうだな」


 俺とセレネは仲直りした。

 やはり、自分達の弱いところを見せ合うと言うのは、相手をより理解し、前以上に仲良くなれる物だ。


「取りあえず、食えよ」

「分かった! ありがとう!」


 俺達は、町の階段に腰を掛け、休憩する。

 セレネは、ビニールから、俺がコンビニで買ったお菓子や飲み物を開ける。

 そして、勢い良く食べ始める。


「うっま! なにこれ不思議な味なのに、食べていて飽きない、そして、丁度良い塩加減、この食べ物はミーニャの料理に負けない程の味だな」

「そうだろう、そうだろう、うまかろう、うまかろう、ポテトチップスは最高のおやつだ。

 寝ながら食うと、罪悪感に苛まれる程、ポテチが最高にうまくなるんだ」


 ガツガツと食っていく、すごい勢いでポテチが無くなっていく。

 すると、喉を詰まらせ、胸をトントンしながら、飲み物を飲む。


「おお! これもまた、不思議な食感の飲み物だな。

 アワアワが付いてる、このアワアワが爽快な飲み心地にしてくれる」

「そうじゃろう、それはコーラと言っての、世界最強の飲み物だ。

 なんていったて、サンタさんも、コーラが大好きだからな。

 そして、コーラとポテチを一緒に食べる事の幸福感と言ったら、もう凄まじい物だ」

「もぐもぐ……」


 一生懸命食っている、俺は嬉しい、異世界でもこの味の良さが分かるとは……

 やっぱり、ポテコーラは、偉大だな。


「ふぅ…食った食った。完全復活!」


 良かった、すっかり機嫌を直してくれたみたいだ。

 セレネは立ち上がり、さあさあ、宿へ向かおうではないかと、歩き始める。


「おい、待ってくれ」


 セレネの背中を追い掛ける、だが、セレネの歩みが止まり。

 クルリと美しく振り返る。


「ああ、そうだ。サイト」

「どうした?」


 セレネはこちらに仁王立ちでこっちを向いている。

 もう暗く、月の逆光でセレネが神々しく見える。


「私達はこれから魔王討伐を目標としてやっていく」

「そうだな」

「改めて、ありがとう」


 セレネはにっこりとこちらに感謝を伝える、クソほど可愛い。


「そして、それに当たって、第一目標のギルド登録が済んだ」


 そう言いながら、小さく、でも綺麗な手の人差し指を上げ、1を作っている。

 この話の流れだと、これからについて話すのだろう。


「そして! やはりこれは決めておくべきだろう」


 内容は分かる。

 多分だが、さっきのように喧嘩にならないように、ルールを決めるのだろう、やはりそう言うのは、ちゃんとしておいた方が良いだろう。


「やはり、冒険者となったのだ。パーティー名ってのは大事だよな」


 目を輝かせながら、そんな事を言う。

 思っていた事と、見当違いで少し恥ずかしい気持ちになりながらも、セレネの言った事について考える。

 パーティー名か……正直言って、何でも良いのだが。


 セレネの目が眩しい。

 セレネの異世界にも、冒険者ギルドは在ったけれど、今まで成ったことがなく、内心とてもワクワクしていたのだ。

 うーん……しっかり考えた方がいいか。


「セレネはどんなのが良い?」


 やはり、話題を出したからには何か案が有ったのだろう。

 どんな名前だろか……。


「デュンデュン魔王!」

「却下で」

「なーんで? かっこいいじゃんデュンデュン魔王」

「ダサいわ! なにデュンデュンって、魔王が入ってるのはまだ分かる、でもデュンデュンはなに?」


 ほっぺをむくれさせこちらを見ている。

 無理なものは無理だ、デュンデュンは無理、小学生がパンチした時の口効果音のバシュクみたいな物なのか?


「じゃあ、サイトはあるのか?」

「そうだな………」


 今度は俺が考える番か。

 でもやはり、魔王は入れておきたいな。

 攻撃に関してはセレネに頼る部分が多いと思うからな、それに、パーティーリーダーは俺だがやはり、魔王討伐をしようと言ったのはセレネだ、だから魔王に関連した名前を……魔王は英語だと、確か……


「デーモンロード?」

「デーモンロード……魔王か……」


 そのまんま過ぎたか?

 

「良いじゃないか! そうか…英語にすると言う発想も有るわけだ」


 気に入ってくれたらしい、ならもうそれで良いだろう。

 デーモンロード、これから俺達のパーティー名は、デーモンロードだ。

 良かった、デュンデュンじゃなくて。

 俺はひとまず安心する。


「よし、明日からクエスト頑張るぞ」

「分かった。私も半分近くはまだ魔力が残っている、任せてくれ」


 俺が無茶言って、広範囲にあれほどの規模の魔力を使ってまだ、半分も魔力が残っているのか……本当にコイツは化け物かもしれない。

 今度からは、あまり怒らせないようにしよう。

 本気で怒って、力の加減が出来ず、気付いたら、俺の体がぐちゃぐちゃになってたら、恐ろしいもんな。


 セレネにはそれが出来る力を持っている、考えただけで鳥肌が立ちそうだ。

 果汁ならぬ人汁100%のジュースが出来ても、笑い事じゃねえ。


「取りあえず、今日はもう寝ようか」


 確かに、今日だけで転移、魔王幹部と戦い、冒険者になり、新しい環境で俺もかなり疲労している。

 もう寝て明日のクエストに備えるとしよう。


「そうだな、じゃあ行こうか」


 俺を先頭に歩き出す。

 


 その後

 おやつを食ったというのに、セレネは夕食を「別腹、別腹~」と言いながら、滅茶苦茶食った。

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