第二十八話 多摩川・掌・リベンジャーズ
前回のあらすじ!
遂に衝突した、坂東率いる『裂撃斬弩・悪威』と、西尾率いる『愛暗無狂』!
しかし、源は未だその戦いに加わることはなく...?
2018年 5月 東京都 多摩川河川敷にて....
「死ねェ!関西のサルゥ!!」
「んだとォ!?関東のアホンダラがァ!!」
俺の数十メートル先で、特攻服を着た男たちが盛大に殴り合っている。
それはもう、罵詈雑言を互いに浴びせながら、ボコスカボコスカと....
今俺の前で繰り広げられている抗争は、先程お互いに突撃を始めた、『愛暗無狂』と、『裂撃斬弩・悪威』の衝突によるものだ。
では何故、俺はその前線に行かず、自陣から戦いを傍観しているだけなのか?
これは決して、ビビって足が竦んでいるとかではない。決して。
俺は直接殴り合いには参加しない。そういう愛暗無狂の作戦なのだ。
コチラの総大将、西尾の横で、俺は背筋を伸ばして戦いを眺めている事しかできない。
今、愛暗無狂側で突撃をせずに陣営に残っているのは、俺と西尾だけだ。
俺は、この愛暗無狂の中で、一番戦闘狂だと思っていた西尾が、まだ残っている事を不思議に思ったが中々聞き出せないでいた。
しかし、ここで黙っていても気まずいだけだ。
俺は恐る恐る、彼の大きな広背筋に話しかける。
「あ、あのぅ、なんで西尾....さんは前線に行かないんすか?やっぱ総大将は簡単に前に出ない、的な...?」
と、質問した俺の頭を、西尾がポーンっとひっぱたく。
彼にとっては軽くやったつもりなんだろうが、普通に痛い。
「アホ抜かせ。ワシが行ったらあんな関東の雑魚共、五分もかからんわ。」
「じゃ、じゃあなんで...」
西尾はなんだか楽しそうに、抗争の前線を眺めている。
今のところ、数では負けているものの、愛暗無狂も大きくやられている感じはしないが...
西尾は俺の方を振り向くことは無く、前線を眺めたまま、俺の質問に答えてくれた。
「裂撃斬弩・悪威が関東トップに上り詰めた戦術、それをぜひ一度、この目で拝みたいんやァ。」
「せ、戦術....?」
俺は西尾の言っていることがよくわからなかった。
こんな、殴って蹴って暴言を吐くしか能がなさそうな連中に、戦術もクソもあるのか?
まぁ、相手も関東最強と謳われている暴走族だ。
きっと、普通の殴り合いで終わるような敵じゃないという事だろう。
そんな話をしながら向こうの総大将、坂東を眺めていると、彼が何やら動き出すのが見えた。
彼は100メートル以上先に居るのに加え、乱戦となった前線の間からしか見えないので、かなり目を凝らさないとよく見えない。
俺は目を細め、坂東の動きに注視する。
どうやら彼は、先程使ったメガホンをまた使用し、何かを喋るつもりのようだ。
.....そして数秒後、この喧騒を極める河原に、スピーカー越しの坂東の声が響いた。
「あーテステス。....『裂撃斬弩・悪威』、始めるぞ。」
(始める....?)
彼のその一言は間違いなく、戦場の雰囲気を変えた。
正確に言えば、敵側が静かになった。
そして異様な雰囲気に包まれた戦場に、再び坂東の声が響く。
「....渕元たち、和田班と合流してからフォーメーションCで左翼。佐々木班、もっと中央寄れ。そんで遠藤班は右後ろから敵来てるから、かっしー達と一緒にフォメBで。そんで藤沢班は__」
(な、なんだ?突然わけわかんない事を....。まさかこれ、この場全体を、指揮してるのか....!?)
そのスピーカーから放たれた声は、喧騒が飛び交う河原で、一際目立つものだった。
坂東が放つ言葉はどれも戦略的で、とても複雑なものだ。
当然、自分含め愛暗無狂側は坂東の言っている言葉の意味なんて、まるで分からない。
むしろ、その異常な出来事に動揺し、コチラの士気が下がってすらいる。
しかし、裂撃斬弩・悪威の族員はその指示が聞こえると、すぐに目の前の相手を無視してどこかに集合したり、広がったりし始める。
それは到底、暴走族とは思えないような統率のとれた動きであった。
細かい連携のとれた向こうの集団は、まるで巨大な一つの生命体の様だと言ってもいい。
向こうは陣営を組んでコチラの集団をかく乱し、人数を細かく細かく細分化させている。
そうして細かく分散してしまったコチラの隊員を、囲い込んでじわじわと削っていく。
一つ潰し終わったら今度はまた別の小さい塊に行き、それを潰す。
コチラ側の隊員もその包囲を崩そうと外から突っ込むが、それはそれで別働の班がすぐに押し寄せ、何もできず板挟みになってしまう。
このような統率のとれた動きが可能になっているのは、坂東による絶えぬ指示があるからに他ならない。
徐々に押され始めるコチラの戦況に危機感を持った俺は、慌てて前に立っている西尾に話しかける。
「これって、かなり押されてるっすよね...?っていうか、なんなんすか向こうのあの動き。あんな統率が取れてることにも驚きっスけど、あの坂東って奴、なんであんな的確な指示をあのスピード出せてるんすか....?まるで、空からこの一帯を見下ろしてるみたいな....」
「ほんまに全体を見下ろしとるって言うたら、どないする?」
(......は?)
続くッ!
最後まで読んで頂きありがとうございます!
よろしければ評価、感想もお願い致します。




