第三十二話 最終兵器ガールフレンド
前回のあらすじ!
作戦が決まり、勝ちを確信した源達、愛暗無狂!!
しかし、裂撃斬弩・悪威にも切り札はあるようで?
...って!切り札ってまさか、あの人...!?
その人影の正体は......
「ちょっと!最終兵器って呼び方やめなさいよね!!あーあ、結局私が出ることになってんじゃない!!」
案の定、それは俺の彼女、有我 愛日であった。
「ど、どうしてだ愛日ィーーー!!!!」
俺は叫んだ。
いや、正確には、叫んでいた。
俺は坂東のメガホンにも負けず劣らずの声量で、叫んでいた。
さっきまで愛日達の方を見ていた構成員たちが一斉にこっちを向き、その奥に居る坂東と西尾も俺の声に気づいてこちらを振り返った。
しかし、一番驚いていたのは愛日だった。
「え、えぇぇぇ!?!?な、なんで源がここに居んのよ!?なにこれ、え、ドッキリ!?」
愛日も俺の存在に気づき、俺に負けない程の動揺っぷりを見せてくれた。
まぁ、そりゃあ動揺するだろう。
俺だって訳の分からない暴走族の抗争に巻き込まれた挙句、その敵対グループの最終兵器にガールフレンドが出てきたんだから、平然としている方が無理な話だ。
と、俺と愛日が予期せぬ会合を果たしてしまったところで、置いてきぼりを喰らっていた坂東と西尾の族長コンビが動き出す。
「なんやァ!?おい源!!お前、この最終兵器女と知り合いなんか!?」
「最終兵器女って言うんじゃないわよ!」
「おい、どういうことだリーサルウェポン有我!」
「ふざけてるわね完全に。」
何やら向こうで二人の族長と一人の彼女がワチャワチャしている。
そして、完全に予想外ではあったが、愛日の登場によってこの抗争の決着は決まった。
......いや、愛日の『消滅』があれば大抵の争いごとは一瞬で決まるが。
俺はせめてもの慈悲だと思い、大声で数十メートル先の西尾に注意喚起をした。
「西尾さーんッ!!その人が出てきたからにはもう俺達に勝ち目はありませーんッ!!ここは降伏した方がいいと思いまーすッ!!」
俺は愛日の理不尽な症状を知っている。それ故に勝ち目がないと一瞬で理解することができるが....
当然、族長の西尾は俺の言っている事など真に受けず、依然勝った気で居るらしい。
「はッ!誰に向かって降伏しろとか言ってんねん!!.......おい有我とやら!ここは漢の戦場なんや!最終兵器かなんか知らんけど、お嬢はさっさと帰って寝ときィ!!」
(あーあ、西尾さん、終わったわ......)
俺は全てわかっていた。
愛日を怒らせた者が数秒後にどんな光景を見て、どんな表情になるかも。
案の定、うちの愛日さんは、西尾の今の言葉にムッとしてしまったようだ。
「....ねぇ、このデカブツが敵なんでしょ?ならもう私の症状使ってもいいかしら?」
愛日が西尾の方を睨みつけながら坂東に問いかける。
「あぁ。けど、最初は直接撃ってやるな。そうだな.....むこうの単車にでも向かって撃ってくれ。」
坂東は俺の横に置いてあった西尾達の単車を指さした。
ここにある数十台の単車は、愛暗無狂構成員達の宝であり、魂であり、子供のような存在の単車たちだ。
彼らがとても大切そうにボディを拭いているところも見た。
まさか、坂東はそこに向かって愛日の消滅を食らわせようとしているのか?なんと無慈悲な....
しかし、自分の単車が死地に立たされているとも知らず、西尾は相変わらず余裕を振りまきながら愛日を煽る。
「ガッハッハ!!ワシらの単車をどうこうするってェ?お嬢も掌光病罹患者らしいが、それは無理な話や!あの単車達には、ワシの『硬化』を使うてる!!たとえ大型トラックがぶつかっても、機関銃をぶっ放されても、あの単車は傷一つ付かへんでェ!!」
西尾は自分の硬化によっぽど自信があるらしい。
それもそうだ。
彼はその掌光病で関西の頂点に君臨し、何者にも自分の硬化を突破されたことがないのだから。
しかし、俺は愛日の『消滅』の理不尽なまでの力を知っている。
それ故、西尾と彼の単車が不憫でならないのだ。
西尾の煽りが終わると、愛日はゆっくりと右の手の平を俺の横の単車の方へと向けた。
愛日は少しムスっとしたままの表情で口を開ける。
「アンタの掌光病は物を硬くできるらしいわね。」
西尾は未だ余裕そうな表情を浮かべ、坂東は何やら勝ち誇った表情を浮かべている。
俺は数秒後に起こる出来事を予想しすべてを諦め、中間地点に居る大勢の構成員達は最早喧嘩を忘れて愛日の方に見入っている。
そして、愛日が右手を構えたまま、ゆっくりと口を開いた。
「けど、硬くても消しちゃえば一緒よね。」
シュッ
愛日の手の平から、一直線に空気が揺れた。
そう、愛日の『消滅』だ。
そして手の平の直線状には、坂東が愛日に指示した西尾の単車がある。
一瞬の静寂に包まれた河川敷の上で、俺はおそるおそる単車の方を振りかえった。
「......ですよねぇ....」
やはり、単車の上半分が綺麗さっぱり消失していた。
西尾もそれを見たのか、開いた口が塞がらなくなっている。
「う、嘘や....、ワシの硬化が....いや、ワシの相棒がァ...!!」
しかし、愛日のターンは終わっていない。
落胆する西尾に向かい、彼女は蔑むような視線のまま、こう言い放った。
「早く降伏して。次は単車じゃすまないわよ?」
(我ながら自分の彼女が恐ろしい...)
前線に居た愛暗無狂の構成員達も、自分達の硬化単車が綺麗に切断されているのを見て、完全に意気消沈している。
坂東はニヤけながら西尾を見下ろし、西尾は敗北の屈辱に顔を歪ませながら口を開いた。
「....がァ~~、クソがッ!もう分かったッ!!......ワシらの、負けを、.....認めr___」
と、西尾が苦しみながら敗北を認めようとした、その時!!
「なんだ...?あの奥の、黒い影...」
彼らの背後で何かの影が動いた。
そして次の瞬間には、その影は茂みから勢いよく飛び出し、大きな声を上げながらこちらに向かって走りって来るではないか。
その影の正体は...
「テメェらァァァ!!こんなご時世に、派手に暴れてんじゃねぇぞォォォ!!!」
「ぽ、ポリ公やとォ!?」
「クソがッ...!裂撃斬弩・悪威、撤退だ!!サツが来やがった!!」
西尾と坂東は急いでその人影たちから距離を取ろうとし、仲間達に撤退を命じる。
その指示を受けた構成員達もドタバタと河川敷を駆けていく。
単車を愛日に壊された愛暗無狂の構成員達は、揃って土手に向かって走っていったが。
「つ、遂に警察が来たのか...!けど、なんでこのタイミングで__」
そう、奥の暗がりから現れたのは警察官であった。それも一人や二人ではない、もっと大勢の警察官だ。
走り去る暴走族とそれを追う警察官の追走劇を眺めながら、俺が河川敷に突っ立て居ると、堤防の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい!!源、こっち来い!!」
「優人!?」
その声の主は、よく知っている顔、俺の唯一の友人であり、唯一の悪友。
黒江優人であった。
俺は、次々と目の前で起こる想定外の出来事により脳のキャパがオーバーし、ただ堤防の方を見つめてボーっと突っ立て居ることしかできなかった。
そうしていると、堤防の上に居る優人が慌ただしく河川敷に降りてきて、ドシドシと俺の方に駆け寄ってきた。
近くに来て分かったが、どうやら優人は俺に怒っているようだ。
「おい源!何突っ立ってんだ!お前まで暴走族だと勘違いされて警察に連れてかれるだろ!!」
優人は乱暴に俺の右手首を掴むと、そのまま堤防の方に引っ張った。
コイツは俺の腕を引きながら堤防を駆け上がり、そこでようやく俺の腕を放した。
俺は、膝に手をついて肩で息をしている優人の背中に質問を投げかける。
「どうして優人がここに居るんだよ...?」
この質問が更に優人を刺激したようで、彼は息切れで赤くした顔をさらに紅潮させて俺に怒鳴りつける。
「それはコッチの台詞じゃ!!なんでお前がこんな暴走族の抗争に居んだよ!!」
そう言い切ると優人は再び息を切らし、膝に手をついた。
結局何も理解できていない俺の頭に、またもや聞き覚えのある声が届く。
「源君も無事でよかったよー!こっちも愛日を回収してきたよ!」
「馬酔木さん!!....と、愛日!」
俺が声のした方を振り向くと、そこには笑顔で手を振っている馬酔木さんと、その後ろで決まりの悪そうな顔をしている愛日が居た。
俺が頭の中で山積みになっている疑問を吐きだそうとすると、それを制するように馬酔木さんがもう一度口を開く。
「みんな聞きたいことは一杯あると思うから、とりあえず歩きながら話さない?」
「真紀ちゃんがそう言うならそうするゥ~!」
さっきまで男梅のような顔色をしていた優人が、いつの間にか元気を取もどし、馬酔木さんの提案に賛同した。
俺と愛日は目を合わせたが、結局、俺達も黙って頷くことしかできなかった。
続く!!
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