EP.29 そしてタイマン
前回のあらすじ!
最悪の悪獣、ゴリラ型悪獣と相対するオーゴ達一行。
シモが戦闘不能になり、絶体絶命かと思いきや、パーティの頭脳、クレマが作戦を考え付く!!
しかし、その一縷の希望に縋ったオーゴが振り返ると、すでにそこにはクレマの姿はなく...
悪王討伐遠征7日目.....
振り返った僕の視界に、クレマは映っていなかった。
クレマは、.......いや、あのクズは、走って逃げていったのだ。
「は?クレマ....?」
僕はこの理解不能な光景を前に、情けなく彼女の名前を口にすることしかできなかった。
一方、未だに後方へと走り続ける彼女は、足を止めずに口を開いた。
「一旦ウチはシモのこと助けに行くから、オーゴは時間稼ぎで!んじゃ!!」
彼女はそう吐き捨てると、そのまま森の奥へと走り去っていった。
つまり、僕とゴリラ型だけを残して逃亡したのだ。
さっきまで騒々しかったこの林に、一瞬の静寂が訪れる。
小鳥がさえずり、風が髪を撫で、奥からゴリラ型悪獣のドシン、ドシンという足音が聞こえる。
僕はマイナスイオンに満ちた空気を肺に溜め、これ以上ない程大きく口を開いた。
「....こんのクソアマァァァーー!!時間稼ぎってなんじゃァァァーー!!そんなん『作戦』じゃねぇ!!ただの『犠牲』だァァ!!」
僕は全身全霊でクレマを非難した。
しかし、茂みに逃げ込んだ彼女の耳には届かないし、届いたとしても彼女はフンっとほくそ笑むだけだろう。
シモは戦闘不能だろうし、クレマも逃げやがった。僕は目の前の最強型悪獣とのタイマンが決定づけられたのだ。
そして、今この時も接近してくるゴリラ型悪獣の重い足音にハッとし、僕は急いで剣を構えてヤツの方に向き直った。
剣を構えていても額を伝う冷や汗は止まる気配がしないが。
「いやいやいや....!これホントにヤバいって!こんなヤツ相手にどうすればいいんだよォ!!」
「悪王サマ万歳!!」
ゴリラ型悪獣は完全に標的を僕に定めたのか、鳴き声を発しながら殴りかかってくる。
「うおっ!」
僕は何とかさっき触った草と入れ替わり、その攻撃を回避する。
そして咄嗟に近くに落ちていた小石を拾い集め、周囲にばら撒いた。
悪獣は間髪入れずに攻撃をしてくるが、僕も絶えず入替を使い、何とか攻撃を避け続ける。
これで暫くは攻撃を躱し続けられると思うが....
(けど、このままじゃいずれスタミナもなくなるしジリ貧だ...!どうにか攻勢に転じる手立ては...)
僕は自慢の王子ブレインをフル回転させ、何とかコイツの動きを封じる手立てを考えた。
どんな相手にも必ず弱点はあるハズ!!
だからコイツを観察すれば、きっとどこかに弱点が.....!!
(何重にも装甲された下半身、それ以上に分厚い上半身、そして途轍もないスピードで絶えず攻撃をしてくる凶悪な腕....。なるほど!!)
「......弱点ねェェェーーー!!!」
僕は軽く絶望した。
いや、ここは無理に攻撃せずに、入替を使ってどこか遠くに逃げるか?
....いや、残りのスタミナじゃそれほど遠くには入替ができないし、それこそ、ここで僕が逃げたら間違いなくシモとクレマが餌食になるだろう。
じゃあなんだ、僕はここで時間稼ぎとしてこの命を終わらせるという事か...!?
この一国の王子の僕が!?
いやいやいや!そんなこと許されちゃダメだろ!!
僕はゴリラ型の顔面を睨みつける。
......使いたくはなかったが、こうなれば最終手段だッ!!!
僕はゴリラ型悪獣の眼を真っすぐに見定める。
背筋は張ったまま腰を曲げ、両手は真っすぐに下した。
そして、喉を震わすッ!
「あ、あのう......何卒、ここは穏便に話し合いでどうにか......」
そう!
王子・THE・譲歩!!
このルート国王子である僕の親切な提案を無下にするなど、そんな失礼なこといくら悪獣でもできないだろう!
僕は流石に効いたかと思い、チラリとゴリラ型悪獣の方を見上げる。
すると...
「悪王サマ万歳!!」
「ッぶねぇ!!!」
僕の右頬をヤツのアッパーが掠った。
あと五センチ左にズレていたら、今頃僕は首なし王子になっていたことだろう。
....というか、この一国の王子である僕が、わざわざ腰を低くして平和的な解決方法を提示してやったにも関わらず、ゴリラ型は躊躇なく殴りかかってきやがった。
本当に悪獣というのは僕の偉大さも分からない野蛮な鉄屑だな!
「あーっもう!マジでコイツ等『悪王サマ万歳』ばっかだな!脳みそとかついてないワケ!?もう勘弁してくださいよォ!!」
ふと、ゴリラ型悪獣の一つ目と目が合った。
この見るからに凶悪そうな顔に、悪獣特有の赤く光る眼....
こんな顔面の兵器を作り出す悪王とやらは、さぞ悪趣味な性格なんだろうなァ!
(...ん?眼?)
ふと、この王子ブレインの中に、あるアイデアが浮かび上がった。
それはシンプルかつ、あの逃亡野郎を優に凌ぐ天才的発想。
(これ、眼を傷つけたら、何も見えなくなるのでは?)
続くッ!
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