EP.28 大猩猩型
前回のあらすじ!
シモの天才的な戦闘センスでゴリラ型悪獣を瞬殺!!
悪王討伐遠征7日目....
「ぼんッ!」
ボォォーーンッ!!!
辺りにけたたましい爆音が響き、木々や草花を騒めかせる。
シモの掛け声とともに、ゴリラ型悪獣は爆炎に包まれたのだ。
「マジでやりやがった...」
クレマは驚きを隠せない様子で、サングラスをずらしながら呟く。
そりゃあそんな反応にもなる。
悪獣の中でも最強の型と言われているゴリラ型を、シモはたった一人で片付けてしまったのだから。
僕自身、こんなにも呆気なく悪獣最強がやられるとは思っていなかったし、なんなら僕達三人が生きてこの場を脱することすら危ういと思っていたくらいだった。
僕はあの自分勝手な戦闘狂を、初めて誇りに思った。
「シモーー!!」
僕は嬉々として、戦闘狂の方に駆けよる。
しかし、当の本人は、自分が死ねなかったことに対しての無念さがあるのか、あまり嬉しそうな顔をしていない。
こんな危機的状態を打開したヒーローが本来していい表情ではないだろう。
だが、彼が居なかったらこの危機を脱することは限りなく難しかっただろう。これは紛れもない事実なのだ。
だから感謝の証として、シモにはこの僕から、王子のハグをしてやろう。
シモって小っちゃくて抱き着くと暖かいし。
と、シモに抱き着いてやろうと駆け寄ること数メートル。
僕はあるものを目撃してしまう。
(ん、んん....!?)
僕の視界に、途轍もなく不吉な黒い影が映った気がした。
今僕が向かっているシモの背後には、未だ爆炎がモクモクと立ち昇っているのだが、その中で何かが動いたように見えたのだ。
(......いーやいや!まさかね!今回は『やったか!?』とかフラグも立ててないし、流石に...)
僕はそんな縁起でもないことを考えるのをよして、唾を飲み込みながら足を進めた。
多分、その足は無意識の内に重くなっていたと思う。
と、僕が疑心暗鬼になりながらも足を動かそうとしていた、その時。
シモの背後の煙から、何かが飛び出してきた。
そう。それはそのまさか。
紛れもない、さっき爆発したハズの、ゴリラ型悪獣の片腕であった。
「シ、シモーーー!!!」
僕は3秒前と全く同じ台詞を、全く違うテンションで発していた。
しかし、もう遅い。
煙から突き出たその巨大な腕は、狙い澄ましたようにシモの脇腹へと強烈な殴撃を繰り出した。
シモは拳が当たる直前でそれに気づいたようだったが、流石の彼でもその攻撃はどうすることもできなかった。
ゴリラ型の拳はシモの右半身にグリッとめり込み、彼の体はその衝撃によって宙に浮く。
聞えはしなかったものの、その光景を目にしただけでシモの肋骨がミシミシと音を立てて砕けていくのが容易に想像できた。
そしてゴリラ型が勢いよく拳を振りぬくと、シモはそのままありえない速度で殴り飛ばされたのだ。
シモは呻き声を上げる刹那すらなく僕の視界から消えた。
僕もその想定外の展開を前に、声も発せぬままただ立ち尽くして見ている事しかできなかった。
だが、ほんの一瞬だけ僕の目に映ったシモは、人の体の構造を無視したしなり方をしていたと思う。
彼の小さくて軽い体は、まるで強風に吹かれた落ち葉のように、為す術もなく奥の茂みへと飛ばされて行った。
木々の茂みへと消えていったシモの状態を確認する術は最早なく、僕は止まらない冷や汗を拭いもしないまま、恐る恐るゴリラ型悪獣の方に視線を移す。
煙を払いながら目の前に現れたゴリラ型悪獣は、何事もなかったかの様にこちらに近づいてきた。
次のターゲットは僕という事か。
よく見ると、シモが爆破させた右足の装甲が剝がれている。
しかし、その爆破で焦げた装甲の下に、黒く輝く綺麗な装甲が顔を覗かせていた。
恐らく、シモが爆破したのは一番外側にあった装甲の一枚に過ぎないのだろう。
僕はそんな光景を前にしても、今吹き飛ばされたシモのことがグルグルと頭の中を巡り、敵のことに集中できない。
僕は後ずさりしながら、さっきから固まっていた口を何とか動かした。
「やばいやばい...!!シモがヤバい!今もろに殴られてたけど、死んでないよね!?!?」
しかし、クレマは僕のこの様子を見て苛立ったらしく、余裕のない声色で怒鳴る。
「うるせぇ!!やばいのはウチらも同じだろうが!!このままじゃあ三人仲良くあの世行きだ!!」
アカデミー時代からシモを知っていたクレマからしたら、シモの爆破が効かない敵なんて前代未聞で、きっとそれがどれだけの非常事態なのか分かってしまうのだろう。
それ故にクレマの冷静さが欠けてしまう。
かといって僕が冷静に状況を把握することができるわけもなく、やけくそになって震える手で剣を構えた。
まぁこんな剣を構えた所で、シモの『爆破』が効かなかったゴリラ型相手にどうしようもないんだろうけど...
「ク、クレマ!!なにか作戦は...!?」
僕はダメ元でクレマに作戦を嘆願した。
クレマが冷静さを欠いてるとはいえ、それでも通常時の僕より頭は回るはずだ。
僕の背後に居る彼女はその無茶振りに苦しそうな声を漏らしたが、暫くすると何かを思いついたように「....あ」と小さく声を出した。
そして今度は自信ありげに、大きな声で僕の背中に語り掛ける。
「.......よしッ!作戦を伝えるぞ!」
その台詞は、半ば諦めていた僕の心に染み渡る希望であり、この短時間で作戦を思いついてしまう彼女の驚異的な頭脳を体現しているものでもあった。
やはり持つものは(アカデミー主席の)友だな!!
僕は正直期待していなかったクレマの色よい応えに、思わず声を弾ませて背後の彼女の方を振り返る。
「え、マジで!?流石主席様!!それで作戦は____」
振り返ったのだが......
その作戦とやらを聞こうと振り返った僕の視界に、クレマは映っていなかった。
では、彼女は一体どこに?
そう。クレマは、.......いや、あのクズは、走って逃げていたのだ。
「は?クレマ....?」
続くッ!!
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